short
あなたのお名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「探したよ。黄泉ちゃん」
声がした方を見るとそこにはオーゾさんがいた。
待ってるよう言われたのに、本人に行方も告げずに私は飛び出して来てしまった。
あのまま居続ければきっと泣き出してしまう気がして、堪らなくなったとは言え彼には失礼なことをしてしまった。
「待っててって言ったのに、戻ったら黄泉ちゃんじゃなくてあいつらがいてびっくりしたよ。しかも黄泉ちゃん、これ忘れてどっか行っちゃうしさ。」
「、、、、」
そう言うと彼は自身の頭上を指さし、私がさっきまで被っていたはずのうさっぴの帽子をかぶっていた。
きっと、あの時ベンチに置いたまま忘れたか、走ってくる途中にでも落としてしまったのだろう。
初っ端から本当に彼には迷惑ばかりかけて、申し訳ない。いっそのこと、痺れを切らしてどこかへ行ってくれれば私の心は晴れたかもしれないのに。しかし、そうはしない彼は私に近づくと優しく頭を撫でた。
「あ、別に怒ってるんじゃないよ?僕はただ心配しただけ。なんか言われなかった?まあお兄さんが慰めてあげるって。よしよし、大丈夫。僕は君のことを嫌いになったりしないよ」
何でこの人はこんなにも優しくしてくれるんだろうか。
自惚れとかそういうのじゃなくて、
百歩譲って、
本当に私に一目惚れしているとして、
ここまでできるものなのだろうか。
だって私はずっと彼に迷惑ばかりかけているのに。
「どうして、そこまで私のこと心配してくれるんですか。だって私達今日初対面だったんですよ。それにオーゾさんには本当にご迷惑ばかりかけました。」
「迷惑って、何のこと?それに僕言ったじゃん。君が好きって。好きな子のこと心配するのは当たり前でしょ。
「、、っそれは、口説き文句っていうか、誰にでも言うやつです」
「何それ。君にしか言わないよこんな恥ずかしいこと」
「、、、、、」
「それとこれ返すよ。はい、忘れ物」
そう言うと彼はうさっぴのハットを脱いだかと思えば、視界を遮るくらい私に深く被せてきた。
「ちょっと何して、、、っ」
「そろそろ気づいてくれてもいいんじゃない?」
顔を覆ってきたハットのツバを上へ上げた時には、すでに彼の顔が数センチ先にあった。
回避することはできず、私は、彼に優しく口付けられた。
「、、、、」
「、、、僕はまだ君の気持ち、聞けてないよ」
真剣な眼差しで私を見つめる彼に、胸が高鳴った。
彼から、目をそらせなくなった。
でも、こんなにも優しくしてくれるのにどうしても脳裏にあの人のことが浮かんできてしまう
あの人だったら良かったのに。なんて考えてしまう私は本当に、最低だ。
自己嫌悪に陥ってからは早かった。今までずっとずっと、我慢していた涙が溢れ落ちてきたのだった。
「ちょっ、ちょっとちょっと。泣かないでよ。弱ったなぁ。泣いちゃうなんて。」
「、、、、、だって、、」
(口付けも、こんな気持ちになったのも初めて、だったから)
もしも私がここで彼を受け入れたとしても、きっとこのままでは私は引きずってしまう。
自分の気持ちを言わないままモヤモヤして、前には進めない。これからも彼のことを思い出しては同じことを繰り返すはずだ。
だから、自分の気持ちに区切りをつけなければいけない。
「、、ごめんなさい。オーゾさん。私は、骸さんが好き」
「、、、」
「もしかしたら嫌われてるかもしれない。振られても良い。でも、私はあの人に自分の言葉で伝えたい。」
「、、、君みたいな子、嫌いなわけないでしょ」
「、、、あ」
そう言って彼は私をきつく抱きしめた。
すると、今は聞こえるはずがない私の好きな声がした。
「黄泉、もう泣くのはおやめなさい。」
「、、、、え?」
私を抱きしめたはずのオーゾさんは消えてしまって、
マリツィさんと一緒に行動していたはずの骸さんが困った顔で私を抱きしめていた。
ーーーーーーーー
「少し、悪戯が過ぎたようですね。」
「、、、どういう、こと?」
そう尋ねるともともと困った顔をしていた彼が、さらにバツの悪そうな顔をした。
「幻覚ですよ。全部ね。」
「げん、かく、、って。じゃあ、オーゾさんは」
「いませんよ。もともと」
「じゃああっちの骸さんは?」
「あぁ。あれは沢田綱吉です」
「、、、、、」
どういうことなのか頭が追いつかず、なんのためにわざわざそんなことをしたのか見当もつかなかった。
彼の言うことが本当なら、私が遊園地のゲートを通ってきたときから今までずっと
オーゾさんだと思ってたのが骸さんで骸さんだと思ってたのが綱吉さんだったってこと?
「なんで、そんなこと」
「沢田綱吉の提案ですよ。もともとこの歓迎会とやらは、彼女の見定めも兼ねていたようです。
貴方に対する態度や立ち振る舞いに違和感を感じていたようですからね。
それに僕自身の姿では、貴方と共に行動できそうにもありませんでしたから」
とさらっと答えた彼だったが、私の頭の中は?(クエスチョンマーク)でいっぱいだった。
そもそも私に内緒にしなくても良かったじゃないか。
「な、、じゃあ、私にもそう言ってくれれば良かったのに!」
「クフフ。言わない方が面白いと思ったんですよ。貴方がいつ気づくか、僕もつい楽しくなってきてしまいましてね。正体を明かすタイミングを逃してしまいました。」
もう、馬鹿馬鹿しくなってしまった。
本当にこっちはどんな思いで今まで過ごしてたかなんてこの人には伝えても伝えきれないのだろう。そう思った。
「、、こっちはどんな思いで、、、」
「クフフ。えぇ、僕のために随分と妬いてくれたみたいですね」
「、、、、、、、、」
本当に馬鹿馬鹿しい。
でも、
ずっと、
一緒に居てくれたのも
喜ばせようとしていたのも
慰めてくれたのも
可愛いって褒めてくれたのも
好きって言ってくれたのも
全部。あなただったんだ。
胸にあったつかえが、怒りとか辛さとか何もかもスッと消えていくような感覚だった。
私は自分の気持ちに浸っていただけであったが、黙り込んだ私をみてまずいと思ったのか、骸さんは私の頬に手を添えて尋ねてきた。
「、、、怒りましたか。」
勿論、答えはNOだ。
私の心は十分に満たされてしまったが、今までしてやられっぱなしだったのだからこれくらいの抵抗は許してほしい。
「、、怒ってます」
そういうと、焦る様子もなく彼は答えた。
「おやおやそれは困りましたね」
「思ってないくせに、、でも」
「?」
「オーゾさんとしての行動とか言動とか、今日の全部、骸さんの本心ってことで受け取っても良いなら。許しますよ」
「クフフ、なるほど。勿論ですよ。しかし、これだけは本当の僕からもう一度言いましょうか。」
「 」
私にしか聞こえない声で囁いた。
ずっとずっと、1番貴方から欲しかった言葉だった。
「私も、すき」
微笑んだ彼はもう一度私に口付けた。