DEATH NOTE
おなまえ
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私は幽霊です。あなたに憑きたいのですが、よろしいでしょうか。
この問いも何度目でしょうか。
あなたのこと、なんでも知っています。「なんでも」が無限でも有限でも銀河であっても。奥底のどこまでを指す言葉であっても、なんでも。どこまでも。深く、あなたを把握しています。あなたへつながる五感があれば、さらに奥へ行けたのでしょうが。
枕元に立っています。私は幽霊です。あなたのことなんでも知っているのに、そのうえどうしても憑いてしまいたい、欲深な幽霊です。
部屋の隅で座っているだけではもはや立ちゆかない問題に、嫌気がさしている。
繰り返す抱擁のまねごとにあなたが寒気を感じていること。執拗なほど透きとおるくちびる同士のなんと切ない温度。間接ですら許されない命の隔たり。そのすべてがひんやり冷たいので困ります。これは、悲しい気持ちに似ています。体温を探すようにしてくちづけると、無為な欲望が小石のごとく積み重なります。
「」
それでも時折こうして確かめます。本当は嘘なのかもしれないから。次の朝日のときには触れられるかもしれないから。一縷の希望が眼前にくくりつけられてふらふらに揺れている。いつでもてのひらを透過する夢。色がついている透明の恐ろしさは、夕暮れのときの濃い影と無い影を見くらべればよくわかります。
欲望。あなたへの運命。命もないのに運命を語るのは滑稽ですか?命がないのなら運命も死んでいるのでしょうか?
恒久的に長く赤い糸を、ぐるぐると手首に巻き付けて、たぐって、たぐりよせて、ひきよせて。あなたのあんよが一歩でもこちらへ動いてしまえば、私の勝ち。
だから樹木のような健康に嫉妬の釘を刺す。あなたの眠る顔があんまり白いので、毎夜期待してしまう。薄白く夜明けの空に、あたたかそうに映える睫毛を、少し残念な気持ちで見つめています。きっといつまでも。
無接触であっても成立しうる幻想が続々と息吹きます。
そのことを幽霊の言葉で◆◆といいます。◆◆しているんです、ああ、私がこうして告白するたびに、怪音がざあざあごんごん鳴って重なって、あなたの耳には届かないことでしょうが。
本当に?
私の声が聞こえていませんか?
私の指先の感触がしませんか?
私の眼の黒さを知りませんか?
眼を合わせると、あなたの頭に耳鳴りがするみたいですね。それならその耳鳴りが、どうか私のささやき声の抑揚で鳴っていますようにと願います。
どうか気づいて、できればこわがらないで、私を本当に抱きしめてください。生きているみたいに、死んでいるみたいに、心を大切にくるむみたいに、丁寧に。甘い記憶ですべてを塗り替えてほしい。いまさらな走馬灯のような一瞬の永遠を、あなたと味わいたいと思う。
でも私は幽霊で死んでいます。
無い脈でゆらゆら浮かんでいると、恋心の存在すらもどこかオカルトです。
それなのに、動かないはずの心臓があなたにつなぎとめられてたまらないのです。心をぎゅっと縛られて、あなたのそばから動けなくなる。壁をすりぬけてどこへでも行けるのに、どこにも行きたいと思えなくなる。
まだ恋人でもないのに束縛をされるなんて、それほどうれしいことはない。この胸で湧きおこる仮初めな知悉が、きっとあなたの意思で、ふしぎな力で、そうしているのだと信じさせてくれる。
ポルターガイストにはおしなべて恋愛感情が含まれているものだから。
あなたのきらいな人がいなくなったのは?あなたのすきな人もいなくなったなら?あなたすら黒い風に巻いていなくしてしまえば?今の逡巡を凌駕する何かに浸れるのでしょうか。
私は幽霊です。あなたに憑きたいのですが、よろしいでしょうか?
憑いてはいけないというなら、私、今夜はとびきり怖い夢を見せてしまうかもしれません。
私は幽霊です。憑いてもよろしいですか?
よろしいですか。よろしいですか。よろしいですね。私は幽霊です。あなたの幽霊です。いつもあなたを◆◆しています。