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◯白蘭の短編にある「あと何回」の別のお話
レオナルド・リッピとして登場しております
僕が彼女に目をつけた理由は単純だった。
初めは、利用するのに丁度良かっただけのこと。
謎に包まれた、得体の知れない彼の『唯一』の弱点にもなり得るような大事な逸材だった。
彼、もとい白蘭が彼女のどこを好いているかは知らない。
だが、白蘭を見れば彼にとって彼女が特別な存在であることは明確だった。他人と彼女を見る目が明らかに違うことなど嫌でもわかる。
他の人間が塵なら、彼女は珠であるような。
彼女にだけ、割れ物を扱うように接する態度は
惨虐な彼には不釣合いだった。
前に、白蘭の前で彼女と話をしたときがあった。話の内容は、男女が仲睦まじく話すような内容とは程遠い「今後の任務について」だ。
それを親しげに話をしているとでも思ったのか、その姿を見ていた彼の瞳には、静かに怒りの感情を宿していたのだった。
否、「怒り」ではなく「嫉妬」だった。
「ねえ、レオくん。はじめに言っとくけど黄泉ちゃんは僕のだから
間違っても、黄泉ちゃんには手を出さないでね。」
ーーー絶対に。
そう、彼は僕に言ったのだった。
何をどうみて、僕が彼女に手を出そうとしていると思ったのか全くもって不明ではあるが まあいい。
彼がそこまで執心するのなら、なおのこと。彼女を手駒に取り、利用する意味は大いにある。
今日(こんにち)、本来ならば僕は『レオナルド・リッピ』として白蘭へ報告に来たのだが、当の本人は不在であった。
出直すつもりでいたが、部屋に居た彼女に呼び止められ今に至る。
ーーー 彼が来るまでここで話をしませんか
発端は彼女のこの発言だった。
どうやら、日中はこの部屋で過ごすことが多く退屈らしい。他人の余暇に付き合ってあげるほど、僕も時間があるわけではないが
彼らを探るのにはいい機会だ。
そう思っていた。
ーーーー
『あの、レオさん・・?』
「あ、あぁ。すみません。何でしたか」
『ふふふ、まあ。好きな人のことでも考えていましたか。』
「、、は?」
『ずっと、心ここに在らずでしたよ。』
「だからと言って、なぜそうなるのです」
『なんとなくですよ。あれ、もしかして無自覚でしたか?最近のレオさん、すごく生き生きしているというか。なんかよく笑っているような気がして。良い人に出会えたのかと勝手に思っていました。』
「、、何ですかそれ。よく、分かりませんね」
『、、、だって、とても優しいから。レオさんは』
そう言うと、突然彼女は僕の頬に手を添えた。僕に向ける視線はとても穏やかなものに見えた。自身で何をしているのか気まずくなったのか、咄嗟に手を引っ込め顔を赤くしていた。
『あっ、すみません。あの』
「まったく。からかわないでください。そういう黄泉さんだって白蘭様とベッタリじゃないですか」
『、、、そう、ですね。白蘭さんには大事にしてもらっています。私なんかが、、怖いくらいに、、、』
『白蘭』そう聞いた彼女の表情が暗くなった気がして違和感を覚えた。
すると、タイミングを見計らったように後ろのドアが開いた。
「あれ、レオくん?こんなところで何してるの」
「あ!白蘭様おかえりなさい、ご報告に伺っておりました。」
「あぁ、そうなの。でもごめん、後にしてくれる?ボク今黄泉と話したいからさ」
ーーー
「それで?今日も、レオくんと何を話してたの。ボクは、ボク以外の人が来ても鍵は開けちゃダメって言っておいたはずだけど。黄泉」
レオさんが出ていくなり、彼は私の後ろから抱きしめてきた。心なしか腹部に触れる彼の手はとても力強く、苦しささえ感じた。それに、いつも以上に声色が低かった。
彼は普段、私のことを「黄泉ちゃん」と呼んでいる。
黄泉。そう呼ぶときは、怒っているときだった。
「伝達係であるレオさんにも居留守を使うのは申し訳なくて、鍵のことはごめんなさい。お仕事の話、だよ」
「ふーん、仕事の話ね」
それ以降、彼が何も言わなくなってしまったことに居心地の悪さを感じた。彼を怒らせてしまったことに加え、静寂が私の心をさらに焦らせた。背後に感じる彼の体温さえももどかしかった。
嘘は言っていない。仕事の話も、した。
「?!」
突然、腹部にあったはずの白蘭の腕が離れたかと思えば、私の肩をガシリと掴んだ。
身体が半回転し、無理矢理彼の方へ向きを変えられたのだった。背中には扉があり、目の前には彼の顔があって逃げることは許されなかった。
『・・・びゃくらっ』
打ち付けられた背中にじんわりと痛みが広がった。
正直、私は彼が怖かった。
彼が、私を必要としているのは甘い甘い『好き』だなんて感情ではなくて、
ドス黒い「執着」そのものだった。
だからか、私はレオさんの優しさに縋りたかったのかもしれない。
だが、私も逃げなければいけないと分かってはいながら、彼の与えてくれる気持ちから抜け出せずにいた。
「嘘はダメだよ。黄泉。あんまりボクを怒らせないでね。もうキミを殺したくはないんだ。」
そういうと私を強く抱きしめた。
彼はいつもそうだった。今回が初めてではないような言い方をするのだった。
もしも、もしも願いが叶うのなら。
何かに囚われたように私を縛る彼を救ってあげてほしかった。
そして、もう一つ願いが叶うのなら、
優しく笑う彼のそばに居させて欲しい。
だなんて
彼は「からかわないで下さい」と怒るだろうか。
嗚呼、今日もまた。
何も言えず恐怖に震えながら、
深く重ねられた唇から熱が冷めるまで、
あなたを受け入れるだけ。
レオナルド・リッピとして登場しております
僕が彼女に目をつけた理由は単純だった。
初めは、利用するのに丁度良かっただけのこと。
謎に包まれた、得体の知れない彼の『唯一』の弱点にもなり得るような大事な逸材だった。
彼、もとい白蘭が彼女のどこを好いているかは知らない。
だが、白蘭を見れば彼にとって彼女が特別な存在であることは明確だった。他人と彼女を見る目が明らかに違うことなど嫌でもわかる。
他の人間が塵なら、彼女は珠であるような。
彼女にだけ、割れ物を扱うように接する態度は
惨虐な彼には不釣合いだった。
前に、白蘭の前で彼女と話をしたときがあった。話の内容は、男女が仲睦まじく話すような内容とは程遠い「今後の任務について」だ。
それを親しげに話をしているとでも思ったのか、その姿を見ていた彼の瞳には、静かに怒りの感情を宿していたのだった。
否、「怒り」ではなく「嫉妬」だった。
「ねえ、レオくん。はじめに言っとくけど黄泉ちゃんは僕のだから
間違っても、黄泉ちゃんには手を出さないでね。」
ーーー絶対に。
そう、彼は僕に言ったのだった。
何をどうみて、僕が彼女に手を出そうとしていると思ったのか全くもって不明ではあるが まあいい。
彼がそこまで執心するのなら、なおのこと。彼女を手駒に取り、利用する意味は大いにある。
今日(こんにち)、本来ならば僕は『レオナルド・リッピ』として白蘭へ報告に来たのだが、当の本人は不在であった。
出直すつもりでいたが、部屋に居た彼女に呼び止められ今に至る。
ーーー 彼が来るまでここで話をしませんか
発端は彼女のこの発言だった。
どうやら、日中はこの部屋で過ごすことが多く退屈らしい。他人の余暇に付き合ってあげるほど、僕も時間があるわけではないが
彼らを探るのにはいい機会だ。
そう思っていた。
ーーーー
『あの、レオさん・・?』
「あ、あぁ。すみません。何でしたか」
『ふふふ、まあ。好きな人のことでも考えていましたか。』
「、、は?」
『ずっと、心ここに在らずでしたよ。』
「だからと言って、なぜそうなるのです」
『なんとなくですよ。あれ、もしかして無自覚でしたか?最近のレオさん、すごく生き生きしているというか。なんかよく笑っているような気がして。良い人に出会えたのかと勝手に思っていました。』
「、、何ですかそれ。よく、分かりませんね」
『、、、だって、とても優しいから。レオさんは』
そう言うと、突然彼女は僕の頬に手を添えた。僕に向ける視線はとても穏やかなものに見えた。自身で何をしているのか気まずくなったのか、咄嗟に手を引っ込め顔を赤くしていた。
『あっ、すみません。あの』
「まったく。からかわないでください。そういう黄泉さんだって白蘭様とベッタリじゃないですか」
『、、、そう、ですね。白蘭さんには大事にしてもらっています。私なんかが、、怖いくらいに、、、』
『白蘭』そう聞いた彼女の表情が暗くなった気がして違和感を覚えた。
すると、タイミングを見計らったように後ろのドアが開いた。
「あれ、レオくん?こんなところで何してるの」
「あ!白蘭様おかえりなさい、ご報告に伺っておりました。」
「あぁ、そうなの。でもごめん、後にしてくれる?ボク今黄泉と話したいからさ」
ーーー
「それで?今日も、レオくんと何を話してたの。ボクは、ボク以外の人が来ても鍵は開けちゃダメって言っておいたはずだけど。黄泉」
レオさんが出ていくなり、彼は私の後ろから抱きしめてきた。心なしか腹部に触れる彼の手はとても力強く、苦しささえ感じた。それに、いつも以上に声色が低かった。
彼は普段、私のことを「黄泉ちゃん」と呼んでいる。
黄泉。そう呼ぶときは、怒っているときだった。
「伝達係であるレオさんにも居留守を使うのは申し訳なくて、鍵のことはごめんなさい。お仕事の話、だよ」
「ふーん、仕事の話ね」
それ以降、彼が何も言わなくなってしまったことに居心地の悪さを感じた。彼を怒らせてしまったことに加え、静寂が私の心をさらに焦らせた。背後に感じる彼の体温さえももどかしかった。
嘘は言っていない。仕事の話も、した。
「?!」
突然、腹部にあったはずの白蘭の腕が離れたかと思えば、私の肩をガシリと掴んだ。
身体が半回転し、無理矢理彼の方へ向きを変えられたのだった。背中には扉があり、目の前には彼の顔があって逃げることは許されなかった。
『・・・びゃくらっ』
打ち付けられた背中にじんわりと痛みが広がった。
正直、私は彼が怖かった。
彼が、私を必要としているのは甘い甘い『好き』だなんて感情ではなくて、
ドス黒い「執着」そのものだった。
だからか、私はレオさんの優しさに縋りたかったのかもしれない。
だが、私も逃げなければいけないと分かってはいながら、彼の与えてくれる気持ちから抜け出せずにいた。
「嘘はダメだよ。黄泉。あんまりボクを怒らせないでね。もうキミを殺したくはないんだ。」
そういうと私を強く抱きしめた。
彼はいつもそうだった。今回が初めてではないような言い方をするのだった。
もしも、もしも願いが叶うのなら。
何かに囚われたように私を縛る彼を救ってあげてほしかった。
そして、もう一つ願いが叶うのなら、
優しく笑う彼のそばに居させて欲しい。
だなんて
彼は「からかわないで下さい」と怒るだろうか。
嗚呼、今日もまた。
何も言えず恐怖に震えながら、
深く重ねられた唇から熱が冷めるまで、
あなたを受け入れるだけ。