DEATH NOTE
おなまえ
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いちいち思考が止まるのだ。あなたさんの残り香をこの頭が覚えてしまったから。どこにいても何をしていても私はその残滓の犬だ。ふと、やわらかな紅茶の湯気のゆらぎとともに、あなたが背後で移動したことがわかった。
「あなたさん」
私はわざとらしく捜査本部メンバーの前で彼女をよびつける。
どんなに切迫した状況であっても一番にあなたが目蓋をよぎるから迷惑です、とは思っているが伝えないつもりだ。
私は座ったまま椅子を回転させ、背後に寄ってきた彼女の顔を見上げた。なにかやってしまったかと不安そうな表情だ。
「あなたさんは……香水をつけてらっしゃいますか?」
「い、いえ。業務に差し障りが出るといけませんので」
「そうですね。その通りです。……」
「……あの。なにか、その……ご迷惑をかけてしまいましたか?」
彼女が申し訳なさそうな顔で私を見下ろす。
ようするにあなたさん本人の体臭やふだん洗濯に使用している洗剤や柔軟剤、ヘアケア・スキンケア用品等の香りがまじりあって、彼女のにおいになっているというのだ。これでは、つきとめるのに難儀しそうだ。
「いいえ。すみません。こちらの勘違いです」
あなたを瓶づめにして持ち歩けたなら、私にもその香りがうつってくれるでしょうか。そうできたなら、私はどんな場所にだって彼女を連れていくだろう……あなたさんがそんなに小さかったら、スイーツとまちがって食べてしまいそうだ……。
ああ。あなたの首筋に思い切り顔を埋めてほおずりをしたい。
身体から、服から、髪からたちのぼる婀娜な蠱惑そのものを私にマーキングするみたいにして。
無名の首輪をつけたまま、私はあなたのものなのだと、街を歩きたいです。どこまでもいつまでも、影よりもそばについてくるあなたの分身。
あなたがかけている迷惑をあげるとすれば、こうした無意味な無限の妄想に私を陥れてくるということくらいだろう。
病的だろうか。
「竜崎からあなたさんのにおいがする」と騒ぐ松田さんを思い描いて、まだ行動には移せない想像ばかりに身をやつす自分をすこし慰める。彼女はもう私に背を向けて、捜査に戻っていた。