光明ノ神子
数年前イザナミによる、近郊崩しが行われようとしていた。その時、二人の神子と二柱の神によりそれは、阻止され、事件は、解決した。
「しかし対策は、必要ですよね!!」
虚空ノ宮にてモアは、資料をみながら呟いていた。
「モアよ」
「瑠花さん!!」
この宮の管理人である瑠花は、少し呆れた顔をしモアに声をかける。
「静かにせよ。少しうるさいぞ」
叱られた。モアは、頭を下げると、瑠花にあることを聞いた。
「瑠花さん」
「なんじゃ」
「黄泉に関しての資料ってありますか??」
瑠花は、しばらく考えたのち、近くにあった本をとった。
「これくらいじゃな」
「ありがとうございます」
「黄泉に関しては、資料も少ない。詳しくは、友美か光に聞くことをすすめる」
友美と光は、なんやかんや黄泉のことをよく知っている。
モアは、やはりそうなるのかとため息を着いた。
「あまりお二人に聞きたくないんです……」
「ほう。それは、何故じゃ??」
「確実に怒られることをするからです!! 私が!!」
楽しげに笑うモアに、瑠花は、顔をひきつらせた。これは、なかなか大変なことになるかもしれないと。
「まさか黄泉をテーマパークにすると戯言を申すわけでは、なかろうなぁ……」
「さすがにそれは、世界の均衡を壊すのでダメです!!」
「分かっておるのであればよい」
瑠花は、そういうと、去っていったが、モアは、資料を黄泉ながら、やはりこれは、二人どちらかの手を借りなければならないと思った。
「先ずは、羽月様に相談……」
モアは、資料を片付け、そして虚空ノ宮を後にすると、高天原へ向かった。
月花ノ宮には、多くのウサギが住んでいる。月読の眷属であるウサギたちは、せっせこ本日も与えられた役目をしていた。
「羽月様!!」
宮ノ執務室にて、羽月が書き物をしていると、一羽のウサギが入ってきた。
「どうしたの??」
「モア様がお越しです!!」
羽月は、通してというと、すぐにモアが入ってきた。
久しぶりにやってきた神子は、どこかワクワクしていた。
羽月は、どうしたのかと思いながら、話す。
「モア久しぶりに顔を出したと思ったらどうしたかしら??」
「聞きたいことがあるんです!!」
「聞きたいこと??」
「黄泉に関して羽月様は、色々ご存知ですか??」
羽月は、瞳に鋭い光を宿した。モアは、人では、なく神だ。もとは、いっかいの神だったが、昇格し、今は、羽月の使いとして、彼女に仕えている。
もとからモアは、他者とみる視点が違う。彼女なりに何か気になったのかもしれない。
「えぇ。少しはね」
モアは、事情を説明し、羽月は、話を聞くなかで、モアが何故黄泉について質問してかたのか、納得できた。
「また母上の起こした事件が再来しないとも限らないか……」
「はい。ですので、黄泉に対する対策をしたいなと」
羽月は、難しい顔をすると言った。
「黄泉にかんしては、姉上の方が詳しいわ。なにより、姉上は、黄泉に下って帰ってきた神ですもの」
白野威の顔を思い出し、羽月は、いう。
当代の天照と違い、やはり姉は、少し特別なようだ。
普通の神なら黄泉にいけばすぐに衰弱し本来のちからを出せなくなる。しかし白野威は、違う。
多少は、力が弱くなるようだが、本来の力を発揮できる。
やはり太陽神だからだろうか。
「三貴神の中でも姉上だけだと思うわ。なんの対策も無しに、黄泉に放り込まれても、帰ってこれるのは」
「天照様は、やはり特別なのでしょうか……」
「かもしれないわね。ポックリ死んでしまったのに、黄泉にも下らず、ナカツクニに留まり、転生したと思ったら、力も記憶も、容姿もそのままで帰って来たから」
羽月は、少し困ったように笑うと言った。
「羽月様、天照様の事大好きですね」
「そりゃずぼらでてきとうな姉だけど、優しい素敵な神だもの」
「ですね!!」
やはり白野威や友美たちに聞かなくては、いけないのだろうか。
モアは、どうしたものかと、悩んでいると、羽月があることを思い出した。
「そういえば……黄泉の穢れは、桃に宿る力で祓えると……」
「桃ですか……」
「そうよ。西王母の伝説でもあるけど、桃は、古来より、神聖な果物とされてきたわ。父上も黄泉にいったとき、近くにあった桃の枝で穢れを祓い、帰ってきたのち、さらに禊をし、穢れを祓った。なら少しくらい桃の枝を細工すればなにかしら黄泉対策グッズが出来るかもね」
「なるほど……」
羽月は、この時少し顔をひきつらせた。モアがとても瞳をキラキラさせ、何かを思い付いた顔をしていたからだ。
(大変なことにならないといいのだけど……姉上と友美には、伝えとこうかしら……)
たぶんモアがことを起こせば、友美が大変なことになる。もし桃の枝を試すとしても、それには、友美の力が必要だからだ。
「モア……お願いだから騒動は、ほどほどにね!?」
「はい!! 羽月様!!」
モアは、そういうと、執務室を去っていってしまった。
羽月は、まずいとすぐに白野威に連絡をいれ、事の経緯を話すと、白野威は、呆れていた。
「モアのやつ……」
「すみませんがたぶん友美が巻き込まれるかと……姉上よろしくお願いします」
珍しく人の姿でゴロゴロしていた白野威は、頭をかきながら話す。
「そもそも試作品試すのにお袋の力が必要になってくるでしょう??」
「そうかと」
「お袋がモアに手を貸すわけないしなぁ……」
あのイザナミが力の一部を友美に譲渡したのは、友美だからだ。他の神子や神が頭を下げたところで力は、貸さないだろう。
「だと思います。母上からすれば、わたしの遣いなどゴミかと思いますし」
「ゴミってね……」
確かに怪訝そうな顔をし、モアを消しそうだが。
「分かった。一先ず友美には、話しとく」
「ありがとうございます」
羽月は、連絡を切ると、椅子の背もたれにもたれた。
「私に出来ること……」
そう呟くと、立ち上がり、羽月は、執務室をでていった。
桃枝に細工するのは、以外に難しく、もとからある清浄な力を損なわないようにモアは、術をかけ改造し始めた。
ようやく納得できるものが出来、実験するところまで来た。
「黄泉の穢れを……ナカツクニで……」
やはり友美の力を借りなければいけないようだ。黄泉に出向くにもすぐにモアの場合行動不可になってしまうだろう。
「しかたがありませんね」
モアは、スマホを取り出すと、友美に連絡をした。
友美は、すぐに電話にでてくれたのでさっそく話をした。
「えっ!?」
「モアの為でもあるからお願い。私からの条件は、それよ」
「了承しないとなると……」
「話しは、受けないわ」
モアは、背に腹はかえられぬと、友美の提案に乗った。
後日モアは、指定された場所に来ていた。
「虚空ノ宮にこんなところがあるんですね……」
大きな湖の畔、モアは、あたらを見渡していると、友美がいた。
さっそく駆け寄ると友美の様子がおかしい。普段の気配より深く静かだが恐ろしい気配がしていた。
「モア時間どうりね」
「友美今日は、よろしくお願いします!!」
よくみてみ見ると、瞳も深紅になっている。これは、力の影響だろうか。
「友美今日は、少し何時もと違いますね……」
「黄泉の力を表に出してるからだと思うわ」
「なるほど!!」
ならこの気配の理由も納得できる。
友美に連れられ、モアは、さらにひらけた所にやってくるとそこには、大きな術式が展開され、幾重にも結界が張られていた。
「凄い……」
「イザナミの力を漏らさないためにもね」
それほどに黄泉の力とは、恐ろしいものなのだとモアは、感じた。
「友美こんなにも厳重に管理をするのならあの条件は、必要でした??」
友美は、真剣な顔になる。
「必須よ」
「ですが……」
「モアこの結界どんなものか分かる??」
モアは、感じる気配から推測した。
「……太陽の力でしょうか……??」
「少し当たりね」
「少しだけですか!?」
「えぇ。この結界は、特殊で、太陽の力と生成と生産の力が複雑に折り重なっているの」
モアは、驚いた顔をする。そんな芸当出来る神子は、目の前の人物ともう一人しかいない。
だから友美は、この条件を提示してきたのかとモアは、納得していた。
「必ず光先生を同行させること……」
「そう。これを維持できるのは、光だけだから」
「なるほど」
「白野威も頑張ったくれてるけど、黄泉の力を打ち消せるだけの力の出力と維持は、光しか出来ないから」
「友美ですが、友美が維持しながら、実験することも出来たのでは??」
「それは、私の力の均衡が崩れて、厄災を招く危険性をはらんでるから、やらないわ。それに私の力の管理も光に任せるのが安心だから」
確かに今の友美からは、黄泉の力以外の気配がない。
モアは、水郷ノ神子が何故ここまだ神々からも恐れられるのか、断片を見た、気がしていた。
「光先生さすがです……」
「本当よね。さぁモアやっちゃいましょう」
モアは、頷くと、結界の中に。中は、とくに変なことは、なく、原っぱが広がるだけ、ただ強い力の気配が満ちていた。
「じゃ始めましょう」
「ですね!!」
さぁ実験の開始だ。モアは、さっそく桃の枝を取り出した。
「それが噂の……??」
「はい!! 黄泉への対抗策!! アルティメット桃の枝です!!」
みるからになんの変哲もない桃の枝。しかしネーミングは、インパクトありすぎだ。
友美は、きょとんとしたのち、言った。
「ネーミングセンスが壊滅的」
「いいじゃないですか!! かっこいいから!!」
「かっこいい!?」
どこがだろうか。友美は、モアのセンスと感覚ののずれに、やはり彼女も神なんだなと思ったが、これは、モアだけかと思い直した。
「では、友美とりあえず撃ってください!!」
「えぇ……」
一先ず黄泉の力を、圧縮し、弾のように、モアに放つと、モアは、桃の枝を構えた。
「警告。2秒後に穢れが通過。警告。ただいまより、浄化モードに移行する」
電子音のような声が桃の枝から流れると、桃の枝は、黄泉の力が被弾する寸前で、爆発した。
友美は、その光景に驚愕する。
「えっ!!??」
煙がはれると、無傷のモアが立っていた。
「浄化モード終了。休眠モードに移行。充電時間およそ10分」
色々この時点で突っ込みどころ満載である。
なぜナビゲーターのような音声にしたのか、それに充電とは、なにかと友美は、言いたかった。
「おー!!! 成功です!!」
モアは、一柱喜ぶなか、友美は、言う。
「モア……そのナビゲーション要る!?」
「要りますよ!! 神子ならともかく、普通の人もつかうかもですし!!」
「それと充電って……」
「空気中に含まれる自然エネルギーを使って桃の力を増幅してますから必要なんです!!」
「であの爆発は!?」
「爆発は、力を打ち消すのと、黄泉の怪物退治を兼ねてです!!」
友美は、唖然としながら、桃の枝をみていた。変哲もない普通の枝なのに、ふたを開けたら色々凄すぎる。しかしシンプルな為、どんな機能があるのか、まったく、分からない。
「……なるほど。ならそれ殲滅モードの方がよくない?? あと操作も分かりにくそう……」
「殲滅モード!! いいですね!! 操作に関しては確かに……」
モアも操作に関しては、同じことを思ったのでさらに改良が必要である。
「友美次は、近寄ってきてください!! 力を全開にして!!」
友美は、言われたとおりきちかづくと、桃の力が警報を鳴らしだした。
「危険。危険。直ちに退避せよ」
赤いシグナルを発しながら、サイレンまで鳴らし、友美は、あまりのうるささに耳をふさいだ。
「うるさい!!」
「大きい方がいいかと!!」
「大きすぎつうの!!!!!」
思わず白野威のように言ってしまった。
「モアそれどうにかならないの!!」
「危険が無くなるまで鳴ります!!」
友美は、マジかと思いつて、力を抑えると、桃の枝は、静かに鳴った。
「モアなんでこんな枝にしたの!!」
「少しでも分かりやすくです!!」
確かに分かりやすいが、色々問題だ。
今度は、天国と地獄を鳴らしだした桃の枝を見て友美は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。
「なんでクラシックの天国と地獄!!?? 慌てて走らせるつもり!!??」
「嫌でも早く逃げると思って!! ほらこの曲焦りますし!!」
「まぁそうだけど……」
「他にもほら!!」
桃の枝をモアが構えると、こんどは、枝からぼうボクシング映画のようなBGMが流れだす。
「闘志をもやせ!! です!!」
「モア!? それ退避ようじゃないの!?」
「場合によっては、武器にもなりますよー!!」
なんだろうこの桃の枝なかなかやばそうだ。今は、優雅かつ盛大な第九が流れている。
友美は、その機能要らないどころか迷惑になるのでは、と思った。
「モアそれ騒音」
「えっ!!??」
「騒音」
「でも、場を盛り上げるのも大切な事ですよ!?」
「まぁ、そうだけど……」
ケースバイケースである。
とうとう桃の枝が七色の光を放ち、マスカラまで振りだした。
「手と足……はえてるし……リズム取ってるし……」
「可愛いでしょう!!」
「……キモい」
モアは、信じられないとショックを受けていたが、こればかりは、外から様子を見ていた光も友美に同意だった。
「あれは……気持ち悪いな……」
「あの桃の枝いる!? 考えは、いいが、あれは私も要らん」
白野威まで要らないと言ってしまった。
モアは、なっとくいかない様子に、友美は、少しばかり困った顔をする。
「友美データ集めましょう!!」
「データ!!??」
「これを誰かに使ってもらうんです!!」
「使うって……そんな状況無いとおもうけど……」
「ありますよ!! たぶん!!」
「たぶんかい!!」
優雅に白鳥の湖を踊っている桃の枝を見ながら、友美は、おもう。絶対に使うわけないと。
「とりあえず友美に預けますね!!」
「預かりたくないわ!!」
「えっ!!??」
「もし使えそうな出来事が発生したら、その時貸して!!」
友美は、そういい受け取りを拒否。
モアは、桃の枝を片付けると、結界が解かれた。
「光先生ありがとうございます」
「いいよモア」
表れた光にモアは、お礼を言うと、光は、桃の枝を見た。
「しかし……けったいなものが出来たな」
「けったい!?」
「羽月が許したものよねこれ……」
モアは、この時顔を青ざめた。
「羽月様に見せてないんです!!」
「えっ!!??」
「処分されたら困ります……」
友美と光が驚くなか、モアは、別の事を心配しだした。
「ならもう逃げる機能もつけたら??」
おろおろするモアに思わず友美は、言うと、モアは、瞳を煌めかせた。
「ナイスアイデア!! なら足からジェット噴射出させるようにしますね!!」
「ジェット噴射!!??」
光は、なぜそうなると思いながら、想像してみたが、シュールなだけだった。
「羽月のやつ唖然としそう」
白野威も表れ、改造しなければと帰っていったモアを見ながら、呟いた。
「もうしてます。姉上」
そして表れた羽月に白野威は、驚いた。
「見に来てたの!?」
羽月は頷くと友美と光にお礼を言った。
「ありがとう。モアに付き合ってくれて」
「羽月それは、いいけど……あれどうなるの??」
「さぁ……私にも分からないわ。友美」
「羽月すら分からないって……」
どうなるんだいったい。
友美がめんどくさそうな顔をし、光が苦笑いを浮かべるなか、羽月と白野威は、ため息をこぼしたのであった。
その後桃の枝は、さらに改造され、とんでもない出来事を巻き起こしたのは、また別の話しである。
「しかし対策は、必要ですよね!!」
虚空ノ宮にてモアは、資料をみながら呟いていた。
「モアよ」
「瑠花さん!!」
この宮の管理人である瑠花は、少し呆れた顔をしモアに声をかける。
「静かにせよ。少しうるさいぞ」
叱られた。モアは、頭を下げると、瑠花にあることを聞いた。
「瑠花さん」
「なんじゃ」
「黄泉に関しての資料ってありますか??」
瑠花は、しばらく考えたのち、近くにあった本をとった。
「これくらいじゃな」
「ありがとうございます」
「黄泉に関しては、資料も少ない。詳しくは、友美か光に聞くことをすすめる」
友美と光は、なんやかんや黄泉のことをよく知っている。
モアは、やはりそうなるのかとため息を着いた。
「あまりお二人に聞きたくないんです……」
「ほう。それは、何故じゃ??」
「確実に怒られることをするからです!! 私が!!」
楽しげに笑うモアに、瑠花は、顔をひきつらせた。これは、なかなか大変なことになるかもしれないと。
「まさか黄泉をテーマパークにすると戯言を申すわけでは、なかろうなぁ……」
「さすがにそれは、世界の均衡を壊すのでダメです!!」
「分かっておるのであればよい」
瑠花は、そういうと、去っていったが、モアは、資料を黄泉ながら、やはりこれは、二人どちらかの手を借りなければならないと思った。
「先ずは、羽月様に相談……」
モアは、資料を片付け、そして虚空ノ宮を後にすると、高天原へ向かった。
月花ノ宮には、多くのウサギが住んでいる。月読の眷属であるウサギたちは、せっせこ本日も与えられた役目をしていた。
「羽月様!!」
宮ノ執務室にて、羽月が書き物をしていると、一羽のウサギが入ってきた。
「どうしたの??」
「モア様がお越しです!!」
羽月は、通してというと、すぐにモアが入ってきた。
久しぶりにやってきた神子は、どこかワクワクしていた。
羽月は、どうしたのかと思いながら、話す。
「モア久しぶりに顔を出したと思ったらどうしたかしら??」
「聞きたいことがあるんです!!」
「聞きたいこと??」
「黄泉に関して羽月様は、色々ご存知ですか??」
羽月は、瞳に鋭い光を宿した。モアは、人では、なく神だ。もとは、いっかいの神だったが、昇格し、今は、羽月の使いとして、彼女に仕えている。
もとからモアは、他者とみる視点が違う。彼女なりに何か気になったのかもしれない。
「えぇ。少しはね」
モアは、事情を説明し、羽月は、話を聞くなかで、モアが何故黄泉について質問してかたのか、納得できた。
「また母上の起こした事件が再来しないとも限らないか……」
「はい。ですので、黄泉に対する対策をしたいなと」
羽月は、難しい顔をすると言った。
「黄泉にかんしては、姉上の方が詳しいわ。なにより、姉上は、黄泉に下って帰ってきた神ですもの」
白野威の顔を思い出し、羽月は、いう。
当代の天照と違い、やはり姉は、少し特別なようだ。
普通の神なら黄泉にいけばすぐに衰弱し本来のちからを出せなくなる。しかし白野威は、違う。
多少は、力が弱くなるようだが、本来の力を発揮できる。
やはり太陽神だからだろうか。
「三貴神の中でも姉上だけだと思うわ。なんの対策も無しに、黄泉に放り込まれても、帰ってこれるのは」
「天照様は、やはり特別なのでしょうか……」
「かもしれないわね。ポックリ死んでしまったのに、黄泉にも下らず、ナカツクニに留まり、転生したと思ったら、力も記憶も、容姿もそのままで帰って来たから」
羽月は、少し困ったように笑うと言った。
「羽月様、天照様の事大好きですね」
「そりゃずぼらでてきとうな姉だけど、優しい素敵な神だもの」
「ですね!!」
やはり白野威や友美たちに聞かなくては、いけないのだろうか。
モアは、どうしたものかと、悩んでいると、羽月があることを思い出した。
「そういえば……黄泉の穢れは、桃に宿る力で祓えると……」
「桃ですか……」
「そうよ。西王母の伝説でもあるけど、桃は、古来より、神聖な果物とされてきたわ。父上も黄泉にいったとき、近くにあった桃の枝で穢れを祓い、帰ってきたのち、さらに禊をし、穢れを祓った。なら少しくらい桃の枝を細工すればなにかしら黄泉対策グッズが出来るかもね」
「なるほど……」
羽月は、この時少し顔をひきつらせた。モアがとても瞳をキラキラさせ、何かを思い付いた顔をしていたからだ。
(大変なことにならないといいのだけど……姉上と友美には、伝えとこうかしら……)
たぶんモアがことを起こせば、友美が大変なことになる。もし桃の枝を試すとしても、それには、友美の力が必要だからだ。
「モア……お願いだから騒動は、ほどほどにね!?」
「はい!! 羽月様!!」
モアは、そういうと、執務室を去っていってしまった。
羽月は、まずいとすぐに白野威に連絡をいれ、事の経緯を話すと、白野威は、呆れていた。
「モアのやつ……」
「すみませんがたぶん友美が巻き込まれるかと……姉上よろしくお願いします」
珍しく人の姿でゴロゴロしていた白野威は、頭をかきながら話す。
「そもそも試作品試すのにお袋の力が必要になってくるでしょう??」
「そうかと」
「お袋がモアに手を貸すわけないしなぁ……」
あのイザナミが力の一部を友美に譲渡したのは、友美だからだ。他の神子や神が頭を下げたところで力は、貸さないだろう。
「だと思います。母上からすれば、わたしの遣いなどゴミかと思いますし」
「ゴミってね……」
確かに怪訝そうな顔をし、モアを消しそうだが。
「分かった。一先ず友美には、話しとく」
「ありがとうございます」
羽月は、連絡を切ると、椅子の背もたれにもたれた。
「私に出来ること……」
そう呟くと、立ち上がり、羽月は、執務室をでていった。
桃枝に細工するのは、以外に難しく、もとからある清浄な力を損なわないようにモアは、術をかけ改造し始めた。
ようやく納得できるものが出来、実験するところまで来た。
「黄泉の穢れを……ナカツクニで……」
やはり友美の力を借りなければいけないようだ。黄泉に出向くにもすぐにモアの場合行動不可になってしまうだろう。
「しかたがありませんね」
モアは、スマホを取り出すと、友美に連絡をした。
友美は、すぐに電話にでてくれたのでさっそく話をした。
「えっ!?」
「モアの為でもあるからお願い。私からの条件は、それよ」
「了承しないとなると……」
「話しは、受けないわ」
モアは、背に腹はかえられぬと、友美の提案に乗った。
後日モアは、指定された場所に来ていた。
「虚空ノ宮にこんなところがあるんですね……」
大きな湖の畔、モアは、あたらを見渡していると、友美がいた。
さっそく駆け寄ると友美の様子がおかしい。普段の気配より深く静かだが恐ろしい気配がしていた。
「モア時間どうりね」
「友美今日は、よろしくお願いします!!」
よくみてみ見ると、瞳も深紅になっている。これは、力の影響だろうか。
「友美今日は、少し何時もと違いますね……」
「黄泉の力を表に出してるからだと思うわ」
「なるほど!!」
ならこの気配の理由も納得できる。
友美に連れられ、モアは、さらにひらけた所にやってくるとそこには、大きな術式が展開され、幾重にも結界が張られていた。
「凄い……」
「イザナミの力を漏らさないためにもね」
それほどに黄泉の力とは、恐ろしいものなのだとモアは、感じた。
「友美こんなにも厳重に管理をするのならあの条件は、必要でした??」
友美は、真剣な顔になる。
「必須よ」
「ですが……」
「モアこの結界どんなものか分かる??」
モアは、感じる気配から推測した。
「……太陽の力でしょうか……??」
「少し当たりね」
「少しだけですか!?」
「えぇ。この結界は、特殊で、太陽の力と生成と生産の力が複雑に折り重なっているの」
モアは、驚いた顔をする。そんな芸当出来る神子は、目の前の人物ともう一人しかいない。
だから友美は、この条件を提示してきたのかとモアは、納得していた。
「必ず光先生を同行させること……」
「そう。これを維持できるのは、光だけだから」
「なるほど」
「白野威も頑張ったくれてるけど、黄泉の力を打ち消せるだけの力の出力と維持は、光しか出来ないから」
「友美ですが、友美が維持しながら、実験することも出来たのでは??」
「それは、私の力の均衡が崩れて、厄災を招く危険性をはらんでるから、やらないわ。それに私の力の管理も光に任せるのが安心だから」
確かに今の友美からは、黄泉の力以外の気配がない。
モアは、水郷ノ神子が何故ここまだ神々からも恐れられるのか、断片を見た、気がしていた。
「光先生さすがです……」
「本当よね。さぁモアやっちゃいましょう」
モアは、頷くと、結界の中に。中は、とくに変なことは、なく、原っぱが広がるだけ、ただ強い力の気配が満ちていた。
「じゃ始めましょう」
「ですね!!」
さぁ実験の開始だ。モアは、さっそく桃の枝を取り出した。
「それが噂の……??」
「はい!! 黄泉への対抗策!! アルティメット桃の枝です!!」
みるからになんの変哲もない桃の枝。しかしネーミングは、インパクトありすぎだ。
友美は、きょとんとしたのち、言った。
「ネーミングセンスが壊滅的」
「いいじゃないですか!! かっこいいから!!」
「かっこいい!?」
どこがだろうか。友美は、モアのセンスと感覚ののずれに、やはり彼女も神なんだなと思ったが、これは、モアだけかと思い直した。
「では、友美とりあえず撃ってください!!」
「えぇ……」
一先ず黄泉の力を、圧縮し、弾のように、モアに放つと、モアは、桃の枝を構えた。
「警告。2秒後に穢れが通過。警告。ただいまより、浄化モードに移行する」
電子音のような声が桃の枝から流れると、桃の枝は、黄泉の力が被弾する寸前で、爆発した。
友美は、その光景に驚愕する。
「えっ!!??」
煙がはれると、無傷のモアが立っていた。
「浄化モード終了。休眠モードに移行。充電時間およそ10分」
色々この時点で突っ込みどころ満載である。
なぜナビゲーターのような音声にしたのか、それに充電とは、なにかと友美は、言いたかった。
「おー!!! 成功です!!」
モアは、一柱喜ぶなか、友美は、言う。
「モア……そのナビゲーション要る!?」
「要りますよ!! 神子ならともかく、普通の人もつかうかもですし!!」
「それと充電って……」
「空気中に含まれる自然エネルギーを使って桃の力を増幅してますから必要なんです!!」
「であの爆発は!?」
「爆発は、力を打ち消すのと、黄泉の怪物退治を兼ねてです!!」
友美は、唖然としながら、桃の枝をみていた。変哲もない普通の枝なのに、ふたを開けたら色々凄すぎる。しかしシンプルな為、どんな機能があるのか、まったく、分からない。
「……なるほど。ならそれ殲滅モードの方がよくない?? あと操作も分かりにくそう……」
「殲滅モード!! いいですね!! 操作に関しては確かに……」
モアも操作に関しては、同じことを思ったのでさらに改良が必要である。
「友美次は、近寄ってきてください!! 力を全開にして!!」
友美は、言われたとおりきちかづくと、桃の力が警報を鳴らしだした。
「危険。危険。直ちに退避せよ」
赤いシグナルを発しながら、サイレンまで鳴らし、友美は、あまりのうるささに耳をふさいだ。
「うるさい!!」
「大きい方がいいかと!!」
「大きすぎつうの!!!!!」
思わず白野威のように言ってしまった。
「モアそれどうにかならないの!!」
「危険が無くなるまで鳴ります!!」
友美は、マジかと思いつて、力を抑えると、桃の枝は、静かに鳴った。
「モアなんでこんな枝にしたの!!」
「少しでも分かりやすくです!!」
確かに分かりやすいが、色々問題だ。
今度は、天国と地獄を鳴らしだした桃の枝を見て友美は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。
「なんでクラシックの天国と地獄!!?? 慌てて走らせるつもり!!??」
「嫌でも早く逃げると思って!! ほらこの曲焦りますし!!」
「まぁそうだけど……」
「他にもほら!!」
桃の枝をモアが構えると、こんどは、枝からぼうボクシング映画のようなBGMが流れだす。
「闘志をもやせ!! です!!」
「モア!? それ退避ようじゃないの!?」
「場合によっては、武器にもなりますよー!!」
なんだろうこの桃の枝なかなかやばそうだ。今は、優雅かつ盛大な第九が流れている。
友美は、その機能要らないどころか迷惑になるのでは、と思った。
「モアそれ騒音」
「えっ!!??」
「騒音」
「でも、場を盛り上げるのも大切な事ですよ!?」
「まぁ、そうだけど……」
ケースバイケースである。
とうとう桃の枝が七色の光を放ち、マスカラまで振りだした。
「手と足……はえてるし……リズム取ってるし……」
「可愛いでしょう!!」
「……キモい」
モアは、信じられないとショックを受けていたが、こればかりは、外から様子を見ていた光も友美に同意だった。
「あれは……気持ち悪いな……」
「あの桃の枝いる!? 考えは、いいが、あれは私も要らん」
白野威まで要らないと言ってしまった。
モアは、なっとくいかない様子に、友美は、少しばかり困った顔をする。
「友美データ集めましょう!!」
「データ!!??」
「これを誰かに使ってもらうんです!!」
「使うって……そんな状況無いとおもうけど……」
「ありますよ!! たぶん!!」
「たぶんかい!!」
優雅に白鳥の湖を踊っている桃の枝を見ながら、友美は、おもう。絶対に使うわけないと。
「とりあえず友美に預けますね!!」
「預かりたくないわ!!」
「えっ!!??」
「もし使えそうな出来事が発生したら、その時貸して!!」
友美は、そういい受け取りを拒否。
モアは、桃の枝を片付けると、結界が解かれた。
「光先生ありがとうございます」
「いいよモア」
表れた光にモアは、お礼を言うと、光は、桃の枝を見た。
「しかし……けったいなものが出来たな」
「けったい!?」
「羽月が許したものよねこれ……」
モアは、この時顔を青ざめた。
「羽月様に見せてないんです!!」
「えっ!!??」
「処分されたら困ります……」
友美と光が驚くなか、モアは、別の事を心配しだした。
「ならもう逃げる機能もつけたら??」
おろおろするモアに思わず友美は、言うと、モアは、瞳を煌めかせた。
「ナイスアイデア!! なら足からジェット噴射出させるようにしますね!!」
「ジェット噴射!!??」
光は、なぜそうなると思いながら、想像してみたが、シュールなだけだった。
「羽月のやつ唖然としそう」
白野威も表れ、改造しなければと帰っていったモアを見ながら、呟いた。
「もうしてます。姉上」
そして表れた羽月に白野威は、驚いた。
「見に来てたの!?」
羽月は頷くと友美と光にお礼を言った。
「ありがとう。モアに付き合ってくれて」
「羽月それは、いいけど……あれどうなるの??」
「さぁ……私にも分からないわ。友美」
「羽月すら分からないって……」
どうなるんだいったい。
友美がめんどくさそうな顔をし、光が苦笑いを浮かべるなか、羽月と白野威は、ため息をこぼしたのであった。
その後桃の枝は、さらに改造され、とんでもない出来事を巻き起こしたのは、また別の話しである。