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とある昼下がり、大きなあくびをした。
照りつける太陽の暑さと、蝉達の怒号のような鳴き声は、いつも僕を不快にさせた。
暦も、立秋を終えたが何も変わり映えはない。日陰に身を潜ませてはいたが、暑くてどうにかなりそうだった。
(まだ来ませんね)
待ち人のことを考え始めてから軽く数時間は経っている。
考えれば分かることだが、たいした用もなければこの暑さの中わざわざ出歩く気すら起きないだろう。
だが、待たずにはいられなかった。
それはなぜか、僕にも分からない。
別にお腹が空いているわけでも、
その人とどこかに行くわけでも、
その人と話すわけでもない。
でも何となく、会いたいだけ。
(はぁ)
と、また大きなあくびをした。
ーーーー
あれからまた数時間が経ち、空の色も藍色に染まりつつあった。
僕はというと定位置のまま座ってじっとしていた。暑さのせいで動く気にもなれなくて、必要最低限の用事がない限りこの木陰で過ごしていた。
果たしてその行動が、ただ涼をとっていただけなのか待ち人を大いに待っていたのかなんて分かりきったことであるが。
結局、この時間になっても来る気配はなかった。
(場所を変えよう。)
そう思って体勢を変え直したところ誰かの足音が遠くから聞こえてきたのだった。
「次こそは」なんて思ったのも何度目だろうか。多分、この足音もその人じゃない。
そう思って、茂みの中に入ろうとした時、聞きなれた声が僕を呼ぶのだった。もう諦めかけていた、僕がずっと待っていた人だった。
(まったく、来るのが遅すぎます。)
そう思いつつ、渋々その人の方に駆け寄って行った。突然暗闇から飛び出してしまったせいか、その人は「わっ」と小さな叫びを落としたが
僕だとわかった瞬間、表情を和ませたような気がした。
近づく僕に何の警戒もなく、頭を撫でたのだった。
「ごめんね、遅くなってしまったね。今日は暑かったけど元気にしてましたか」
どうして遅くなったのかと問いたいところだが、もうやめた。この人も忙しいのだろう。
(とても、暑くてどうにかなりそうでしたよ)
「あ、そういえば、これ買ってきたので良かったら食べてみてほしいな」
(まあ、仕方ない。許してあげましょうか)
そう言いながら、僕が好きなおやつを差し出した。それが嬉しくてかぶりついた。
僕がパクパクと食べる姿を見て、この人はさっきより一層微笑んだ気がした。
「最初は全然だったけど、こうやってお話しできるまで仲良くなれたのは本当に嬉しいね。ねえ、もし良かったらうちに来ませんか。」
『男猫が子を産む』
僕としては時が止まる様な、提案だった。
「にゃーん」
とある夕暮れ、大きな返事をしてみせた。
骸さんが猫になったお話。
◯男猫が子を産むとは、
決して起こらないこと、あり得ないことのたとえ。
照りつける太陽の暑さと、蝉達の怒号のような鳴き声は、いつも僕を不快にさせた。
暦も、立秋を終えたが何も変わり映えはない。日陰に身を潜ませてはいたが、暑くてどうにかなりそうだった。
(まだ来ませんね)
待ち人のことを考え始めてから軽く数時間は経っている。
考えれば分かることだが、たいした用もなければこの暑さの中わざわざ出歩く気すら起きないだろう。
だが、待たずにはいられなかった。
それはなぜか、僕にも分からない。
別にお腹が空いているわけでも、
その人とどこかに行くわけでも、
その人と話すわけでもない。
でも何となく、会いたいだけ。
(はぁ)
と、また大きなあくびをした。
ーーーー
あれからまた数時間が経ち、空の色も藍色に染まりつつあった。
僕はというと定位置のまま座ってじっとしていた。暑さのせいで動く気にもなれなくて、必要最低限の用事がない限りこの木陰で過ごしていた。
果たしてその行動が、ただ涼をとっていただけなのか待ち人を大いに待っていたのかなんて分かりきったことであるが。
結局、この時間になっても来る気配はなかった。
(場所を変えよう。)
そう思って体勢を変え直したところ誰かの足音が遠くから聞こえてきたのだった。
「次こそは」なんて思ったのも何度目だろうか。多分、この足音もその人じゃない。
そう思って、茂みの中に入ろうとした時、聞きなれた声が僕を呼ぶのだった。もう諦めかけていた、僕がずっと待っていた人だった。
(まったく、来るのが遅すぎます。)
そう思いつつ、渋々その人の方に駆け寄って行った。突然暗闇から飛び出してしまったせいか、その人は「わっ」と小さな叫びを落としたが
僕だとわかった瞬間、表情を和ませたような気がした。
近づく僕に何の警戒もなく、頭を撫でたのだった。
「ごめんね、遅くなってしまったね。今日は暑かったけど元気にしてましたか」
どうして遅くなったのかと問いたいところだが、もうやめた。この人も忙しいのだろう。
(とても、暑くてどうにかなりそうでしたよ)
「あ、そういえば、これ買ってきたので良かったら食べてみてほしいな」
(まあ、仕方ない。許してあげましょうか)
そう言いながら、僕が好きなおやつを差し出した。それが嬉しくてかぶりついた。
僕がパクパクと食べる姿を見て、この人はさっきより一層微笑んだ気がした。
「最初は全然だったけど、こうやってお話しできるまで仲良くなれたのは本当に嬉しいね。ねえ、もし良かったらうちに来ませんか。」
『男猫が子を産む』
僕としては時が止まる様な、提案だった。
「にゃーん」
とある夕暮れ、大きな返事をしてみせた。
骸さんが猫になったお話。
◯男猫が子を産むとは、
決して起こらないこと、あり得ないことのたとえ。