DEATH NOTE
おなまえ
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まだ完全に夜が明けるまで時間があった。PCが吐き出す空気を吸ってため息をついた。
あなたの寝息を聞いていた。たぶん、あなたは夢を見ている。どんな夢かは、私には見当もつかない。耳につながるイヤホンを介してやがては私すら侵犯する無垢な寝顔、あなたを、空虚なほど欲しいと思う。心底。
むにゃむにゃ言うとか、うなりながら寝返りをうつとか、瞬きのあいだにこぼれおちてしまうような一瞬がその欲望をどうしようもなく加速させる。飲んでいたコーヒーが無くなったので、マグカップの底にたまった砂糖をスプーンですくう。
あなたはあなたの部屋にカメラやマイクが仕掛けられていることなど知らないだろう。そうでないならあなたは悪魔、それか夢魔だ。私を餌にしてつぎの獲物をさがす悪だ。私を食べてしまったあとは、きっとどこか誰かのもとへ狙いを定め直すのだ。
だけど本当のあなたは無垢だからよかった。あなたが何も知らないひとでよかった。あなたの頭が私を知らなくてよかった。
唇から漏れだすあなたの純真をとらえて、ぱくっと食べてしまいたい。そうしたらきっと、きもちいいのに。あなたの上に乗ってみたい。あなたの頬を舐めてみたい。あなたに汚されたい。ただ液晶のドット、ドット、ひとつずつの白と黒の滞りからなる私のひそかないらだち。だってあなたさんにさわれない。
口に含んだ砂糖はしゃりしゃりしていて、頭が悪くなるような甘さだ。だから私はもう一口すくった。
ため息。
空っぽの皿やコップが散乱した私の机、理路整然と私に反論してみせるかのようなあなたの整頓された部屋、枕に散らばっている髪に宿る光、そのそばにあるぬいぐるみのにおい、お気に入りのパジャマ、私はどこにいるのか、布団をしっかりかぶる癖、すこし開いたカーテンの隙間から呼び声と吐息、それを押しとどめる吐息、かわいい甘い残滓、やわらかく握られる指先の力、したいことがたくさんある、あなたの心、夢、悪夢、夢から覚めたあとのこと、夜明け前の空気にとくべつ似合う目の色、それを覆い隠す吐息のまぶた、あなたの呼吸の音。奔流。
夜ごと襲い掛かる欲求の宇宙。
あなたのせいで私は今、ちょっと苦しいんです。