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大きな水槽に、数えきれないほどのクラゲが揺蕩う。
深い青の中、白のキラキラした物体が浮遊する姿はまさしく幻想的で綺麗だった。
水槽近くにあった看板をみると、クラゲについて説明が記されていた。
クラゲとは、刺胞動物である。
触手の表面にある刺胞という袋があり、その袋には毒針がある。
餌を獲る場合、その毒針を使い相手を刺して麻痺させる。とかなんとか。
愛らしい見た目とは裏腹に、毒針を使いこなすなんて。とも言いたくなるが「綺麗な薔薇には棘がある」ということわざがあるくらいだ。納得せざるを得なかった。
「君が好きだ」
一瞬自分に言われたんじゃないかと驚いた。
だが、どこからか聞こえてきたその台詞は
私の聞きたい声ではなく、すぐに違うと分かった。
私の近くでは恋人達が幸せそうに笑い合っていた。
でも私は違う。
私の隣には誰もいない。
また、看板に視線を落とした。
「君も、刺胞動物だったりして」
ポツリと呟いた後、ある男の顔が浮かんだ。
それは、私の大好きだった人だ。
藍色の髪をした、両目の異なる色の男を。
今も元気だろうか。
会う資格はもうないのに、また君に会いたいと願ってしまう。
でもね、どんなに願ったってこれからも変わっていくのは君だけ。
君がクラゲなら、私はなんだろうか。
君を忘れることができない。
触手に刺されて麻痺した餌の方か、
時を刻まず。
一定を保つことしかできない四季の消えた水槽か、
いやきっと、どちらも私だった。
「うふふ、もうこんなところで恥ずかしい。私も好きよ」
恋人達のそんな乳臭い言葉さえ今は羨ましかった。
私がもしもここに在ったなら、君に1番に伝えにいくよ。なんて考えるだけ虚しくなるだけだった。
目の前には相変わらず綺麗なクラゲが揺蕩っていた。
だが、四季なんて存在しない。
外からの干渉をほとんど受けることなく、一定に保たれた空間の中、
変わっていくのはクラゲの生命だけだった。
夢主死ネタでした。すみません
成仏できずにそこに漂うって感じでしょうかね。
まあ普通に失恋でも話は通じるかもしれませんね