すごく短いもの
おなまえ
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僕のことを好きじゃないあなたの手にふれるのは気持ち悪い。
恋している細菌が僕の表皮や粘膜へはりついて侵入してくるイメージが頭に駆けて、鳥肌が立つ。
僕は感染したくない。だって健康でないとピアノが弾けないから。
彼女のそばに近づくと、いらいらする。めまいがする。身体じゅうがかゆくなる。やけにだるい。立ち上がれない。涙が出る。動悸がする。音色がおかしい。頭が痛い。耳鳴りがする。本当にいらいらする。むかつく。本当にむかつく。
あなたの視線の行先を、僕がなぜ知らないといけないのか。いちいち目をやって辿ってやらないといけないのか。その先にいるのが僕じゃないと知りながらなぜいつもいつもそうしてしまうのか。いらつく。
これらの症状は僕に落ち度があって引き起こされているわけではまったくないはずなのに、なぜこんなぐちゃぐちゃな気持ちにならないといけないのか。ふざけてる。
ぶち壊してやりたい。僕にはいつでもそれができるから。
喉に棲んでいる清浄反応で気分の悪くなるものを霧散させることは、きわめて簡単だ。ノクターン第2番よりもずっと。この胸の混雑からのがれたい。
なにもかも壊して楽になれば、だれもかも、あなたの目玉の先にいるやつすらもすべて壊して楽になれるなら、僕がかかったこの病も寛解してどこかへほどけてくれるだろう。
きっとあなたも、僕の視界から消えてくれる。
それなのに僕はなぜ、こんな気持ちで、こんな気持ちのまま、……
僕はあなたにふれたあと、すぐアルコールをふって消毒した。
恋している細菌が死んでいくのを指紋に感じる。安心する。じわじわと揮発するその魂たちがあなたの恋心であるようにと、命令するみたいに僕は願っている。
毎日毎日、心からそう願っている。