そのほか
おなまえ
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孤独と論理をかけた駄洒落に、私は飽きてゐました。……・・
知らぬ書店で購入したボールペンで、文豪の書き口を真似る。意外と書き心地がよかった。
恋と変という字は非常に間違いやすいために、じつに気を付けて、間抜けなほど必死な形相で心のどこかへと書き込む。慎重な書き順で震える私の声は、またもや近所迷惑にならぬようにと音が省略されている。
いつでもどこかから目玉をのぞかせていて、隙あらば距離を詰めてくる絶望という味を、口内に感じたくはなかった。だから受け取れないのです、あなたの口移し以外では。ああ、この考えは少し、いやあまりにも気持ち悪い。
いつだって平坦に淡い気持ちを連綿と、達筆なペン字で日常としてつないでゆきたいのだ。しかし間奏ともいえる平凡さが心地よくも、物足りない、私は人間すぎる。
あ、そういえば、あなたの御名前は、どんな字を書くのだっただろう。レシートの裏に書けるほど安いものではないから、あくまでも脳裏に一角一角をきざみこむ。まるで傷をつけるように。
やわらかな思考の水面は、歴史に名をつらねる数々の変人たちによって今夜もゆがむのだった。
また近頃では、それを押しのけてやってきた世界的癲狂、大概の妄想対象、合わぬ視線の皮算用、等の不名誉な(私の脳内における)異名でお馴染み、御名前を口にするのもおこがましい、そう思いながらも毎夜口にしかけてしまうでお馴染み、あなた……さん、に関する森羅万象によって、私の海は特に大きな飛沫をあげる。あの、まあ、無論そういった意味ではなく。
今夜も部屋にひとり明かりもつけないでいるのでこの考えたちだけが加速していく。
本当に時たま、そばの道路をバイクやらが通って野蛮な音をたてる。それとともに、主人である私よりも空間を圧倒的に仕切る光が差し込み、私の脳回転、または恋心の過熱に水を差す。差すというか、注ぐ。そうすると、私の熱い心からじゅうと音がして、むしろどきりとして息を呑む。
結局。
光の中であなたと笑ってみたいだけなのでした。
どこかに欲望の湖があるならこれを早くただしく遺棄したいんですが、なかなかどうして見つかりません。
「あなたさん。………」
目をつむる。
なにか起こる直前かのように。
運命に賭けるだけの徳はありません。私には絶望だけが強く生きている。さよならだけが人生だなんて嘘です。罪悪感だけが人生であり人生だけが絶望なのです。
限りの無いロンリイのことですので、私から伸びる矢印があなたのことをぎゅっと抱きしめようとすることもあるでしょう。
そんなときは、無視されるのはつらいので、適当にあしらっていただいて大丈夫です。
私とともに死んでくださいだなんて言わないので、きっと言わないようにするので、どうか焦がしてください。恋に焦がしてください。このままで苦しくいたいような気がしているんです。まだ愛に進行したくないんです。
陽にあたるだなんて過ぎた願いを光の中で燃やして、成就の妄想を焼ききって、これはまだ病気ではないんだと優しく教えてくれるあなたを、死ぬほど
暗闇にひそんであなたと心中をするとてもよい悪夢のつづきを、きょうも乞いながら少しずつ眠る。
そうすると不幸の卵の殻からからから空回る私の引き攣った寝息と微笑が、いつもの呪われた朝を寄越す。
私は教師だ。大人だ。だから、いつもと同じように日常の反芻をやるために、風呂に入り、眼鏡を拭き、着替え、物凄いお願いごとをスッカリ忘れた顔をして、家を出た。そして一歩、きょうは陽がとてもまぶしく、すばらしい一日になりそうで、絶望した。