「僕としては、そのままでも構いませんよ」

今すぐにくれと言わんばかりに、私がチョコを湯煎しているところを彼は物欲しそうに覗き込んでいたのだった。
本当は内緒で作るはずだったのに。と内心肩を落とした。今日に限って彼は早く帰宅してきたのだった。

『もう、これじゃあただチョコを溶かしただけですよ。出来るまで待ってて』

「クフフ。仕方ありませんね。」

そう言いつつも彼の目線はずっとチョコレートを捉えたまま、私のそばを離れようとはしなかった。
やはりどうしても食べたいのか、はたまた何か別のことを考えているのかわからないが、顎に手を当て考える様な素振りをみせた。
その後、「いいことを思いつきました。こうすればいいのでは？」と言った。
すると、彼は湯煎中だったチョコにいきなり指を突っ込んできたのだった。
「あ、ちょっと骸さ、んんっ」
彼は、人差し指についたチョコを私の口に突っ込んできたのだった。
チョコの甘さと彼の指の感触が舌を刺激した。
まさかの事態に私も驚きを隠せなかったがそんな私を他所に、彼は不敵な笑みを浮かべた。
彼は指で口内を刺激したあと、私に口付けたのだった。
「時にはこういうのも悪くありませんね。好きなものを同時に頂くのも」