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✳︎幼少期編(9〜10歳くらい)
ぼくは友達と言えるような友達は全くいなかった。別に欲しいとも思ってはいなかったが、人間の思考や行動には少なくとも興味がった。それを観察をするのは好きな方だった。
ぼくは、他人の身体を乗っ取り、その身体を自分の意思で自由に動かすことができた。
言わば、他人に憑依することができるのだ。
大人から子供まで、精神の波長や相性が良いほど長くその個体に憑依することが可能であった。
そして、ぼくはとある子供(同い年くらいの子供)の身体を乗っ取り、その身体で遊ぶことがあった。
この身体の持ち主の名前は、bambino(バンビーノ)だったか。
この少年は、大人達でも手に負えない破天荒な子供だった。悪戯好きで、周りに迷惑ばかりかけ、大人達は困っていた。
ぼくもその姿を何度か見たことはあったが、歳の割に身体は大きく威圧的だった。「ガキ大将」とはまさにこの少年のことを指す言葉だと思う。
そして、この少年の近くにはいつも黄泉という少女がいた。
黄泉はバンビーノとは対照的であり、物静かで穏やかな性格の子供だった。黄泉が他の子供達と一緒にいる姿を見たことはほぼなかった。
周りに迷惑ばかりかけ、大人達からも見放されているバンビーノであったが、黄泉本人は疎ましいとは思っていないようで「バンビくん」と愛称でよく話しかけている姿を見かけることがあった。
また、この少女はというと、身寄りのない孤児だった。
この2人が出会ったきっかけも決して良いものではなく、バンビーノが親のいない黄泉を馬鹿にして、いじめたことが発端であった。
自分をいじめていたバンビーノに対し、黄泉は憎んではいなかった。なぜそこまでして黄泉がバンビーノと一緒にいるのかぼくにはさっぱり分からなかった。
黄泉の方はともかく、バンビーノのは黄泉を好いてた。必ず自分のそばに置きたがっていたため、もしかしたらこの少年が周りに「近寄るな」と圧をかけていたため、黄泉が他の子供と一緒にいる姿を見たことがないのかもしれない。
「黄泉は俺の言うことはなんでも聞く。奴隷だ。俺様のものだからな」
と大勢の前で公言していることもあった。特段黄泉を特別扱いをしている様子はなく、自分の思い通りにならなければ黄泉を罵り、手を挙げることもあった。
正直なところ、バンビーノの数々の行動からは本当に黄泉が好きなのか嫌いなのかよく読み取れないが、
誰にも言っていない秘密を今ここでバラすとするなら、この少年の部屋には黄泉の写真が大事そうに保管されており、ときどき性的に扱うのだった。
ーーーーーーー
そして、とある事件が起きてしまった。
バンビーノはついに盗みまで働いてしまったが、一緒にいた黄泉に押し付けて逃げ出したのだった。
初めは訳を知らない大人達も孤児でもあった黄泉
が盗みを働いたことに疑うこともしなかったのだ。
『この盗人が!お前、あのクソガキとよく一緒にいるガキじゃないか。子供といえど容赦はしねえ警察に突き出してやる』
鬼の形相でせまる商人は、黄泉の抱き抱えた(無理矢理持たされた)品を奪い取って乱暴に腕を掴んだ。
「痛いっ」
『ごめんなさいも言えないのか。本当に躾もなっていないガキだ。さっさとこっちにこい』と無理に引っ張っていったのだった。
ーーーーー
警察沙汰になり大騒動ではあったが、子供ということもあり逮捕までには至らなかった。
と言うより、ぼくがバンビーノに憑依し経緯を謝罪し、黄泉を擁護したことで黄泉への疑いが晴れた。
それに、いくら盗人と言えど相手は幼い子供であったが、商人は必要以上に容赦なく黄泉の顔や身体を殴りつけたため警察は商人を厳重に処罰した。
また、警察はバンビーノ(ぼく)へは「君はしっかり反省して、もう盗みはしないように」と警告をしただけでその場はなんとか丸く収まったのだった。
ーーーー
「痛い、、だろ。それ」
黄泉と2人で歩いていた。
ぼくはというと、まだバンビーノの身体を憑依したままだった。
そもそも黄泉がこうなってしまったことの発端はこの少年のせいで、
その元凶が「大丈夫?」など聞いてしまえば側から見れば相当イカれているだろう。
黄泉もこの少年の顔を殴るなりやり返せばいいものを
「ううん。いいの。さっきはありがとう」
と、怒ることも蔑むこともしなかった。
ーーーー
ある時はバンビーノ率いる小さな集団で黄泉
をいじめたことがあった。
またある時は黄泉に盗みをして来いと命令することもあった。
ぼくが憑依したことで、いじめも盗みも全て実行されることなく終わったが黄泉はそんな時でも「ありがとう、ごめんね」とバンビーノ(ぼく)に言うのだった。
ーーーーー
また、何度目かの事件が起きようとした頃だった。
バンビーノは新しく両親からカメラを買ってもらって舞い上がっていた。
カメラに熱中するあまり、ここ数日は悪事を働くことはなかった。その被写体は様々であったが、その中に黄泉も含まれていた。
第二次性徴期真っ只中のバンビーノは性に対する興味も強かったため
黄泉を誘導し「服を脱げ」と命令するのであった。
「俺の言うことが聞けないのかよ、さっさみせろ」と無理に黄泉の服を引っ張ろうとした。
だが、彼女は拒否することなくされるがまま脱ぎ始めようとしたところで
ぼくはこの少年に憑依したのだった。
ーーーーー
「馬鹿ですね。なぜ嫌だと言わないのです」
そういうと少女は目を見開いてぼくを見つめた。
「なぜって。バンビくんが言ったんでしょう」
「ぼくが言ったとか言ってないとかの話じゃなくて、君の意思はどうなんだと言っているんです。いつもいつも君はそうやっていいなりですね」
「、、、、、、、」
黄泉は黙り込んでしまった。そして「しまった」と思った頃には遅かった。
一つ大きなミスをしてしまった。ぼくとしたことが、バンビーノの口調を真似るどころか、つい、いつもの(ぼく)の様に話をしてしまったのだった。だが、黄泉は気に留める様子はなく、
「わたしね。パパもママもお友達もいなくてさみしかったの。だからいつも言う通りにしてた。ごめんなさい。
とまた、ぼくに謝るのだった。
「別に謝る必要はありませんよ。君は何も悪くはないでしょう。その、、洋服を引っ張ってすみませんでした。さっきのは、、嘘ですから、、」
あんなに女子の服を必死に引っ張ってたやつが「実は嘘でした」といった言ったところで信じる女がどこにいると内心思いながらも真摯に謝った。
「それにあの事件の時だって本当のことを言わなかったのはどうしてですか。あの時ぼくが大人に言わなければ、君はずっと盗人扱いのままでした」
「そうだね、、多分、怖くて言えなかったの。きっとあのお店のおじさんも周りの人も私のことなんか信じてくれなかったと思うから。
それにバンビ君がそれでも一緒にいてくれるんだったら良いのかななんて思ってた。」
困った様に黄泉は笑った。
正直、ぼくは呆れた。この小さな少女が唯一頼れる、一縷の望みは周りの大人でもなくこのクソガキだけとは。全くもって不憫だった。この少女の思考や行動は僕には理解し難かった。
「じゃあ、1人にならなければいいのでしょう。」
「そう、だね」
「じゃあぼくが一緒にいますよ」
「?」
「ぼくが、君の友達になってあげますと言ったんです」
ぼくの見た目はバンビーノであるが、今話しているぼくはバンビーノとしてなのか
六道骸としてなのかもうよく分からなくなるようだった。
勿論後者であるが、見た目と中身の違いに歯痒さをかんじた。
しかし、そういうと少女は嬉しそうに笑った。今までこの少女と出会って何度かみてきたが笑顔をみたの初めてだった気がした。
「、、、やっぱりだ。バンビ君じゃなくって別の人。私が危ない時に私のことを助けてくれてた人。」
と言ったのだった。
正直驚いてしまった。ぼくはときどきこの少年に憑依することがあったが、今回みたいにヘマをした記憶はない。まさかこのぼくがバレていたとは。
「どうしてそう思ったんです。いつもより仕草や話し方を変えてるだけかもしれないでしょう」
「わかるよ。ずっとバンビ君と一緒にいたから。あなたのときは雰囲気も全然違うなって」
ーーーーずっと一緒にいた
それはそれで少し複雑な気持ちではあるが
「では、今度本当の姿で君に会いに来てあげますよ」
「嬉しい。本当に?」
「クフフ、怖くはないのですか。普通じゃあり得ないことでしょう。」
「怖くないよ。だって、やっとあなたとちゃんとお話しすることができたから嬉しいの。じゃあお友達の印にこれあげる。」
とぼくに差し出したのはチョコレートだった。
「待ってるから。」
と黄泉は笑顔で言った。
その後、黄泉に貰ったチョコレートは凄く美味しくて。ぼくはこれがきっかけでチョコレートが好きになった。
そして、君のことが好きになった。
『チョコレートが好きになった理由』
(あの時の!骸くんって言うんだね。よろしくね)
(クフフ、よろしくお願いします。もう子鹿のところに行ったらダメですよ)
(もしかして、子鹿ってバンビくんのこと?)
(それ以外いないでしょう)
(うん、もう骸くんがいてくれるから寂しくないよ)
ぼくは友達と言えるような友達は全くいなかった。別に欲しいとも思ってはいなかったが、人間の思考や行動には少なくとも興味がった。それを観察をするのは好きな方だった。
ぼくは、他人の身体を乗っ取り、その身体を自分の意思で自由に動かすことができた。
言わば、他人に憑依することができるのだ。
大人から子供まで、精神の波長や相性が良いほど長くその個体に憑依することが可能であった。
そして、ぼくはとある子供(同い年くらいの子供)の身体を乗っ取り、その身体で遊ぶことがあった。
この身体の持ち主の名前は、bambino(バンビーノ)だったか。
この少年は、大人達でも手に負えない破天荒な子供だった。悪戯好きで、周りに迷惑ばかりかけ、大人達は困っていた。
ぼくもその姿を何度か見たことはあったが、歳の割に身体は大きく威圧的だった。「ガキ大将」とはまさにこの少年のことを指す言葉だと思う。
そして、この少年の近くにはいつも黄泉という少女がいた。
黄泉はバンビーノとは対照的であり、物静かで穏やかな性格の子供だった。黄泉が他の子供達と一緒にいる姿を見たことはほぼなかった。
周りに迷惑ばかりかけ、大人達からも見放されているバンビーノであったが、黄泉本人は疎ましいとは思っていないようで「バンビくん」と愛称でよく話しかけている姿を見かけることがあった。
また、この少女はというと、身寄りのない孤児だった。
この2人が出会ったきっかけも決して良いものではなく、バンビーノが親のいない黄泉を馬鹿にして、いじめたことが発端であった。
自分をいじめていたバンビーノに対し、黄泉は憎んではいなかった。なぜそこまでして黄泉がバンビーノと一緒にいるのかぼくにはさっぱり分からなかった。
黄泉の方はともかく、バンビーノのは黄泉を好いてた。必ず自分のそばに置きたがっていたため、もしかしたらこの少年が周りに「近寄るな」と圧をかけていたため、黄泉が他の子供と一緒にいる姿を見たことがないのかもしれない。
「黄泉は俺の言うことはなんでも聞く。奴隷だ。俺様のものだからな」
と大勢の前で公言していることもあった。特段黄泉を特別扱いをしている様子はなく、自分の思い通りにならなければ黄泉を罵り、手を挙げることもあった。
正直なところ、バンビーノの数々の行動からは本当に黄泉が好きなのか嫌いなのかよく読み取れないが、
誰にも言っていない秘密を今ここでバラすとするなら、この少年の部屋には黄泉の写真が大事そうに保管されており、ときどき性的に扱うのだった。
ーーーーーーー
そして、とある事件が起きてしまった。
バンビーノはついに盗みまで働いてしまったが、一緒にいた黄泉に押し付けて逃げ出したのだった。
初めは訳を知らない大人達も孤児でもあった黄泉
が盗みを働いたことに疑うこともしなかったのだ。
『この盗人が!お前、あのクソガキとよく一緒にいるガキじゃないか。子供といえど容赦はしねえ警察に突き出してやる』
鬼の形相でせまる商人は、黄泉の抱き抱えた(無理矢理持たされた)品を奪い取って乱暴に腕を掴んだ。
「痛いっ」
『ごめんなさいも言えないのか。本当に躾もなっていないガキだ。さっさとこっちにこい』と無理に引っ張っていったのだった。
ーーーーー
警察沙汰になり大騒動ではあったが、子供ということもあり逮捕までには至らなかった。
と言うより、ぼくがバンビーノに憑依し経緯を謝罪し、黄泉を擁護したことで黄泉への疑いが晴れた。
それに、いくら盗人と言えど相手は幼い子供であったが、商人は必要以上に容赦なく黄泉の顔や身体を殴りつけたため警察は商人を厳重に処罰した。
また、警察はバンビーノ(ぼく)へは「君はしっかり反省して、もう盗みはしないように」と警告をしただけでその場はなんとか丸く収まったのだった。
ーーーー
「痛い、、だろ。それ」
黄泉と2人で歩いていた。
ぼくはというと、まだバンビーノの身体を憑依したままだった。
そもそも黄泉がこうなってしまったことの発端はこの少年のせいで、
その元凶が「大丈夫?」など聞いてしまえば側から見れば相当イカれているだろう。
黄泉もこの少年の顔を殴るなりやり返せばいいものを
「ううん。いいの。さっきはありがとう」
と、怒ることも蔑むこともしなかった。
ーーーー
ある時はバンビーノ率いる小さな集団で黄泉
をいじめたことがあった。
またある時は黄泉に盗みをして来いと命令することもあった。
ぼくが憑依したことで、いじめも盗みも全て実行されることなく終わったが黄泉はそんな時でも「ありがとう、ごめんね」とバンビーノ(ぼく)に言うのだった。
ーーーーー
また、何度目かの事件が起きようとした頃だった。
バンビーノは新しく両親からカメラを買ってもらって舞い上がっていた。
カメラに熱中するあまり、ここ数日は悪事を働くことはなかった。その被写体は様々であったが、その中に黄泉も含まれていた。
第二次性徴期真っ只中のバンビーノは性に対する興味も強かったため
黄泉を誘導し「服を脱げ」と命令するのであった。
「俺の言うことが聞けないのかよ、さっさみせろ」と無理に黄泉の服を引っ張ろうとした。
だが、彼女は拒否することなくされるがまま脱ぎ始めようとしたところで
ぼくはこの少年に憑依したのだった。
ーーーーー
「馬鹿ですね。なぜ嫌だと言わないのです」
そういうと少女は目を見開いてぼくを見つめた。
「なぜって。バンビくんが言ったんでしょう」
「ぼくが言ったとか言ってないとかの話じゃなくて、君の意思はどうなんだと言っているんです。いつもいつも君はそうやっていいなりですね」
「、、、、、、、」
黄泉は黙り込んでしまった。そして「しまった」と思った頃には遅かった。
一つ大きなミスをしてしまった。ぼくとしたことが、バンビーノの口調を真似るどころか、つい、いつもの(ぼく)の様に話をしてしまったのだった。だが、黄泉は気に留める様子はなく、
「わたしね。パパもママもお友達もいなくてさみしかったの。だからいつも言う通りにしてた。ごめんなさい。
とまた、ぼくに謝るのだった。
「別に謝る必要はありませんよ。君は何も悪くはないでしょう。その、、洋服を引っ張ってすみませんでした。さっきのは、、嘘ですから、、」
あんなに女子の服を必死に引っ張ってたやつが「実は嘘でした」といった言ったところで信じる女がどこにいると内心思いながらも真摯に謝った。
「それにあの事件の時だって本当のことを言わなかったのはどうしてですか。あの時ぼくが大人に言わなければ、君はずっと盗人扱いのままでした」
「そうだね、、多分、怖くて言えなかったの。きっとあのお店のおじさんも周りの人も私のことなんか信じてくれなかったと思うから。
それにバンビ君がそれでも一緒にいてくれるんだったら良いのかななんて思ってた。」
困った様に黄泉は笑った。
正直、ぼくは呆れた。この小さな少女が唯一頼れる、一縷の望みは周りの大人でもなくこのクソガキだけとは。全くもって不憫だった。この少女の思考や行動は僕には理解し難かった。
「じゃあ、1人にならなければいいのでしょう。」
「そう、だね」
「じゃあぼくが一緒にいますよ」
「?」
「ぼくが、君の友達になってあげますと言ったんです」
ぼくの見た目はバンビーノであるが、今話しているぼくはバンビーノとしてなのか
六道骸としてなのかもうよく分からなくなるようだった。
勿論後者であるが、見た目と中身の違いに歯痒さをかんじた。
しかし、そういうと少女は嬉しそうに笑った。今までこの少女と出会って何度かみてきたが笑顔をみたの初めてだった気がした。
「、、、やっぱりだ。バンビ君じゃなくって別の人。私が危ない時に私のことを助けてくれてた人。」
と言ったのだった。
正直驚いてしまった。ぼくはときどきこの少年に憑依することがあったが、今回みたいにヘマをした記憶はない。まさかこのぼくがバレていたとは。
「どうしてそう思ったんです。いつもより仕草や話し方を変えてるだけかもしれないでしょう」
「わかるよ。ずっとバンビ君と一緒にいたから。あなたのときは雰囲気も全然違うなって」
ーーーーずっと一緒にいた
それはそれで少し複雑な気持ちではあるが
「では、今度本当の姿で君に会いに来てあげますよ」
「嬉しい。本当に?」
「クフフ、怖くはないのですか。普通じゃあり得ないことでしょう。」
「怖くないよ。だって、やっとあなたとちゃんとお話しすることができたから嬉しいの。じゃあお友達の印にこれあげる。」
とぼくに差し出したのはチョコレートだった。
「待ってるから。」
と黄泉は笑顔で言った。
その後、黄泉に貰ったチョコレートは凄く美味しくて。ぼくはこれがきっかけでチョコレートが好きになった。
そして、君のことが好きになった。
『チョコレートが好きになった理由』
(あの時の!骸くんって言うんだね。よろしくね)
(クフフ、よろしくお願いします。もう子鹿のところに行ったらダメですよ)
(もしかして、子鹿ってバンビくんのこと?)
(それ以外いないでしょう)
(うん、もう骸くんがいてくれるから寂しくないよ)