光明ノ神子

 狐の窓というとのがある。
 ある特定の形を手で作り、呪文を三度唱え、覗くと普段は、目に見えないものが見えるというものだ。
「狐の窓ねぇー」
 なにやら古い書籍を見ながら、呆れた顔をしている白野威。
 友美は、洗濯物を干しながら、その様子を見ていた。
「これ古書よね??」
「歴史的にも平安の頃のやつだろうね」 
 何故そんな古いものを白野威は、読んでいるのか。
 友美は、驚きながら、洗濯物を干していると、白野威は、本を閉じた。
「友美は、やっちゃ駄目だから!!」
 突然そんなことを言われ、困惑した。
「白野威主語!!」
「忘れてた……」
 白野威は、呟くとまた言う。
「狐の窓さ!! したら駄目だからね!?」
 友美は、狐の窓について、頭にある知識を引っ張り出した。
 狐の窓は、本来見えないものが見えたり、正体を暴けたりする呪術だ。
 友美は、この時白野威が恐れていたことに興味を示してしまった。
「白野威!!」
 瞳をキラキラさせ友美は、白野威をみると彼女は、唖然とした。
「さっきまでやらないいってたやつが!!」
「だって気になるんだもん!! 白野威ならいいでしょう??」
 白野威の素性は、明らかだ。へんに他のものにやるよりは、安全だ。
 友美は、期待に満ちた瞳で白野威を見つめると、白野威は、ため息を漏らした。
「どうなっても知らないからか」
「ありがとう!!」
 さっそく古書に書いてあるとおりに、手で形を作り、呪文を唱え、覗いてみる。
 友美は、しばらく覗くが窓の向こうは、変化なかった。
「なんで!?」
「友美。目の力off」
 友美は、頷くと、さっそく、力を切った。すると窓の向こうの白銀の狼が人の姿になり、見えた。軽い癖毛の白銀の髪の女性が。
「おー!!」
「気が済んだ??」
「白野威もしかして、見えるように変えてくれたの??」
 白野威は、頷くと、友美は、これが狐の窓かと感心していた。
「でもこれ知らない人が興味本位で使えないわね……」
 友美は、力のスイッチを入れるといった。
 友美のように本来人に見えないものがみえる人ならまだしも、そうでない人がこれを使えば、危険なことになりかねない。
「化けて人の中に紛れてるやつからしたら、ばらされのは、嫌なことだしね……なにより、人に見られことを嫌うわ、それが不敬だっていうやからもいるからね……」
 白野威は、困ったように言うと、友美も確かにと思った。
 人ですら、秘密をばらされるのは、嫌なので、神やらあやかしだともっと嫌なのだろう。
 物騒だが秘密がばれ、目撃者を始末する神や、あやかしもいるのだから。
「子供達には、教えないでよ」
「白野威子供達は、もう知ってるわ」
「なぬ!?」
 あの好奇心の塊の四人がこんな危険なものに、手を出したらと白野威は、顔を青ざめる。
「心配しなくてももう危ないって知ってるからやらないや」
「その口からして実験したな!!??」
「私も詳しくは、分からないけど、光が言ってたから」
 なら一度試したに違いない。やはり侮れない姉弟だ。
「でもこの狐の窓神子にしたらどうなるのかしら」
 友美の更なる疑問に白野威は、焦りいった。
「やめな!! やるのは!!」
「でも気になるもの……」
 神子のなかでも安全な者となると、友美は、ひらめく。
「いる!!」
「やるの!?」
「もちろん!! 探求のためにね!!」
 これは、大変なことになりそうだ。
 支度をする友美を横目で見ながら、白野威は、ため息を漏らした。

 冬休みが明け、忙しいかと思いきや、そうでもなかった。
 やはりこの診療室という特殊な場所に勤めているからだろう。
 光は、書類を片付けながら、ふと数年前のことを思い出していた。
「もうそろそろ共通テストか……高三の担当の時は、そういえば、ヒィヒィいってたな……他の先生達が……」
 定時に上がるために、尻を叩かれ、仕事をし、定時に帰る。
 この学校は、そういうところでもある。  
 校長が笑顔で、今日も職員室にいたが、これは、大変なことになりそうだ。
「ある意味……医師として勤めるようになってよかった……」
 光は、そう呟くと、書類をファイルにしまった。
「さて……」
 次の仕事をしようと思ったとき、診療室の電話がなった。 
「はい。診療室です」
 光は、電話対応をしながら、驚いた顔をする。そして電話を切り、しばらく待っていると、診療室の扉が開いた。
「お疲れさまです!! 先生!!」
 光は、目を細めるといった。
「友美いきなりどうしたんだ??」
「ちょっとね!! 今少し時間ある??」 
「少しだけなら……」
 何故友美がここへ来たのか。
光は、その事を考えながら、友美の様子を見ていると、友美は、診療室に入った。
 近くの机に鞄を置くと、さっそく光にむえ、狐の窓を作った。
「それ……」
 光が驚くなか、友美は、呪文を唱え、さっそく覗いてみた。
「……」
 友美は、狐の窓をやめると、悩ましい顔になる。
「うーん」
「何故狐の窓を……」
「神子を覗いてみたらどうかなって思って」
 友美は、椅子に座るとつまらなそうな顔になる。
「でよく知っていて安心できる神子って思い付いたの光だったの」
「で覗いてみてどうだった??」
「特になにもなし。 高御産巣日神の姿でも見えるかなと思ったけど無理だったわ。水郷も見えなかったし……」
 友美が何故光のところへ来たか。それは、自分が覗かれた場合のことも考えてだ。
「私が覗かれたとき、天之御中主神の断片でも見えたら大変なことになると思ったの」
 光は、席に着く。
「確かに……造化三神に関しては……内々のことだしね……」
 友美は、頷く。
「神にでも使って覗かれれば大変なことになると思ったけど……大丈夫そうで安心したわ」
「ならよかった」
 友美はそういうと立ち上がる。
「光ありがとう!!」
「もう帰るのか??」
 せっかく友美に会えたのにと寂しそうな光に友美は、笑う。
「もう少しだけいるわ。コーヒーいる??」
「もらう」
 どことなく嬉しそうに揺れている光に友美は、目を細めると、珈琲をいれはじめた。
「コーヒーメーカー置いてるのがすごい……」
「それ俺の私物だよ」
 友美は、驚いた顔をした。
「いつ買ったの!?」
「家のを買い換えるときに。安物でもいいからと思って。どうせここで使うだけだし、こだわる必要もないから」
 そうは、いうが、光の、事だ、安いながらもこだわったはず。
 友美は、コーヒーメーカーに珈琲豆をいれ、フィルターと水をセットすると、スイッチをいれた。
 珈琲豆の砕ける音にいい香りが診療室に広がる。
 しばらく待っていると美味しい珈琲が出来上がり、友美は、ガラスの容器を持ち上げると、マグカップにいれ、光の机に置いた。
「お待たせ!!」
「ありがとう」
 友美も自分の分をいれ、さっそく飲むと驚く。
「美味しい!!」
「それは、よかった」
 光も珈琲を飲むと頷く。
「いい感じだ……また豆変えてみるか……」
 まさか豆をいちいち変えているのかと思いながら、友美は、思う。ここから厳しい厳選に勝ち抜いた豆が家で飲まれているのでは、ないかと。
「光こだわりすごい……」
「そんなことないよ」
 光は、そういうと書類仕事をはじめた。
 彼の背中を見ながら、友美は、珈琲を飲む。突然押し掛けたが、このような時間を過ごせたのは、よかったと思いながら。
「白野威後でケーキ買いにいこうかな??」
 影に話しかけると、白野威が姿を見せた。
「いいじゃん!!」
「なら買いにいこうー」
  何時もなら静かなここが今日は、少し賑やかだ。
 光は、友美と白野威の会話を聞きながら、微笑むのであった。
 楽しそうなだなと思いながら。
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