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(ふぅ、、、)
メリーゴーランドが終わったあともオーゾさんに引っ張られながら、お化け屋敷や迷路、フリーフォール、次々と目紛しくも回って来たのだった。
別に疲れた訳ではないが、火照った身体を冷ますためにベンチに座って休んでいた。
その間、オーゾさんは「飲み物を買ってくるからここで待っててね」とどこかに行ってしまった。
オーゾさんが去ったあと、今日の出来事を走馬灯のように思い出し、我に帰った途端恥ずかしくなった。
(、、、っ)
オーゾさんと一緒に回ってる間、確かに楽しかったけど、ずっとあの光景が頭から離れなかった。
お姫様抱っこで白馬に乗ったの?私?
偽物とはいえおとぎ話のようなシュチュエーションかつバカップル感丸出しだったじゃないか。
あんなところ知ってる人には絶対に見られたくない。穴があったら入りたい。考えれば考えるほど恥ずかしくなった。
そして、まだそれだけではなかった。
今私の頭の上に乗っているハット。ここのテーマパークの大人気キャラの”うさっぴ“の耳が付いた薄ピンクの可愛い帽子だった。
ーーーー僕としたことが。大事なものを忘れてた。とか何とかで、オーゾさんが私にこの被り物を無理やり(?)被らせて来たのだった。
今日何回思ったか分からないが、良い歳して大丈夫だろうか。これ
そんなことを考えながら百面相していたところに聞き覚えのある声が背後から聞こえて来た。
『あれ〜?何してんの〜?』
一瞬誰だか分からなかったが、姿を見たとたん変な汗がどっぷりと流れ出してくるのが分かった。
「あ、マリツィさ、、、、」
『あ!骸さんと見てたけど、とってもお似合いだったよ!オーゾさんだったっけ?付き合っちゃえば良いのに!
そういえば〜骸さんも言ってたよ!やっぱ2人はすっごい絵になるって!』
「、、、、あ、えっと」
『そういえば、骸さんってばすっごい可愛いの。ああ見えて絶叫系苦手みたい。ねえ知ってた?』
「、、、、、、」
もっと早くマリツィさんの存在を認知出来ていれば避けられたかもしれないが、既に遅かった。
相変わらず私の話を聞かず、自分の言いたいことをズバズバと言ってくる姿に後退りした。
これ以上、マリツィさんの話は聞きたくなかった。
しかし彼女が言った、骸さんの発言である”やっぱ2人は絵になる“ってどういう意味?
ーーーーー貴方が行くなら僕も行きますが、黄泉が行かないなら僕も行きません
そう言ってくれたのに。私には見向きもしてないじゃない。
知ってる人に見られたくないって思ってたのに。1番見られたくない人に見られてたなんて。
きっと、ここに彼女がいるということは、彼も近くにいるのかもしれない。できれば、今は、
彼にこんな私を見られたくなかった。
そう思って、立ち去ろうとした瞬間、マリツィさんに腕を掴まれた。
『ねえ?聞いてんの?』
彼女の方を見やると勝ち誇ったような顔で私を見ていた。
「あの、離してください。」
『何で?話は終わってないんだけど?それに骸さんもこっちに来るし』
「!」
『会いたかったんじゃないの?私がずっと独り占めしてたし。好きなんでしょう?あの人のこと。
あなたの顔見てたらすぐわかっちゃったぁ。だって、私も好きだもん。骸さんのこと。かっこいいし』
「あの、本当に」
もう離して下さい。そう言おうとした時には遅かった。
「おや、黄泉。こんなところで何をしているのですか」
1番会いたかったのに、
1番会いたくなかった人と目が合ってしまった。
『あ!骸さんおかえりなさぁい!』
「えぇ。それより君はオーゾと一緒にいたはずでは?早く戻った方がいい」
『えー!この子、骸さんに会いたかったみたいよぉ』
「そう、ですか」
『あ〜骸さんはそうでもなかったみたいねぇ』
どうして。
どうして、そんなこと言うの。
どうして、あのときみたいに
ーーーえぇ。楽しみなんでしょう?それにいい機会です。
笑ってくれないの。
「あの私、もう行かなきゃ」
堪らなくなって、2人をふりきって当てもなく走り去った。
ーーーーーーーーー
『あーあ。いっちゃった』
あー。凄く気持ちがいい。いい男を取った瞬間って本当に気分がいい。
最初、出会った時は手強そうだって思ったけど、案外私に気がなかったわけでもないらしい。今日1日結構楽しそうにしてたじゃん。
ふふふ。正直、女友達とか興味ない。
まあ強いて言うなら私の引き立て役にはちょうど良いけど。
あー、あのオーゾっていう人も結構イケメンだったけど、まあいいか。
こっちが本命だし。
「、、、、、、、、」
『ねえ、骸さんは私のこと好き?』
今日の彼の行動と、あの子に対する反応を見ていれば
私を選ばない選択なんて彼にはなかった。
そう思ってた。
「そうですね、、、僕が好きなのは、骸が好きなのは黄泉さんだよ。君じゃなくてね」
ーーーーーーー
ずっと目の前にあるはずのメリーゴーランドが、何周したかは定かではなかった。
アトラクションの終了を告げるアナウンスが鳴り終わる頃、皆出口を通り次のアトラクションへ向かおうと右往左往していた。
次はあれ、次はあれ。と指を指している子供の姿が見えた。反対に、メリーゴーランドに搭乗するため順番待ちをしていた子供達は盗られまいと言わんばかりに、早々と、白馬や馬車に飛び乗っては燥(はしゃ)いでいた。
その付近では、マスコット達がうさぎ型や丸い風船を子供達に配っている姿もあった。子供の歩く速度に合わせ、ゆらゆら揺れる風船が子供の可愛らしさを引き立てている様でなんとも微笑ましかった。
また別の場所では、カップルや家族達が耳の生えたカチューシャや被り物を着けては一緒に写真を撮ったりして楽しんでいた。
どこを見渡しても、家族や友人、恋人達と思われる人達の笑顔が溢れていた。
だからこそ、私はここにいるべきではない。
キラキラしたこの世界で私だけ次元が違って、私だけ取り残されて、独りぼっちになった様な。異世界転生でもした様な感覚だった。
「もう、帰ろう」
ぽつりとつぶやいて、重い腰を上げたのだった。
「探したよ。黄泉ちゃん」