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短編
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目を開けると真っ白に視界が染まっていた。見覚えの無い白い壁に囲まれた部屋で、自分の趣味じゃない白いワンピースに身をつつみ、白いベッドの上で目覚めた。きょろきょろと白に染まる部屋を見回すと、見覚えのある青磁の髪色だけがひどく浮いているようだった。
「たつみ、さん……?」
部屋と同じく白いシャツとズボンを身につけている彼の名を恐る恐る呼ぶと、振り返った彼はその紫色の瞳を見開いた後、いつものように見ている者を安心させてくれる笑顔を浮かべた。
「あぁタヌキさん、良かった。目が覚めたようですな」
「うん…あの、巽さんここ、どこか……」
言い掛けて途中で止めた。巽さんが困ったように笑ったからだ。
「ごめんなさい。巽さんも分かんないですよね……」
「いえ、タヌキさんが謝るようなことでは……俺も気がついたらここに居たので」
いつの間にか服も着替えさせられていました、と状況は私と同じようだった。二人で困りましたねと言い合うが、少しだけ、一緒に居るのが巽さんなことに安心をしている。気心が知れている程ではないが、信頼はしているからだ。
「しかし、俺たちがここにいるということは何処からか運ばれたということですので……」
「そうですよね、どこかに出入り口はあるはずですよね」
それほど広くもない部屋を二人で見て回ったけれど出入り口らしい物はどこにも無かった。二人でベッドに腰掛けうーんと首を捻っても何も思い当たることは無い。何度目か分からない「困りましたね」を言い合った時、正面の壁が明滅しモニターが現れた。
「え、何?」
モニターはA4ほどの大きさで、横に3列並び、その上に横長の……どこかの鑑定団のようなモニターが1つあった。
「……全然気づかなかった」
「今現れた、ようにも見えますな」
モニター全てが真っ黒で、白い部屋の中では嫌でも目に付く。何が表示されるのか分からずつい二人で身を寄せ合った。最初に点いたのは横長のモニターだった。
「1、10……1000?」
「pは……ポイントでしょうか」
「1000ポイント?なんの点数だろう……」
詳細が分からずやっぱり二人で首を傾げていると、3つのモニターがチカチカと光り、文字が現れた。
「……名前を呼び捨て合う1p?」
「手を繋ぐ、恋人繋ぎ……も1pのようです」
現れた文字をお互いに読んでみる。でも何も起こらない。
「ふむ……実践しろ、ということでしょうか」
「とりあえず、やってみます?」
減る物でも無いし、とすぐ傍にあった巽さんの手に自分の手を重ねる。真ん中にあった“手を繋ぐ”と書かれていたモニターが点滅するとまた黒い画面に戻り、同時に横長のモニターが999pへと変わった。
「あ、減った!」
「ポイントを減らしていけば解決策が見つかるやもしれませんな……えーっと、では、タヌキ」
「えっ……あ、そっか。えっと、た、たつみ……」
呼ばれるのも呼ぶのも恥ずかしくて視線が宙を彷徨う。今度は右端のモニターが点滅を始めた。早く早く、変われ、と念じている時、巽さんが小さな声で「なんだか照れますな」と呟いたのが聞こえて「私もです……」と返す。ちらりと巽さんを見れば視線がぶつかり、二人で困ったように笑い合った。
「あ、ほら!やっぱり減ってますよ」
998pと表示されたモニターを見て、照れ隠しのように声が大きくなった。よく見れば、右端と真ん中のモニターの文字も変わっている。
「えっと、腕を組む……と肩を抱く…?」
「どうやら、一つ達成すると内容が変わるようですな。……ところで、恋人繋ぎ、というものをタヌキさんはご存じでしょうか」
「え、あぁこうやって指を……」
そこでまだ巽さんと手を繋いだままだった事に気づいた。あ、っと思い巽さんを見上げるが彼は首を傾げ私の挙動を待っている。そうだ、今から恋人をするのだ……。恥ずかしがっている場合じゃないと思い直し、指を一本一本絡めていく。
「これが恋人繋ぎです、のはず、です」
五本とも互い違いに絡めた後きゅっと握る。誰ともしたことは無いがこれで合っているはずだとモニターを見ると、正解、とでも言うように左端が点滅を始めた。これで残りは997p。
「先、長そうですね」
「ですが、こうして一つ一つこなしていけば、いつかは0になるでしょう」
ね、と至近距離で微笑まれ心臓がきゅぅと締め付けられる。残り997p。私の心臓は持ちこたえられるだろうか。
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