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短編
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「え、うそ……」
私の目はテレビに釘付けになった。
『22時からのドラマに端役で出ておりますのでよろしければご覧下さいまし』
と連絡があってから早く22時にならないかな、とそわそわしていた。
いつもならヘコんでしまうお局さまの小言もどこふく風。
『今日の22時から彼ぴっぴのお顔をテレビで見れる私最強』と思えばなんでも乗り切れた。
絶対リアルタイムする!と意気込んで仕事を終わらせ飛んで帰ってきて
ご飯もお風呂もストレッチも全部全部終わらせた。
普段は面倒がって後回しにする食器洗いも洗濯機回すのも終わらせることができたから彼には毎日テレビに出てほしい。
やればできる、私偉いと自分を褒めながら目的のドラマにチャンネルを合わせて録画予約もした。
あとは時間が来るのを待つだけだ。
そして22時。
連続ドラマのためふわっと前回のおさらいをしてくれる画面を流し見しながら
『リアルタイム楽しみ』と彼にメッセージを送った。
端役、と言っていた通り中々彼の姿は出てこない。
見たことないドラマの相関図をなんとなく把握してきたころ、姿は見えないが待ち望んだ声がした。
くる、と思った瞬間現れた彼は
「……め、めがね」
なんと眼鏡をかけていた。
視力が悪いという話は聞いたことがないので単に役柄的なものだろう。
しかしこれがなんともまぁ似合っている。
「え、やばい。やばい。かっこいい。すごい。やばい」
画面に映る彼に『やばい』を連呼している間に1時間はあっという間に過ぎてしまった。
きっと彼が喋った台詞量より、私が『やばい』と言った回数の方が多い。
眼鏡はずるい。
『ドラマ見たよ。眼鏡しか覚えてない』
正直な感想を送れば『お気に召していただけたようで何よりです』との返事。
他愛も無いメッセージのやりとりを何度か繰り返し次に会う時が楽しみだと終えて眠りにつく。
あぁ夢の中でも眼鏡の彼が出てきますように。
・・・
眼鏡事件からしばらく何かヘコむようなことがある度
『いやでも私の彼ぴっぴの眼鏡姿最強だからな』と乗り切っていたがそろそろその効能も薄れてきた。
仕事柄気軽に会えないがいい加減本人を摂取したい。
そんな思いが叶ったお休みの日、新しい服に袖を通し、睫毛とともにテンションを上げる。
いつも約束の時間より早くくる彼に合わせるように私も早く家を出る。
待ち合わせ場所には思った通りすでに彼はいて、でも今日はそんなに待たせてないんじゃないかなって声をかけたら
「弓弦……く、ん……え……」
「おはようございます、タヌキ」
「は、え、え?それ……」
弓弦くんは何のことやら、という顔をしているが、そのお顔には眼鏡がかけられていた。
眼鏡……眼鏡?!
変装、身バレ防止かとも思ったが今までそんなことをしてきたことは無い。
なんで眼鏡。かっこいい。
「おや、わたくしの顔に何か?」
「え、いや……め、めが、眼鏡……」
テレビの中で見た破壊力抜群の眼鏡弓弦くんが目の前にいて言葉を無くす私に
弓弦くんはなんでもない様子で眼鏡の縁に指をかけ軽く眼鏡を動かした。
「大変お気に召していたようなので」
「ひぇっ」
いたずらっ子のように微笑まれ、私は無事に爆散した。
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