短編
おなまえ
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俺は平等主義者だ。
社会が腐っちまっていると知っているから俺は平等が好きだ。
鏡を見れば哀れな男が目の下に隈をつくって立っていた。ひどく不気味で、俺はまだ、足りないのかと思う。いつだってこの胸は不足分を探して戸惑っている。
ああ、おまえに母のようなあまい態度で体温で、俺を救うようにとかしてほしい。痛痛しい恋の被害者にはなにも、このぽっかりと空いた穴以外はなにもありはしない。
「おまえが悪いんだよ、おまえが…ぜんぶ、」
あなたの首を絞めながらキスをした。舐ってむさぼるように、あなたをぜんぶ壊してしまいたいと心から思った。人生も。肉体も。恋心も。お行儀のいいそんなものはここには存在しえなかった、だから苦しそうにうめく喉にまた力を入れた。そうしたらもう目の焦点が合わなくなって、口の端から泡を吹くのを知っていた。
俺は唇を離してやる。
「はっ、はは!…………かわいい。」
あなたは苦しげに酸素を取り込んでいる。涙をつつと流して眉を寄せ、かわいそうな程かわいい女。俺は彼女のものだ。そして、彼女も俺のもの。
「俺のこと、愛してくれるよな?」
自分の猫撫で声は聞くに堪えない。
「どうして、どうして俺はだめなんだ?俺があの男となにが違うんだよ?俺は悪くないんだ、こんなに、こんなにおまえのことが好きなのに…………」
嗚咽。
「あ、」
俺は平等主義者だ。
愛はもっとも平等でなければならないものだ。と、考える。
爪を噛む癖が治らない。花に水をやったら、それが土に染み込んでいく。逆再生のような狂気の音楽。それは、太陽のない部屋で。
俺は可哀想がられたい。無意識下のおねがいごと。神にでもすがろうか。散々なんだ。もういいだろ。透明の哀憐。花束のぐるぐる巻きの同情。
それなら俺を愛せよ。
文学のように俺とロマンチシズム。唇の温度が知られない。
平等であればこんなことにならなかったのに。
「俺のこと、愛してるって言えよ。じゃなきゃ殺すから」
最初からなにも変わらない純真な心でいたかった。懺悔のような静寂が生まれては死ぬ。これは正常であって清浄ではない。
錯乱した眼で彼女はようやくそれを言った。