すごく短いもの
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……世界が終わるならあしたがいい。」
隕石が落ちる、戦争が起きる、地球が割れる、あるいは、あるいは。オカルトにも近い俺の言葉は、ある程度の沈黙と、姉さんのなにか考えているような神妙な表情をつくりだすという、空虚な広がりをみせた。
「…じゃあ、まずアイスを食べよう」
姉さんはまじめな顔であなたに言った。
俺は、あなたをここへ迎え入れる日の鬼のような量の買い出しを思い出していた。両手いっぱいにレジ袋を携えて、姉さんに口を出されながら運搬係としてよく働いたのだ。
「ああ。もったいないからな」
「うん。冷凍庫にさ、いっぱいあるから」
「やったあ」
あなたがそこで、やっと歓喜の声をあげた。俺は次に、あなたをはじめてみた日を思い出す。あれから何も変わっていない、何も、俺たちだって何も変わっていない。変わらずにお互いのことを愛している。
「おなか壊さないでね」
姉さんが姉らしい顔をして笑った。
「あした終わるなら、きょうはしたいことをしなきゃ」と言って、姉さんは一転、こどものようにあなたに抱き着いた。
アイスを何個か消費した身体はさっきより幾分か冷えている気がする。指先が、悴む感覚を冬ぶりに取り戻すようにしびれた。
何もない部屋が、姉さんとあなたの声をやけに大きく響かせる。ほんとうの姉妹のようなに歪んだ反響で、きいたことのない音楽のような違和感を伴って、ぼやけたまま耳に残るのだ。
俺たちの姿はどう見えているのだろう。この部屋を出たなら、俺たちの関係はどうにかなってしまうのだろうか。それが怖いから目を逸らすために俺たちは世界すら終わらせる。
死んだようにねむるあなたを見て、俺はこの子と死にたいのだと思った。頬を撫ぜると、許された気分になるのが気持ちいい。人らしく生きて、人でなしとして死んで、あなたはそれでも、いつでも、ほほ笑んで両手を広げてくれるような気がした。
ああ、毎日願っていたおわりがくる。ねむる1秒前に、この日々が早くおわりますようにと、願っていたその日々がおわる。報われるように見えてただ遮断されただけの俺の祈り、それとあなたの笑った顔が、繰り返し上映されている。
ずっとあなたが好きだったことが変わっていたのは知っていた。不変はなく、俺だって姉さんだって神に等しいあなただって例外ではないことも同じく知っていた。
気をあなた以外に遣ろうと思えば思うほど、あなたがかわいく、目を離せなくなっていく、あなたをこのまま抱きしめて閉じ込めたままじゃなにかおかしい、そのなにかを壊してしまう、いや壊してしまいたい。と自分の言い訳にほだされていた時から俺は壊れていた。
「あなた、愛してる。」