短編
おなまえ
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□月□日 晴
四時三十分起床。食事、鍛練等、普段通り。現在二十時四十分。二十一時就寝する。
□月□日 曇
四時三十五分起床。今日は少し寒く、冬に近づいているのを感じる。食事、鍛練等、普段通り。現在二十時三十分。二十一時就寝する。
□月□日 曇
□月□日 晴
きょう一日も、特筆すべきこと無し。普段通りの起床、普段通りの食事、普段通りの会話、すなわち普段通りの生活。思い返せば、きょう一日といわず、ここ最近は特に書くべきことが起こらない。そういった出来事は自ら起こすべきものなのかもしれないが、自分としては母に言われて気紛れに始めただけの日記、特に誰にも見せる機会もないだろうから、日記のためだけに行動を起こすことは些かはばかられるような気もする。明日以降、なにか出来事があった場合にのみ日記を書くこととする。
□月□日 晴
一昨日こう書いたばかりであるが、家に給仕の女性がひとりやってきた。というのも、ひと月ほど前に父の病状が悪化したとかで、それまでかなり長い年月勤めていた〇〇さんが故郷に帰ってしまった。人手が足りなくなるだろうと気を遣った〇〇さんが置手紙に書き留めていたのが、彼女の姪で丁度働き口を探していたというあなたさんなのだという。あなたさんは家の給仕のような仕事は初めてらしく、きょうは緊張した表情で大げさなほど丁寧なあいさつをしてくれた。そんなに気を遣わなくていいと言ったが、それでも声は上擦っていた。しかしその姿とは裏腹に、先輩の△△さんに仕事を教わっている様子は熱心そのものだった。身の回りのこともしてもらうことになるから、頑張って欲しいと思う。
□月□日 晴
きょうは少し疲れた。フロに入ってバンメシを食べただけなのに眠くなってきている。いまの自分は赤子のようだ。明日も早いので、日キはこれくらいにしてねることとする。
□月□日 晴
きのうの日記の乱雑さに反省を禁じ得ない。自分が眠くなると漢字を端折って片仮名にしてしまうこと等初めて知った。
きのう何故こんなに疲れていたのか書かなければならない。新しく来た給仕のあなたさんについてのことである、彼女は仕事を覚えるのは早いが手がついていっていない。きのう一日、彼女がうっかり花瓶を倒してしまった現場に居合わせたり、洗濯物をぶち撒ける瞬間を目の当たりにしたりと、自分も半ば給仕になったような心地を味わった。自分としては叱るべきなのだと分かっていても、失敗をする都度、あなたさんは死罪を免れようとするが如く必死に頭を下げて謝るので怒るに怒れない。昨日の今日で仕事を全てこなせと命じるつもりも、腹の底から怒っているという気持もないので勿論許しているが、これから毎日こうであったらと思うと少し末恐ろしい心持である。きょうは一先ず、大丈夫なようだったが。
しかし、彼女のお陰で給仕の仕事は大変に多く、疲れるのだと知ることができた。常に感謝を忘れず、あなたさんにも辞めて欲しくはないので優しく接したい。
□月□日 晴
再三あなたさんのことになるが、よほど気を付けているのか、昨日ほど失敗をしたり謝ったりしている様子はなかった。それは良いのだが、少々意気消沈した表情であった。彼女の上司や、それか、自分ではない家の者に叱られてしまったのかもしれない。ずっと緊張したままでは可哀想なので、洗濯物を運ぶ彼女に話しかけ、運ぼうかと提案したところ、断られてしまった。確かに、世話をしなければならない相手自身に世話を任せるのは本末転倒だ。申し訳ないことをした。明日になっても緊張しているようなら、軽く挨拶や世間話をしようか。
□月□日 晴
朝、あなたさんに挨拶をした。おずおずと返してくれたので、序でに天気や調子はどうか等当たり障りの無いことを話し、彼女の控えめな笑顔を初めて見た。仕事中の気を張っているような顔よりも、笑っている方が似合うなと思った。まだ緊張はしているだろうが、少しずつ打ち解けてくれれば嬉しい。
□月□日 快晴
四時三十分起床。綺麗に晴れていたので、洗濯物が良く乾いたことだろう。庭の掃除を少し手伝った。食事、鍛練等、普段通り。現在二十時三十分。二十一時就寝する。
さっき、寝ているとふと目がさめて外に出たいと思い、廊下を歩いていると寝間着のあなたさんと出くわした。髪を下ろしている姿ははじめて見た。声をかけると、恥じらいながらあいさつをしてくれた。外の空気を吸いにいくのだと言うと、一人ではあぶないと、彼女もついてきてくれた。自分のような成人した男、一人でも危なくはないが、テイアンを断らず、いっしょに外へ出て、少し話したのがたのしかった。暗かったからエガオはよく見えなかったが、ふたりきりだとよく笑ってくれたのもうれしかった。あすの自分が、あれを夢だとカンチガイするかもしれないので、かきとめておく
□月□日 晴
案の定あれは夢だったかと思っていたので、書き留めてあって助かった。乱雑でしかも正直に書いてあるので恥ずかしいが、良い思い出になったと思う。きょうもあなたさんと話すことができた。この頃晴れが続いているので、洗濯をするのが楽しいのだと笑っていた。あまり話していると彼女が上司に怒られてしまうから、いつも少しの間しか笑顔を見ることできないが、少しでも仕事を楽しいと思ってくれたら嬉しい。
□月□日 曇
あなたさんと話しているとすこし安心する。自分はいつも無意識に緊張しているのだろうか、筋肉が凝り固まっていたのがほぐれる感じがする。他愛無い話ばかりだが、それがなぜかとてもおもしろく聞こえる。あなたさんと出会ってから、今まで知らなかった自分が生まれてばかりだ。
□月□日 曇
五時十分起床。きょうはあなたさんと会うことができなかった。なにか、仕事が立て込んでいるのだろう。ふとしたときにさびしいなどと感じてしまって、男として恥ずかしい思いだ。食事、鍛練等、普段通り。しかし、普段通りだとも言えない。その理由は明白である。あなたさん 何故だかあなたさんという文字列を書くと、少し心が落ち着く。現在二十一時二十分。
□月□日 曇
あなたさんがひどく叱られているのを見かけた。何の理由があってかは分からない。泣きそうな顔を見ていられず彼女の前に出て行ってしまったが、むしろ彼女が私といないときの状況は悪化するかもしれない。私のせいであなたさんがもっと傷つくことになったらどうしよう。何をすればいいのかわからない。私は何も分かっていない。そもそも彼女が叱られていた原因、私がべたべたと接しすぎたせいだったなら
先日あなたさんという文字列を書くと落ち着くと書いたが、今はそうもいかない。頭が痛い。胸が苦しい。こんな日記に私なんかの筆跡で書くくらいなら、彼女と会って話した方が百倍も安心するのに。
□月□日
五時三十分起床 彼女に避けられている気がしておそろしい気分だ私のせいか誰のせいかわからない、なにもわからない誰が私とあなたさんを引き離そうとしているのか 安心がどこにもない 街をゆく誰の目もおそろしい
□月□日 くもり
五時五十分起床食事鍛練どんなときでもあなたさんを見られない 見ることも許されないのか彼女がどうしているか泣いていないか叱られていないか猛烈に不安である現在二時四十六分四十七分
□月□日
私はあなたさんのことを慕っているのかもしれない
―――――――・・・ ・ ・ ・
□月□日 雨
廊下で彼女と出会った。ただあいさつを交わすだけだったが、いつも通り仕事をしていたようだった。かたわらに知らない男
◇月□日 曇
この頃天気が悪い
生まれるのではなくてもともと在ったのに気が付かなかっただけではないだろうか。
□
あなた
□月□日 雨
あなたさんがここからいなくなる。〇〇さんが故郷へ帰ってひと月ほどだが、彼女の父親の体調が奇跡的に快復したために、そろそろ仕事に復帰したいとの便りが来たのだ。
快復は喜ばしいことだがずっと苦しんでいればよかったのに 〇〇さんが帰ってくるということは、あなたさんの仕事がなくなってしまうということだ。本人から詳しい話は聞けていないが、あなたさんもここの仕事を辞めたくはないだろう。やっと馴染んできたところなのに辞めさせられるのは不憫でならない。それにここには私という大切な大切な存在もいる
彼女の意志はもちろん大事だが、できれば辞めてほしくないと思っている。
■月■日
きのう記したことはすべてうそである。
「あなたさん。こんにちは」
「こんにちは。」
「今日はいい天気ですね」
「ええ。よく晴れて」
「洗濯物もよく乾くでしょう」
「はい。おかげで洗濯が楽しいんです。ふふ」
「あなたを愛しています」
「わたしと関わってしまったせいで泣く羽目になったあなたが大好きです」
「それなのに避けることもできないやさしいあなたが」
「自分のことはもうよろしいのですか」
「あの男のことはもうよろしいのですか」
「よろしいのですよね」
「私、きっと下らない夢とか幻想に憑りつかれているだけなんです」
「それでもあなたを心からお慕いしております」
「本当なら今すぐ」
「……え?」
「……それはよかった!安心しました」
「ええ。これからもよろしくお願いします」
「私の恋人としても」
「ははは」
私が笑っている
私が笑っている
笑っていないのはあなただけ。
■月■日 曇
彼女の呼吸音をここへ残したいが あのあまりの愛らしさは言語化するのに適していないでしょう
■月■日
あなたが目を逸らすたび私の頭はおかしくなるのです・
■月■日 無
仕事で失敗したあなたをひどく叱りつける夢を見ました。激しく怒鳴る私におびえて、あなたは震えて泣いていて、その涙を拭いたいと思うのに声を止めることはできませんでした、止めようともしていませんでした。反論も抵抗もしないあなたの泣き顔は美しく愛らしく似合っていて、その姿がまだこの目の裏側に焼き付いています。泣いているあなたに無理矢理口づけたい 叱りつけるのをやめて抱きしめて撫でてやりたかったが、夢の中だからか視界がふわふわして、私は大きな声を出すのに気持ち良ささえ感じていた感じていたのです。
あなたさんが私の名前を呼んでくれる夢でも見られたら、寝覚めも少しはよかったのですが。それでよかったと思う反面それだけではもう足りないような気もしている
あなたを■犯す月ことばか■り日考
あなたをどこかにさらってしまえたなら私がどこか遠くへ行ける自由な身だったならわたしがあなたをあなたがわたしを知らなかったなら。最近いつもあなたを夢に見ています。あなたの首はあんなに簡単に絞められるのですね。縄の結び目から見る世界はあんなにあっけなく終わるのですね。悪夢をもう一度見たいと思いながら眠ります。ほんとうは、あなたと唇をかさねたまま眠って、夢の中でただしく窒息したいのだけれど。なんだか終わってしまいたい。
「ああああーーーーーっ。ううっ。ふううっ。ふうっ、うう。ああああああ。あああ……………………」
□月□日 晴
あなたさんが、あの男のもとに嫁にゆく日である。
私は着いてはゆけないが、きっと綺麗な衣装を着て、あの男と手を取り合って幸せになるのだろうな。ゆくゆくは子供などができ、徐々に歳を取りながらも優しく真面目なのは変わらず、子供が外で遊びたがるのを一人では危ないと着いてゆくのだろう。あの男などと書いてしまったが、あなたさんが認め一生を委ねる判断をしたのだからきっと素敵な方なのだろうし、私のような者の立場から言うのは変かもしれないがしっかり勤めて彼女を幸せにしてもらいたいと願うばかりである。
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狐 卒塔婆 露呈 リボン 車の運転 罰 洋菓子 韋駄天 ん 日和 姿たち 雨合羽 輪 妄想 ―― 孵化器 急転直下 曼荼羅 楼 素肌 急いで 桃色 以来 夢 夢 こわばる 隠 絶たず 往生際 昔話 志願者 嘘の志願者 うろ覚え あちこち お前 砂塵 傷 湧いて出る 月の ゆっくりと ・ 六日 移 隣接 忌み嫌う ごみ を書く 散々 ごめんなさい 布切れ 駒 夜明け前 悔い 印象 を書く ――き 橙色 懐かしさ 十 風邪 消えた 愛が無 内奥 洗濯物 噛む ご要望 の糸 音信不通 粘液 花弁 前髪 白 非合法 昆虫図鑑 〇 症状 人の群れ 曇り 力 の続き 嫌い 見張ろうと 斜め 私たち 間奏 未亡人 エコー 抜け 百舌鳥 雪 ・ の中 合図 妖 ごと 今更 知らない 膿 からの間 濡らし 今日は、 成人 古 浮遊物 凍り付いた 恥 擦る 殺さな 舌の 如来 弧を描く 手の中 意味 うんざり 解答に 笑う 笑う声 ― 言い 三時 ・ 六時 わたし 寒い あ あなた あ な た あ あなたさん あなたさん あなたさん あなたさん あなたさん さ あなた あなたさん あなたさん あなたさんあなたさん あなたさん あなたさん あなたさん あなたさん ん あなたさん あなたさん あなたさんあなたさんあなたさん あなたさん あなたさん
□月■日
よかった。
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