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②着替えたい
「…してほしいこと」と呟きはっと思い当たった。昨日は具合が悪すぎてシャワーすら浴びれていない、と。
「あ、あの巽さん」
「はい。何かしてほしいことがありますか?」
「してほしい、というか、したい、んだけど……あの」
段々小声になる私に巽さんが一歩近づいてくる。あぁできれば今は近づかないでほしい。
「あ、あのね、シャワー浴びてきても良いかな」
巽さんは「おやおや」と呟いたが察してくれたようで「俺のことは気にせずに」とゆっくりするよう言ってくれた。脱衣所で服を脱いだり着替えを用意したりしていると、力が入らずよろけてしまい思いっきりドアにぶち当たった。ゴン、という音がした瞬間巽さんが声をかけてくる。
「だ、大丈夫ですか!タヌキさん!倒れたりしていませんか?」
「あはは、大丈夫大丈夫。あの、ちょっとよろけただけで……」
「何かあったらすぐに俺を呼んでくださいね」
「うん、あの、本当、大丈夫なんで」
すみません、と小さく謝りなんとかシャワーを浴びる。普段していることなのに頭を洗うことも体を洗うことも億劫で堪らない。なんとか汗を流して脱衣所に戻った時には疲れ果てていて、一日寝て過ごすだけで体力の衰えを感じた。
「はぁ、ごめんなさい巽さん、心配かけました……」
「っタヌキさん、髪を乾かさないとまた風邪をひいてしまいますよ」
体を拭いて服を来たところで力尽きた私は髪が濡れているまま部屋に戻った。ポタポタと落ちる滴に巽さんは心配そうな顔をする。
「あぁ…ちょっと……疲れちゃって」
休んだら乾かします、とベッドを背もたれに座り込んだ。ようやく体を預けられる場所にこれてはぁ、と一息つく。そんな私を巽さんは相変わらず心配そうに見てくるので「体力が落ちてるだけです」と説明をする。
「ですが……あぁ、それでしたら」
徐に立ち上がった巽さんが脱衣所の方へと消えていく。何するんだろうと思っている内にその手にドライヤーを持って帰ってきた。
「俺が乾かしてあげますね」
巽さんは私の後ろのベッドに腰掛けコンセントに手を伸ばす。大丈夫、という間もなくブオォーっと温かい風が頭部に当てられた。
「熱かったら言ってください」
「ふぁい」
俯いている間に段々と髪が乾いていく。何度も髪の隙間に入れられる手がなんだかくすぐったい。でも撫でられているようにも感じられ、温かくなると共に微睡みを感じた。あぁこのまま眠れそう。
「さて、これぐらいで良いでしょうか。……タヌキさん?」
「ふぁっ……あー寝ちゃいそうだったー」
うとうとしている間に髪は綺麗に乾かされていた。ぽかぽかする頭皮がまだ私を夢の国へと誘っている。
「ふふ、どうぞ、ゆっくり休んでください」
「んんーでも、巽さんともっと居たい」
ぽてん、と巽さんの太股に頭を乗せ見上げれば、驚いた顔の巽さんと目が合った。困らせてしまったかもしれないと慌てて頭をのけ「冗談です」と取り繕う。巽さんはベッドから降りて私の隣に座った。
「俺も……タヌキさんともっと一緒に居たいと思っています」
「へっ……」
「だから、早く元気になって下さいね」
「あ、はい…」
促され、いそいそとベッドの中へ潜り込む。大人しく横になれば、巽さんは満足そうに微笑み乾かしたばかりの髪を撫でてくれる。それが気持ち良くて、私はあっという間にうとうとし始めた。
「邪魔でなければ暫くここにいても良いでしょうか」
「……起きても居て欲しい」
「それ、は……タヌキさんが元気になったら、ということで」
「絶対、約束ですよ」
微睡む向こう側で、巽さんが「弱りましたな」と呟いたような気がした。