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◯少しだけクロームが登場します
季節ゆえの寒さなのか、はたまた風除けには不向きな廃墟のせいなのか。現在時刻は17時過ぎ。外は薄暗く少し肌寒さを感じた。
ソファに座る私の目前には、床に膝を抱える形で座り込んでいる眼帯の少女が私と同じように身震いをしていた。
いや別に。いじめているとか上下関係があるとかそんなのではないのだけれど。眼帯の少女はなぜかそこが定位置の様にいつも座っていたのだった。
薄暗く閑散とした廃墟のなか、2人の間に会話はなかった。一見、不気味とも言えるこの廃墟と空間であったが、居心地の悪さや恐怖はなかった。
むしろ見慣れた背景であった。
ひゅん、ひゅんと風の切る音だけがやけに耳に響くなか沈黙を破ったのは、眼帯の少女の方だ。
「、、、黄泉」
眼帯の少女、クローム髑髏は静かに私の名前を呼んだ。彼女の澄んだ声は、この吹き抜ける風にもかき消されそうなほど、小さくか細かった。
もしかしたら「寒いね。」とか「寒い?」とかそんなことを言い出すのではないかと内心思いつつ、私は「どうかしたの。」と尋ねた。が、私の予想は見事に的外れであった。
「黄泉は、骸様が好き?」
ーーーーーーーーー
現在時刻は23時頃。すっかり日が落ちてしまって、あたりは真っ暗になってしまった。
電気も水道も通っていないこの廃墟では、ランプの光が頼りであった。
暗い空間にぼんやりとした灯りが一つ。内側から見ても外側から見ても、一層不気味さを助長させているに違いなかった。
相変わらず、あたりは閑散としているが、ひゅんひゅんと風が切る音だけが妙に耳に響いていた。
先程まで目前にいたクロームは、自室へ戻っており今は私独りだった。
自室。自分の部屋というには不恰好極まりないが、自分だけの空間(部屋)には変わりない。
私もそろそろ眠ろうか考えていたところ、ふと思い出した。さっきのクロームの言葉だ。
ーーー「黄泉は、骸様が好き?」
そう、クロームは私に質問を投げかけた。なんでいきなりそんな質問をしたかというと、”秘密“らしい。
しかし、その時私が直ぐに言葉を発しなかったせいか、反応に困っていると思ったのか「ごめん。やっぱりいい」とそれ以上は催促してこなかった。
別にクロームに隠している訳でも、言えないわけでもない。ただなんとなくその時は直ぐに言えなかっただけ。正直恥ずかしかった。
「、、、すき、よ。」
独りでに呟いてみたものの、私の声が反響するばかりで返事なんか返ってくるわけもなかった。
物理的に、今独りで返事が返ってこないというのもあるが、本当にその声を届けたい相手は、ヴィンディチェの牢獄のなかにいて、困難だった
はずが、そうではなかった。
「誰が好きなんですか」
すぐさま聞こえてくるはずのない男の声が聞こえてきた。
よくよく考えると聞き慣れた声色であったが、いきなりのことにギョッとした私は辺りを見回した。
「久しぶりですね。黄泉」
「ちょっと、いきなり出てこないで。びっくりしたじゃない」
「おやおや、人を得体の知れない何かの様な言い方をして。」
「そうだから言ってるの」
「クフフ」
本当に、心臓が張り裂けそうなくらいにびっくりした。
いや、もう張り裂けているのかもしれない。それくらい本当に驚愕を隠せずにいた。
突然現れた彼の姿と、
私の呟きを聞かれてしまったこと、
彼に会えたこと、
全てにおいて頭の整理がつかず、うまく目線も合わせられなかった。
それでも彼は何とでもない様に言葉を続けた。
「それで、さっきの質問に答えて下さい。誰が好きなのでしょう」
さっきの”好き“という呟きの対象が誰なのか。そう私に答えを促してきた。
全くもって、この男は。いきなり出てきておいて、食えない。知っているくせに。
私は不機嫌そうに言い放った。
「知らないよ」
そう言い放った私に、彼は近づいてきた。
「ほう、」
ソファに座る私の上に彼が覆い被さってきて、押し倒される様な形になった。
無理矢理にでも目線を合わせなければいけないこの体勢で彼は言った。
「僕は貴方が好きです。貴方はそうではないのですね」
「、、、っ」
もう一度言うが全くもって、この男は。
私を困らせたくて、こんなことを言っていると頭では分かっているけど、
実際に、非常に困ってしまって。もう何も言えなくなってしまって。
彼から至近距離で見つめられながら、さらっと伝えられた”好き“に身体全身が燃える様に熱くなった。きっと、顔も赤くなっているに違いない。
私の表情や仕草を見れば、わざわざ”好き“と言わなくても、そう言っている様なものだった。
そんな私を見てか、更に口付けようと彼は距離を縮めた。
このなんとも言えない小っ恥ずかしい様な甘い雰囲気も、彼が口付けるのも別に嫌な訳じゃない。
むしろ心地が良くて、このままどうにでもしてくれて良かった。
なんて、そんなこと言ったら彼はどんな顔をするんだろうか。いつも澄ました顔を、驚きと歓喜で綻ばせるのだろうか。
でも。でもね。
「むく。待って。」
やっと絞り出した声は、可愛い告白でも何でもなくて、
彼への否定の言葉と共に、胸を押し返したのだった。
「今は、、ダメ。」
「クフフ。分かっていますよ。」
「、、、、、。」
「少し、からかい過ぎましたね」
そう言って、少し離れてしまった彼に名残惜しさを感じた。心から会いたくて、心から好きなのに、今ここにいる彼は、あくまで本当の彼ではないのだ。
だからこそ、受け入れてはいけないのだった。
すると彼はくすりと困ったように笑った。
「嗚呼、もどかしいものですね。こんなに近くに貴方がいるというのに。」
私か彼が動けばその距離は完全になくなってしまうのだが、それ以上縮まることはなかった。
「次は、本当の僕でまた会いに行きます。その時は覚悟していて下さいね。」
彼は、私の手を掬いあげ 手の甲に口付けたのだった。
(クローム(人)を介してより、直接聞きたいでしょう。貴方の言葉は。)
はやく私に会いにきて。
季節ゆえの寒さなのか、はたまた風除けには不向きな廃墟のせいなのか。現在時刻は17時過ぎ。外は薄暗く少し肌寒さを感じた。
ソファに座る私の目前には、床に膝を抱える形で座り込んでいる眼帯の少女が私と同じように身震いをしていた。
いや別に。いじめているとか上下関係があるとかそんなのではないのだけれど。眼帯の少女はなぜかそこが定位置の様にいつも座っていたのだった。
薄暗く閑散とした廃墟のなか、2人の間に会話はなかった。一見、不気味とも言えるこの廃墟と空間であったが、居心地の悪さや恐怖はなかった。
むしろ見慣れた背景であった。
ひゅん、ひゅんと風の切る音だけがやけに耳に響くなか沈黙を破ったのは、眼帯の少女の方だ。
「、、、黄泉」
眼帯の少女、クローム髑髏は静かに私の名前を呼んだ。彼女の澄んだ声は、この吹き抜ける風にもかき消されそうなほど、小さくか細かった。
もしかしたら「寒いね。」とか「寒い?」とかそんなことを言い出すのではないかと内心思いつつ、私は「どうかしたの。」と尋ねた。が、私の予想は見事に的外れであった。
「黄泉は、骸様が好き?」
ーーーーーーーーー
現在時刻は23時頃。すっかり日が落ちてしまって、あたりは真っ暗になってしまった。
電気も水道も通っていないこの廃墟では、ランプの光が頼りであった。
暗い空間にぼんやりとした灯りが一つ。内側から見ても外側から見ても、一層不気味さを助長させているに違いなかった。
相変わらず、あたりは閑散としているが、ひゅんひゅんと風が切る音だけが妙に耳に響いていた。
先程まで目前にいたクロームは、自室へ戻っており今は私独りだった。
自室。自分の部屋というには不恰好極まりないが、自分だけの空間(部屋)には変わりない。
私もそろそろ眠ろうか考えていたところ、ふと思い出した。さっきのクロームの言葉だ。
ーーー「黄泉は、骸様が好き?」
そう、クロームは私に質問を投げかけた。なんでいきなりそんな質問をしたかというと、”秘密“らしい。
しかし、その時私が直ぐに言葉を発しなかったせいか、反応に困っていると思ったのか「ごめん。やっぱりいい」とそれ以上は催促してこなかった。
別にクロームに隠している訳でも、言えないわけでもない。ただなんとなくその時は直ぐに言えなかっただけ。正直恥ずかしかった。
「、、、すき、よ。」
独りでに呟いてみたものの、私の声が反響するばかりで返事なんか返ってくるわけもなかった。
物理的に、今独りで返事が返ってこないというのもあるが、本当にその声を届けたい相手は、ヴィンディチェの牢獄のなかにいて、困難だった
はずが、そうではなかった。
「誰が好きなんですか」
すぐさま聞こえてくるはずのない男の声が聞こえてきた。
よくよく考えると聞き慣れた声色であったが、いきなりのことにギョッとした私は辺りを見回した。
「久しぶりですね。黄泉」
「ちょっと、いきなり出てこないで。びっくりしたじゃない」
「おやおや、人を得体の知れない何かの様な言い方をして。」
「そうだから言ってるの」
「クフフ」
本当に、心臓が張り裂けそうなくらいにびっくりした。
いや、もう張り裂けているのかもしれない。それくらい本当に驚愕を隠せずにいた。
突然現れた彼の姿と、
私の呟きを聞かれてしまったこと、
彼に会えたこと、
全てにおいて頭の整理がつかず、うまく目線も合わせられなかった。
それでも彼は何とでもない様に言葉を続けた。
「それで、さっきの質問に答えて下さい。誰が好きなのでしょう」
さっきの”好き“という呟きの対象が誰なのか。そう私に答えを促してきた。
全くもって、この男は。いきなり出てきておいて、食えない。知っているくせに。
私は不機嫌そうに言い放った。
「知らないよ」
そう言い放った私に、彼は近づいてきた。
「ほう、」
ソファに座る私の上に彼が覆い被さってきて、押し倒される様な形になった。
無理矢理にでも目線を合わせなければいけないこの体勢で彼は言った。
「僕は貴方が好きです。貴方はそうではないのですね」
「、、、っ」
もう一度言うが全くもって、この男は。
私を困らせたくて、こんなことを言っていると頭では分かっているけど、
実際に、非常に困ってしまって。もう何も言えなくなってしまって。
彼から至近距離で見つめられながら、さらっと伝えられた”好き“に身体全身が燃える様に熱くなった。きっと、顔も赤くなっているに違いない。
私の表情や仕草を見れば、わざわざ”好き“と言わなくても、そう言っている様なものだった。
そんな私を見てか、更に口付けようと彼は距離を縮めた。
このなんとも言えない小っ恥ずかしい様な甘い雰囲気も、彼が口付けるのも別に嫌な訳じゃない。
むしろ心地が良くて、このままどうにでもしてくれて良かった。
なんて、そんなこと言ったら彼はどんな顔をするんだろうか。いつも澄ました顔を、驚きと歓喜で綻ばせるのだろうか。
でも。でもね。
「むく。待って。」
やっと絞り出した声は、可愛い告白でも何でもなくて、
彼への否定の言葉と共に、胸を押し返したのだった。
「今は、、ダメ。」
「クフフ。分かっていますよ。」
「、、、、、。」
「少し、からかい過ぎましたね」
そう言って、少し離れてしまった彼に名残惜しさを感じた。心から会いたくて、心から好きなのに、今ここにいる彼は、あくまで本当の彼ではないのだ。
だからこそ、受け入れてはいけないのだった。
すると彼はくすりと困ったように笑った。
「嗚呼、もどかしいものですね。こんなに近くに貴方がいるというのに。」
私か彼が動けばその距離は完全になくなってしまうのだが、それ以上縮まることはなかった。
「次は、本当の僕でまた会いに行きます。その時は覚悟していて下さいね。」
彼は、私の手を掬いあげ 手の甲に口付けたのだった。
(クローム(人)を介してより、直接聞きたいでしょう。貴方の言葉は。)
はやく私に会いにきて。