炎の音
御名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「うーん……こっちかな」
「やっぱりー!?センスがある名前ちゃんに選んでもらえると自信出てくるわぁ、ありがとう!」
「ちょっと!それじゃあアタシがセンスないみたいじゃないの!!」
「えーっだってまきをさんに選んでもらったら大体好みじゃないやつになるんですよ!」
「好みがあるなら最初から聞くな!」
「す、須磨さん…私も別にセンスがあるわけでは…」
「そうよ、名前は直感が優れてるんであって、センス云々じゃないのよ!」
「えーー!?でも」
「お二人とも、喧嘩は程々になさって下さい…」
宇髄家は朝から賑やかだ。
朝食を作る音、天元を起こす声(ちなみに起こすのは妻の当番制で、毎朝違う人が声をかけている)、朝食を食べる音、食べる時の会話、食べた後の片付けをする音、まきをと須磨が喧嘩する声、そしてそれを注意する雛鶴の声、など、など。
(賑やかで楽しいこの家に置かせてもらえて、私は本当に幸せだな。……この幸せを守りたい…。)
だから、妻である雛鶴・まきを・須磨を花街に送り込むのを名前は反対していた。
「………私言いましたよね?師匠…」
「まあな」
「奥さん達を潜入させるなら、私も行きますって。言いましたよね。でも師匠は耳も貸さずに送り込んで、その結果がこれですか。」
数ヶ月前から花街に潜入していた三人の妻との連絡が途絶えた。
天元も心配しているのは充分に分かっている。
でも、それでも、名前は言わずにはいられなかった。
「……アイツらを助けに行く」
「当たり前です!」
「その前に準備だ」
「えッ?」
そうして二人は蝶屋敷にやってきた。
………が。
「キャーーーーーーーーッ」
「放してください、私っ……この子はっ……」
「うるせェな黙っとけ」
「ひいぃぃぃ」
「いや師匠!ちょっと待ってくださいよ!そんな乱暴しないで!!」
「あァ?人手が足りねェんだ仕方ないだろ」
「やめてくださぁい」
「はなしてください〜〜〜」
天元はいきなり屋敷の女の子達を連れて行くと言い出し、一人は俵担ぎに、もう一人は脇に抱えてしまった。
名前は必死に放そうとするも、天元のごつごつした硬い腕には敵わない。
「女の子達が泣いてるじゃないですか!やめましょうよ!これじゃただの人攫いですよ!ほら!継子さんも困ってる!!!」
「カッ…カナヲ!!カナヲ!」
「カナヲさまーーーっ」
女の子達にその名を呼ばれたカナヲは、二つ結びの女の子の手とおさげの女の子の裾を掴んだ。
「カナヲ…」
「カナヲさま…」
「地味に引っ張るんじゃねェよ。お前はさっき指令がきてるだろうが」
「………」
「いや師匠こそ放しましょうよ。嫌がってるでしょうが」
「………」
「何とか言えっての!!地味な奴だな!!」
「キャーーーーーッ……とッ突撃ーーー!!」
「突撃ーーー!!」
「ちょッ…てめーら!!いい加減にしやがれ!!」
「いやいい加減にするのは師匠で…」
「女の子に何してるんだ!!手を放せ!!」
いきなり現れた、痣のある少年の声で一瞬時が止まる。
「た、炭治郎さん…人攫いです〜っ助けてくださぁい」
「炭治郎…?」
「この馬鹿ガキ…」
「キャーーーーー!!」
炭治郎と呼ばれたその少年は師匠に頭突きをしようとする……が、天元は躱して門の上へ、少年と突撃した女の子がその場に落ちた。
(あ…よかった、怪我はなさそう。)
(っていうか、炭治郎って……竃門炭治郎…?)
「愚か者、俺は"元忍"の宇髄天元様だぞ。その界隈では派手に名を馳せた男」
(また自分のこと様付けしてる…)
「てめェの鼻くそみたいな頭突きを喰らうと思うか」
「師匠、いい加減放しましょうよ…」
「そうだ!アオイさん達を放せこの人攫いめ!!」
「そーよそーよ」
「一体どういうつもりだ!!」
「変態!!変態!!」
「てめーらコラ!!誰に口利いてんだコラ!!俺は上官!!柱だぞこの野郎!!」
「お前を柱とは認めない!!むん!!」
(むん?)
「むんじゃねーよ!!お前が認めないから何なんだよ!?こんの下っ端が!!脳みそ爆発してるのか!?」
(むんって、何だ。可愛いな…)
「俺は任務で女の隊員がいるからコイツら連れて行くんだよ!!"継子"じゃねェ奴は胡蝶の許可を取る必要もない!!」
「なほちゃんは隊員じゃないです!!隊服着てないでしょ!!」
「じゃあいらね」
「あッ!!!」
天元がなほちゃんと呼ばれた女の子を突き落としたので、名前は地面に当たってしまう前に受け止めた。
「ちょ………師匠!!!何するんですか人攫いの上に女の子を突き落とすなんて!!」
「何てことするんだ人でなし!!」
「わーん落とされましたぁ」
「とりあえずコイツは任務に連れて行く、名前だけじゃ足りねェし、役に立ちそうもねェがこんなのでも一応隊員だしな」
「人には人の事情があるんだから無神経に色々つつき回さないでいただきたい!!アオイさんを返せ!!」
「ぬるい…ぬるいねェ、このようなザマで地味にグダグダしているから鬼殺隊は弱くなってゆくんだろうな」
「……あ」
天元の両脇の塀に、更に少年が二人現れた。
彼から見て右側は猪の頭を被った少年、左側は金髪の少年だ。
「アオイさんの代わりに俺たちが行く!!」
「今帰った所だが俺は力が有り余ってる。行ってやってもいいぜ!」
(猪の頭の子、しゃべるんだ!??)
「アアアアアアアアオイちゃんを放してもらおうか例えアンタが筋肉の化け物でもお、俺は一歩もひひひ引かないぜ」
(金髪の子は凄く怯えてるな……)
「………あっそォ。じゃあ一緒に来ていただこうかね………ただし、絶対俺に逆らうなよお前ら」
そう言って天元はようやく門の上から降り、女の子を放した。
「で?どこ行くんだオッさん」
「日本一色と欲に塗れたド派手な場所」
「?」「?」「……」
「鬼の棲む"遊郭"だよ。…任務の前に、お前らには言っておくことがある」
「師匠、言う必要ないと思いますよ?」
「名前は黙ってな」
(はあ……)
何を言おうとしているのか名前には何となく想像がついた。継子になる前から今まで何度も同じことを言われていたからだ。
「いいか?俺は神だ!お前らは塵だ!まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!ねじ込め!!俺が犬になれと言ったら犬になり猿になれと言ったら猿になれ!!猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に伺い全身全霊でへつらうのだそして!!もう一度言う、俺は神だ!!」
「「「………」」」
「あー…………気にしなくて結構ですよ、この人結構…」
「はい!」
竃門がいきなり手を挙げた。
「具体的には何を司る神ですか?」
「……竃門君、別に付き合わなくても」
「いい質問だ。お前は見込みがある」
「…………」
「派手を司る神……祭りの神だ」
(アホだ…………あっ、金髪の子も呆れてるよ…)
「俺は山の王だ!よろしくな祭りの神」
「何言ってんだお前…気持ち悪い奴だな」
「いや師匠も大概ですよ。それより………君は竃門炭治郎君で合ってますか?」
「あ、はい」
「後の二人も名前を教えてください」
「我妻善逸です」
「嘴平伊之助だ」
「ありがとうございます。私は苗字名前です。さっきも言ってましたけど…こちらは音柱の宇髄天元です。それじゃあ師匠、行きましょうか」
「あァ。花街までの道のりの途中に藤の家があるからそこで準備を整える。付いて来い」
「早くしないと置いて行っちゃいますから、気をつけてくださいね」
「はい!」
一悶着はあったが、何とか出発。