短編
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実践さながらの訓練のはずが、突然現れた敵によってそれは現実のものとなった。
「君は、無個性らしいな」
敵の中で笑いが起きる。今時無個性のやつなんていない、そんなやつ殺せるなんてある意味レアだよな。どの言葉もイマイチ心に響かなかったが決定打となった一言があるとするなら一番実力のありそうな男が放った言葉だった。
「お前のところの担任もそろそろ死んだ頃だろう」
シャレにならないなぁ、冗談でもそんなこと言うものじゃないよ。今なら誰も見ていないことを周りをぐるっと見渡し確認する、気配もない。引き金を引いたのはそっちだ。生きて帰ろうなんて思う方が都合が良すぎる。誰が私を殺すか呑気に話し合っている敵の中心に入り込むと、全員が息を飲みバラバラに散らばろうとしたが、強引に一人を捕まえ頭を地面に叩きつけることで阻止した。
「…んだよ…お前…!」
「正義の、ヒーローだよ。」
20人そこらいた敵も今ではこの男ただ一人だ。すっかり腰を抜かして命乞いをする姿に同情の言葉も出ない。もうしないなんて言葉誰が信用するか教えて欲しい、どうせ振り向いたら後ろからブスリだ、定石にもほどがある。敢えて受けてあげるのも悪くないかと、次はないからねと言葉を残し振り向き歩き出すと、案の定死ねという言葉と共に敵が飛びかかってきた。お前が死ね。腕に力を込め頭を吹き飛ばしてやろうとしていたが目標は何かに引っ張られ地面に引きずり落とされた。
「あれ、生きてた」
「勝手に殺すな」
「いや、そいつが死んだとか言ってたから…どうしてくれようかって考えたの」
「よかったな、考えるだけ無駄な時間だったぞ」
「あー確かに」
どしゃと倒れている男の頭を踏みつけ地面に押し付けていると相澤がこれ全部一人でやったのか、と尋ねてきた。
「うん」
「うん、はいいけど見られてねぇだろうな」
「気配も姿もなかったので問題ないかと」
「本当かよ」
「まっ!信用ない!」
「見られてもいいからぶん殴ったとかありえそうだしな」
「否定できないのが辛い」
まぁいいやと、適当に敵の頭を蹴る。うまい具合に記憶飛ばないかな~なんて思うけどそう単純にはいかないだろう。実際こいつらが何を言おうが黙らせることはできるのでなんの問題もない。とりあえず嘘をついた罰だと肘を思いっきり踏んづけて骨を折っておいた。両腕。
「相変わらずエゲツないな」
「やるなら徹底的に、がモットーなので」
急に子供らしくなったなと頭を撫でた相澤の腰にしがみ付く。この姿では身長差が大きいため胸のあたりに顔を埋めることになる。心臓の上に耳を当てるとドクドクと規則正しい心音が聞こえ、先ほどまでの焦燥感を消し去る。ふぅ、とため息をつきながらも、頭を抱きしめて生きてるよ、と心臓に当てている反対の耳に言い聞かせるように言われ苦しくなった。
「よかった」
あとちょっとだけ、こうさせて欲しい。