すごく短いもの
おなまえ
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夕映えのちょうど正面に雲がもわもわ出ている。それは灼けている。焦れた嫉妬の色だ。いま、夕映えのちょうど反対側に立っていて、ただあなたが歩いていくのを引き留めていただけだった。
「どこにいくんです?」
やきもちが焦げて黒くなっていくような空の色ですら、あなたの眼の中には嘘みたいな星屑の光に変身してとどまっている。美しい。病的だ。すこし身をかがめてその天体をのぞきこむと、あなたさんはひどく怯え、しかしそれを表に出さないようにと毅然とした顔でアタシを見上げた。視線がかちあってあふれそうになる。それが、また美しいと思う。
しかし我々はなにか、対立して戦いでもしているみたいだ。そういう空気だ。ボケた頭を誤魔化すように笑いかけて、扇子を広げてちょっと扇いだ。自分にも、あなたさんにも。ここのところは頭が痛くなるような猛暑が続くので、夕暮れをすぎて汗が出るのだ。
だから外に出ないでと言っておいたのに。
あなたはアタシの問いかけに「どこどこ。」と適当に答える。
「ははは」
自分の笑い声。すごく軽い声。耳鳴りが遠ざかるように乾いた静寂。空気が戸惑っている。
「嘘」
あなたの通る道あなたの向かう先あなたの求める人あなたの欲しい助けあなたの愛する者あなたの愛さないもの 者
あなたの頭の中
ボクはすべてわかっている。わかってしまう。美しすぎるあなただから。
「この道から『どこどこ』へはいけません」
「あっちです」
あなたさん。この世界にはすこしあなたの愛するものが多すぎるかもしれない。そして、あなたは愛されすぎている。そのかわいい眼が泣きそうに逃げたがっている。まだ愛されたがっている………
まだあなたに愛されたいと思っているボク。
ああ、頭を冷静に。深呼吸は静寂に。陽が沈むというのに相変わらず暑い。頭の悪い単なる執心がこの暑さをひどく助長させている。
「そんじゃ、アタシはこれで」
「また会うかもしれないっスけど」
「そのときは、もう逃がさない」
「きっと、あなたを許さないでしょう」
「だからそれまでのちょっと間」
「サヨナラ。楽しんで」