短編
御名前
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苗字名前と煉獄杏寿郎は幼馴染である。
家が隣で、まだ四つん這いでしか歩けなかった頃からの付き合いで、杏寿郎のことはよく理解していると名前は思っていた。
ついさっきまでは。
「…ごめん、もう一回言って?」
「うむ、俺はこの家を出ることにした!」
杏寿郎が鬼殺隊に入りたいとずっと思っているのは当然ながら知っていた。幼少の頃から彼がお父さんに憧れて武術や剣術を教わっている姿を何度も見てきたし、杏寿郎からそう言われたこともあるからだ。
だから、杏寿郎は鬼殺隊に入るべくして入ったと名前は思っている。
ここまでは良いのだ。
杏寿郎が鬼殺隊に入隊してから半年経った今、彼は修行のためにこの家を出ると言い出した。
「少しの間家を空ける」と言われるならまだしも、「家を出る」と言われたのだ。名前は大層驚いた。
「どうして?修行がしたいならこの家から出なくてもできるじゃない。それに千寿郎はどうするの?まだあんなに幼いのに!置いて行く気?」
「千寿郎はしっかりしているからな。俺がいなくても大丈夫だ!…それに、名前が気にかけて面倒見てくれるだろう?」
「何で私が面倒見る前提なのよ!いや見るけど!」
杏寿郎は名前の性格をよく分かっていた。名前が赤ん坊の頃からずっと面倒を見てきた千寿郎を放っておくわけがないし、名前自身もそうする気なんてないことを理解した上での発言だった。
「…名前、俺はもっと強くなりたいんだ。もっと強くならなければ、大切なものを守れない。だから強くなるために家を出るんだ。何、鬼殺隊で一番上の階級になったら帰ってくる、それまで家を空けるだけだ!」
「…………その一番上の階級にはいつなるの」
「すぐなるさ!」
杏寿郎のぱっちりと開かれた目が、燃え盛るような瞳が、自分を真っ直ぐに捉えているのを見て、名前は杏寿郎の変わらぬ意志を悟った。
「…分かった、じゃあ早く出たら?で、一刻も早く帰ってきてよ。」
「ああ!無論そのつもりだ!」
「最初からこうなるって分かってたみたいな顔してるけど?」
「分かっていたぞ。いつも俺の味方でいてくれる、そんな名前が好きだからな!」
「は?」
突然の告白だった。
今まで愛の言葉を言われたことなんて一度もなかった。
二人は本当にただの幼馴染だった。
それが今、急に。
「………え、ごめん、あの……?」
「俺は名前が好きだ!」
「……………。」
名前の時が止まる。
しかしそれを許さないかのように、杏寿郎は言葉を発した。
「俺が無事、この家に帰ってきたら…夫婦になってくれないか」
柔らかくも強かな笑みを浮かべてそう言った杏寿郎を見て、自分も心の奥底ではずっと杏寿郎を想っていたことに名前は気がついた。
数年後、炎柱となって煉獄家に帰ってきた杏寿郎と名前が夫婦になったのは、語るまでもない。
家が隣で、まだ四つん這いでしか歩けなかった頃からの付き合いで、杏寿郎のことはよく理解していると名前は思っていた。
ついさっきまでは。
「…ごめん、もう一回言って?」
「うむ、俺はこの家を出ることにした!」
杏寿郎が鬼殺隊に入りたいとずっと思っているのは当然ながら知っていた。幼少の頃から彼がお父さんに憧れて武術や剣術を教わっている姿を何度も見てきたし、杏寿郎からそう言われたこともあるからだ。
だから、杏寿郎は鬼殺隊に入るべくして入ったと名前は思っている。
ここまでは良いのだ。
杏寿郎が鬼殺隊に入隊してから半年経った今、彼は修行のためにこの家を出ると言い出した。
「少しの間家を空ける」と言われるならまだしも、「家を出る」と言われたのだ。名前は大層驚いた。
「どうして?修行がしたいならこの家から出なくてもできるじゃない。それに千寿郎はどうするの?まだあんなに幼いのに!置いて行く気?」
「千寿郎はしっかりしているからな。俺がいなくても大丈夫だ!…それに、名前が気にかけて面倒見てくれるだろう?」
「何で私が面倒見る前提なのよ!いや見るけど!」
杏寿郎は名前の性格をよく分かっていた。名前が赤ん坊の頃からずっと面倒を見てきた千寿郎を放っておくわけがないし、名前自身もそうする気なんてないことを理解した上での発言だった。
「…名前、俺はもっと強くなりたいんだ。もっと強くならなければ、大切なものを守れない。だから強くなるために家を出るんだ。何、鬼殺隊で一番上の階級になったら帰ってくる、それまで家を空けるだけだ!」
「…………その一番上の階級にはいつなるの」
「すぐなるさ!」
杏寿郎のぱっちりと開かれた目が、燃え盛るような瞳が、自分を真っ直ぐに捉えているのを見て、名前は杏寿郎の変わらぬ意志を悟った。
「…分かった、じゃあ早く出たら?で、一刻も早く帰ってきてよ。」
「ああ!無論そのつもりだ!」
「最初からこうなるって分かってたみたいな顔してるけど?」
「分かっていたぞ。いつも俺の味方でいてくれる、そんな名前が好きだからな!」
「は?」
突然の告白だった。
今まで愛の言葉を言われたことなんて一度もなかった。
二人は本当にただの幼馴染だった。
それが今、急に。
「………え、ごめん、あの……?」
「俺は名前が好きだ!」
「……………。」
名前の時が止まる。
しかしそれを許さないかのように、杏寿郎は言葉を発した。
「俺が無事、この家に帰ってきたら…夫婦になってくれないか」
柔らかくも強かな笑みを浮かべてそう言った杏寿郎を見て、自分も心の奥底ではずっと杏寿郎を想っていたことに名前は気がついた。
数年後、炎柱となって煉獄家に帰ってきた杏寿郎と名前が夫婦になったのは、語るまでもない。
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