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長編メリバ 巽編
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病める時も健やかなる時も共にいることを誓いましょう。
ガチャリ、と差し込んだ鍵を回す。周囲を慎重に見渡してドアノブに手を掛ける。大丈夫だ、落ち着け、鍵は閉まっていたじゃないか。そう自分に言い聞かせ重たく感じられるドアを開けた。ギィ……重厚な音と共に暗闇が広がる中をそっと覗き込む。人の気配はしない。そう、当たり前だ。だってここは私の家で、私は今帰ってきたばかりなのだから。知らない内に荒くなっていた息を整えるためふぅと息を吐く。少し緊張が解れた気がした。
軽くなった心と足取りで玄関に入りすぐに鍵を閉めた。念のため、ドアチェーンも。暗い玄関に明かりを灯し、ようやく家に帰ってきたと実感が湧いて来た時、ふと足下に転がるヒールが目に入った。……揃えてなかったっけ?それを皮切りに肌がざわつく感じがした。
家の空気が違う。
いや、気のせいだ。考えすぎ。ヒールだって、朝慌てていたからうっかり倒して出たのかもしれない。今日は暑かったから部屋の空気が濁っているんだ。気のせいだ気のせいだ気のせいだ。
自分の考えすぎだということを証明するため、部屋に上がろうと靴を脱ぐ。手が震えて上手く脱げない。誰もいない部屋に、ひどく自分の息が響いている気がする。さっきから背中をぞわぞわとしたものが這っていく。壁を探り廊下兼キッチンの明かりをつけた。何も変わった所は無い。ほら、やっぱり気のせいだ。考えすぎだ。
無意識にカバンの中を探りスマホを手に取る。胸の前で抱えると心臓がうるさく動いていた。ドッドッドッ……落ち着かせようと、大袈裟な程口で呼吸をする。大丈夫、人の気配はしない。
狭く短い廊下を慎重に歩き、ようやく部屋の入り口へたどり着く。部屋の明かりをつければ、朝出かける時と変わらぬ部屋が照らされる。着ていく物に悩みベッドの上に散乱した服、急いでいたため片づけきれなかった化粧道具。何も変わらない。ローテーブルの上に白い封筒があること以外は。
「ひっ!」
それを見つけた瞬間足が震えた。力が抜け自分の足ではなくなってしまったみたいだ。壁に寄りかかるがとても立っていられない。ずるずると座り込む中、窓の鍵は大丈夫だろうかと頭を過ぎる。あぁ確認しないと。今すぐにでも誰かが、あの人が入ってくるんじゃないかと気が気じゃない。いや、それよりも今この状況を見られているかもしれない。聞かれているかもしれない。怖い。こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい……誰か!
「っせんぱ、い……か、かぜはや、せんぱい……!」
助けて!
手にしていたスマホを必死で操作する。連絡先……風早先輩の!
震える指と滲む視界で何度も違う場所を誤タップしながら目当ての番号を表示させる。無機質な呼び出し音が耳に響く。お願い……お願い……出て!繋がって!
電話の向こうから「はい」と声がした。瞬間、叫んでしまう。
「助けてっ!」
もうこれ以上一人ではいられなかった。
ガチャリ、と差し込んだ鍵を回す。周囲を慎重に見渡してドアノブに手を掛ける。大丈夫だ、落ち着け、鍵は閉まっていたじゃないか。そう自分に言い聞かせ重たく感じられるドアを開けた。ギィ……重厚な音と共に暗闇が広がる中をそっと覗き込む。人の気配はしない。そう、当たり前だ。だってここは私の家で、私は今帰ってきたばかりなのだから。知らない内に荒くなっていた息を整えるためふぅと息を吐く。少し緊張が解れた気がした。
軽くなった心と足取りで玄関に入りすぐに鍵を閉めた。念のため、ドアチェーンも。暗い玄関に明かりを灯し、ようやく家に帰ってきたと実感が湧いて来た時、ふと足下に転がるヒールが目に入った。……揃えてなかったっけ?それを皮切りに肌がざわつく感じがした。
家の空気が違う。
いや、気のせいだ。考えすぎ。ヒールだって、朝慌てていたからうっかり倒して出たのかもしれない。今日は暑かったから部屋の空気が濁っているんだ。気のせいだ気のせいだ気のせいだ。
自分の考えすぎだということを証明するため、部屋に上がろうと靴を脱ぐ。手が震えて上手く脱げない。誰もいない部屋に、ひどく自分の息が響いている気がする。さっきから背中をぞわぞわとしたものが這っていく。壁を探り廊下兼キッチンの明かりをつけた。何も変わった所は無い。ほら、やっぱり気のせいだ。考えすぎだ。
無意識にカバンの中を探りスマホを手に取る。胸の前で抱えると心臓がうるさく動いていた。ドッドッドッ……落ち着かせようと、大袈裟な程口で呼吸をする。大丈夫、人の気配はしない。
狭く短い廊下を慎重に歩き、ようやく部屋の入り口へたどり着く。部屋の明かりをつければ、朝出かける時と変わらぬ部屋が照らされる。着ていく物に悩みベッドの上に散乱した服、急いでいたため片づけきれなかった化粧道具。何も変わらない。ローテーブルの上に白い封筒があること以外は。
「ひっ!」
それを見つけた瞬間足が震えた。力が抜け自分の足ではなくなってしまったみたいだ。壁に寄りかかるがとても立っていられない。ずるずると座り込む中、窓の鍵は大丈夫だろうかと頭を過ぎる。あぁ確認しないと。今すぐにでも誰かが、あの人が入ってくるんじゃないかと気が気じゃない。いや、それよりも今この状況を見られているかもしれない。聞かれているかもしれない。怖い。こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい……誰か!
「っせんぱ、い……か、かぜはや、せんぱい……!」
助けて!
手にしていたスマホを必死で操作する。連絡先……風早先輩の!
震える指と滲む視界で何度も違う場所を誤タップしながら目当ての番号を表示させる。無機質な呼び出し音が耳に響く。お願い……お願い……出て!繋がって!
電話の向こうから「はい」と声がした。瞬間、叫んでしまう。
「助けてっ!」
もうこれ以上一人ではいられなかった。
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