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短編
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「英智くんて、おっぱい好きだよね」
「え?」
久しぶりの逢瀬。自分の体調も良い。性欲は強い方じゃないと思っているから別にしなくても良かったのだけど、彼女の話し声が耳に優しく響き、彼女の触れる場所がゆっくりと熱を帯びて、それぞれが心地よくもっと近づきたいと軽くキスをしていたら、今日はしても良いかな、と思い彼女を連れてベッドルームへ向かった。他愛もない話をしながら衣服を脱がし、彼女を下着だけにしてその肌の柔らかさや滑らかさを堪能していたら脈略もなく降って沸いた言葉に、間抜けな声を出してしまった。たしかに、僕は今タヌキちゃんの胸を触っていた。
「あ、ごめんね。別に深い意味は無いし、イヤってわけでもないんだよ。ただ好きなんだなーって」
だから気にせず続きをどうぞ、と言われてすぐに再開できるものでもない。なんとなく興が削がれてしまい彼女から離れて起き上がる。
「ごめんね英智くん、怒った?」
「いや……怒ってはいないよ。心配させたみたいだね。僕の方こそごめんね」
起き上がり僕の隣へ座ったタヌキちゃんの頭を撫でる。
「ただ少し、君の言葉が引っかかってね」
自分では特別……胸が好きだと思ったことは無い。たしかにこういった行為をする時に触りはするが、そういうモノなんじゃないだろうか。……いきなりつっこむわけにもいかないし。
「よかったら、どうしてそう思ったか教えてくれるかい?」
彼女は「なんとなくだけど」と前置きをしつつ首を傾げて考え始めてくれた。腕を組めば丁度その上にのっかり、ふるん、と揺れた。繊細なレースに縁取られた下着から見える肌は、白く艶めかしく輝いて見える。
「んー、触る時間が長い?」
「え?」
「あっ誰かと比べてるわけじゃないよ!ただ、他の場所と比べて触られる時間が長いかなーって……」
「そう、かな」
もちろん見に覚えは無い。無い、が確かに触り心地は良いので触る時間は長いのかもしれない。
「でも君だって触られるのは好きだろう?」
そう、触るのはタヌキちゃんが気持ち良くなるためであって自分のためではない。準備をしておかないと後々苦労するのはタヌキちゃんだ。僕は、君が痛い思いをしないために胸を揉んでいるにすぎない、はず。
「うん、好き。でも英智くんにならどこ触られても好きだから」
「~~っ!君って子は……」
タヌキちゃんは突拍子も無いことを言っては僕を喜ばせる。これが無意識なのだからたちが悪い。このままじゃ自分がタヌキちゃんの中で胸が好きな人と思われてしまう。嫌いなわけじゃないけど、そう思われるのはなんだか癪だからできれば訂正しておきたい。
「もう少し、何かこう、決定的なことはないかな?」
「え?えー?んー……」
無いのなら、タヌキちゃんの勘違い、ということにしたい。タヌキちゃんが誰かに言うとは全く思っていないけど、どこから漏れるか分からない。どこかの誰かが喜びそうなこんなネタは、潰しておくに限る。
「怒らない?」
「怒るような内容なのかい?」
「無意識とかこっそりとかしてた事なら言っていいのかなーって……」
自分には身に覚えがないが、タヌキちゃんの方には覚えがあるようだ。怒らない、と約束をしてその時を促す。
「……英智くん、疲れた時私の胸に顔埋めるよね」
「え?」
「あとその時匂い吸ってるよね」
「えぇっ?」
「その……エッチした後とか一緒に寝るだけの時とかも、気づいたら英智くんの顔がおっぱいにある時が多いし」
「ちょっと待ってくれるかい」
そんなことをした覚えはない、と言いたかったけど彼女が嘘をついているようには思えなかった。彼女の様子からも、一度や二度の話ではないらしい。
「ちょっと……思い出すようにするから」
タヌキちゃんに静止をかけ自分の脳を動かす。疲れた時、顔を埋める?誰が?僕が?……そんなことあっただろうか。確かに疲れている時はタヌキちゃんに抱きしめてもらうことが多い。そんな時はタヌキちゃんが「よしよし」と僕の頭を抱えて撫でるものだから必然的に僕の頭の場所は……タヌキちゃんの胸になってしまう。不可抗力じゃないかな。匂い……に関してはどうだろう。吸う?……深呼吸はしているかもしれない。リラックスをするためだ。寝ている時、は、……確かに最初は僕がタヌキちゃんを抱きしめて寝ているのに、目が覚めた時はタヌキちゃんに抱きしめられていることが多い。タヌキちゃんが抱きしめる方が好きなのかと思っていたけど……。
よくよく考えれば思い当たらないことがないこともなかった。まさか、本当に?僕は胸が好きなのだろうか。
「大丈夫?英智くん」
頭を抱え悩む僕を心配してタヌキちゃんが覗き込んでくる。その目は僕をからかおうとか、バカにしようとしているものではなく、純粋に心配をしていた。可愛い、と思うと同時にタヌキちゃんの白い胸が目に入ってきてしまった。両手をベッドに付いているせいで丸みを強調されたそれは見事な谷を作っている。
「……認めるよ。僕は君の胸が好きなようだ」
「え!?あ、うん」
「だからこれからも十分に堪能させてもらうことにする」
「へ?え、あ、えーっと、お、お手柔らかにお願いします」
タヌキちゃんが言い終わらない内にその柔らかな胸に手を伸ばす。……認めてしまえば呆気ないもので、その感触を素直に気持ち良いと思ってしまった。
「君の胸はこんなに気持ちが良かったんだね」
声に出せばタヌキちゃんの顔が赤く染まる。僕は「こんなはずじゃ」と狼狽えだしたタヌキちゃんをベッドに押し倒した。最初に言ったのは君だからね。責任を取ってもらおうか。
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