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短編
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「あ、あの……私、はじめて……なんです……」
薄暗い部屋でベッドに腰掛け、何度か甘い口づけを交わした後、タヌキが申し訳なさそうに呟いた言葉にぞくりと腹の下が疼いた。
そうだろう、という予感はあった。手を繋ぐ時も、軽い口づけを交わす時も、きっかけは毎回巽からだった。そんな巽に、タヌキは決まって頬を染め、たどたどしく応えてくれる。男慣れしていない彼女に怖がられないよう、少しずつ距離をつめ、焦っていると思わせないよう手順を踏み、ようやくここまでこぎつけた。
「大丈夫ですよ、タヌキさん。……俺に、まかせてください」
何がそんなに不安なのか、目を伏せる彼女の頬に触れ顔を上げさせる。これから起きることへの不安と期待が入り交じったような瞳が巽を見上げてきた。
さて、これからどうしようか。
怖がられてはいけない。これは楽しいものだと、気持ちが良く、何度もしたいと思わせないといけない。あわよくば、彼女から求めるようになってほしい、と巽は考える。
自分の欲望のままに押し倒し、快楽の海へと堕としても構わないが……。長い目で見ればそれは悪手か。それに、彼女が夢を見て期待しているような行為とはかけ離れているだろう。
それならば、と頬に触れていた手を輪郭をなぞるように首筋へと流していく。たったそれだけなのにふるふると仔うさぎのように震える姿が愛しくてたまらない。
「服を脱がせても?」
一瞬、タヌキの目が見開かれ、性急すぎたかとも思ったが、泳いだ目が再び伏せられると僅かにこくんと頷きが返ってきた。少し安心しつつ、きっちり留まっている彼女のブラウスへと手をかける。ゆっくりとボタンを一つずつ外す度、彼女の白い肌が露わになっていった。
ここへ紅い花を咲かすと映えそうだと考えていると、その思考を中断させるかのように力無き手が重ねられ、行く手を阻んできた。
「っちょ、っとまって……」
胸元が見えてきた辺りでタヌキが泣きそうな声をあげる。
「……俺に触られるのは、怖いですか?」
「あ……ん、えっと、こわく、はないんだけど……あの、は、はずかしくてぇ……」
せっかく見えてきた肌を隠すように手を交差させ、懸命に「巽さんのことが怖いわけじゃないんだけど」と首を振るタヌキに、過程を飛ばして生まれたままの姿にしたい衝動に駆られる。
その行動が煽っているなどとタヌキ自身は露とも思っていないのだろう。
なんて罪深い人か、と冷静さを取り戻すため、気づかれないよう長めに息をついた。
ここで怖がらせるのは本意ではない。
「では、今日はここまでということで」
「えっ」
「え?」
「あ、えっと……」
残念だが仕方ないと外したボタンを留めていくと、タヌキの方が驚きの声を上げた。その先の言葉の予想がつかず首を傾げると、タヌキが小さな小さな声で呟いた。
「ぬ、脱がないと、できませんか……?」
気を抜けば、長いため息をつきそうだった。呆れたわけではない。脱力に近いものだ。こちらはずっと“お預け”をくらっているというのに。
不安げに見上げてくる彼女を押し倒したらどれだけ楽になれるだろうか。
「巽さん?」
「いえ、すみません。そう、ですね……脱がずともできはしますが……」
そっちの方が恥ずかしくはないだろうか。いや、経験が無いのなら人前で肌を見せる方が恥ずかしいと思うのも仕方ないかもしれない。それに、それはそれで面白い、と巽は思う。
「えぇっと……では、触っても?」
確認を取ると彼女は静かに頷く。できるだけ肌が見えないように気を使いながらブラウスの中へ右手を差し入れた。薄い腹を軽く撫で、そのまま上へと手の平を滑らせていけば、すぐに膨らみへと届いた。その形や大きさを確かめるように手を添える。
「ひゃっ」
「ふふっ、大丈夫ですか?タヌキさん」
「ん、んー……んー、だい、じょう、ぶかな?恥ずかしい、です、けど……」
それなら、とその丸い膨らみに力を加え下着越しに軽く揉む。「ひあぁ」と声が聞こえたものの、ボタンを外していた時のような制止はされなかった。下着越しなら触られているという感覚もそれほどないのだろう。もう少し大丈夫かと指をブラジャーの中へと滑らせた。
「っん、あ……」
しっとりと滑らかな肌の感触を確かめるようにゆっくりと上下へ動かした。
どこに視線をやればいいのか分からず、忙しなく瞬きを続けるタヌキの視線とぶつかれば、大丈夫だと、なんでもないことなのだと諭すように微笑みを返す。
「こういうことも、俺はしたいと思っています」
「えっ……あ、んんっ!」
膨らみの先端部、まだ軟らかく形を成していない頂きを二本の指で挟む。キュッキュッと何度か摘まみ上げると、それに合わせるように甘い声が上がってくる。
「あっ……ひゃ、んっ……た、たつみさっんっ……」
「いや、ですか?」
「やじゃない、けどっ……んっ、は、はずか、しい……うぅ」
「そうですな」
刺激を与え硬くなったそこを弾くと一際高い声を出してタヌキの体が跳ねた。でもそれ以上触ることはせずゆっくりと手を引き抜き、これで終いだとでも言うように両手を上げた。
「今日はここまでにしておきましょう」
「え、あ、でも……」
潤んだ瞳が不安げに見上げてくる。押し込んだ欲望が姿を表しそうになるのを堪え穏やかな微笑みを作った。
「無理強いをしたいわけではありませんので。それに……」
白々しく聞こえてなければいいのだが。
「これからもっと“恥ずかしいこと”をすることになるので、ね。ゆっくりと、俺たちのペースで進めていきましょう」
そう、楽しみは取っておかなければいけない。今日で全てを終わらせるには勿体ないし、全てを教え込むには時間が足りない。ゆっくりと段階を追っていこう。彼女の方から、「もっと」と自分を求めてくるように。
信用しきった微笑みを返してくる彼女の頭を撫でながら、いつかその顔を快楽で満たしてあげたい、と巽は思うのだった。
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