すごく短いもの
おなまえ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ぬいぐるみになって手足をもがれてみたい。
カワイイぬいぐるみのいびつな線対称になって、ボタンの目玉からあなたを見つめたい。
無機物の心を綿いっぱいに波打たせて、生きていないでいたい。生きていなければ、手足をもぐのも簡単でしょうから。だからどうか私をベッドサイドへ誘拐して。
願わくば、願うのもおこがましくば、このべにいろの心臓を無くして、私はやわらかな石になって黙っていましょう。
狂暴な理性と静寂な欲望のはざまで、なにかを言う。つぶやく。死か愛のどちらかの言葉。愚かにも、歌うようにつぶやけば罪にならないと勘違いして。
「ぬいぐるみになった私の毛並みはどうでしょう?ふわふわだったなら、いいのですが」と言ったつもりであなたのお顔をそろそろと見上げると、私はごみ箱の中をのぞいていた。
すすり泣き、ごみ箱の中に、なにか布と綿と糸の、なきがら………♪
そんな 夢で し た。
あまりにもあふれかえる希望でまぶしくて溺れそうになる。世界はきっと美しい。でも私を間引きさえすれば、世界はもっと美しくなる。
それなのに、あなたのお名前を胸で唱えるだけで、私という生物は少しだけよみがえる。
そう長くはない青い時間に、もはや口にするのも許されない、あなたのお名前を思います。すみません。音と字をひとつひとつ、空中に放り出しては不躾なほど何度もなぞる。
お呪いの言葉は明け方にふりそそぐ。何度も私を悪夢から目覚めさせて、現実という悪夢を再上演してくれる。
それが怖くて苦しくなって、もがけども、青空で泳ぐのは私ではない未確認飛行生命だけであって、ただ私ではない。
飛行機雲のまっすぐな線は、残念ながら天国まで届かない。もちろん、地獄にすら。
頭を上げたくない。
胸が壊れそうなので、あなたにふれてほしくない。頭が壊れそうなので、あなたのことを考えたくない。だけど私が壊れそうなのに、あなたは気づいてしまうから。
晴れよりも曇り空が似合ってしまうあなただから、こんな気持ちを、こんなところに隠し持っている。いつの日までも。
平穏なる秘匿の世界が続きますように、終わりますように。
(だから私につまった綿が何色か、いつかそのお目目で、見ていただけますか?)
「………、………」
ああ、ああ、きょうも、あなたのお名前を思うだけ………あなたのためのこの悪夢を、どうか、許していただけますように……
31/31ページ