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短編
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カーテンもぴったりと閉じられた部屋の常夜灯をつける。仄かなオレンジ色の灯りによってぼんやりと部屋の輪郭が現れた。部屋の角に目をやれば、二人は寝れるベッドの上でもぞりと彼女が動いたのが分かった。
「すまない、起こしてしまったかね」
「……ん、へぇきです。おきてたから」
タオルケットにくるまったままボソボソと彼女は答える。
「その……体調はどうかね?痛みなんかは……」
女性特有の月の物で彼女はよく体調を崩す。痛みに耐え忍ぶ日もあれば、一日中眠っている日もある。もちろん、何事も起こらない場合もあるが、ストレスだったり、天気や寒暖差だったり、何に作用されるかは本人にも分からず事前に対処がしづらいらしい。今回は痛みがひどいようで、痛みを忘れるようにか横になっている時間が長い。
「痛い、けど、大丈夫です……」
「本当に大丈夫なら、顔の一つや二つ見せてもらいたいものだがね」
丸まったままの彼女がタオルケットの中で狼狽しているのが手に取るように分かる。一日中寝ていたので顔を見せたくないという気持ちも理解するが、顔を見れないままというのも寂しいものがある。
「絶対今、ぶすだからイヤです」
「ふん、そんなもの見慣れているのだよ」
「……宗さんと会う時は、少しでも可愛くありたいんです」
「……慰めの言葉をかけるつもりはないが、僕は君のそういった部分も含めて好ましいと思っているのだよ」
彼女よりも可愛い女性などたくさんいる。それでも僕が選んだのは、僕のために可愛くなろうと、共に美しくいようと努力を続ける彼女だ。一日中寝ていて顔が不細工になっていようとその志までもが不細工になっているとは思えない。
「顔を見せてくれる気は無いのかね、タヌキ」
名前を呼べば、ゆっくりとタオルケットを下げたタヌキと目が合う。
「宗さん、ずるい」
「何がずるいものかね。僕は顔を見せてほしいと言ったのに、君の目しか見えていないじゃないか。全く、ずるいのはどっちだ」
これ以上は見せれない、と彼女は首を振った。悪態はついたもののタヌキの目はゆるく弓なりになっていて目だけでも笑っていることが見てとれた。すこしだけ、こっそりと安心する。
「ふん、次はちゃんとその顔を僕に見せることだね」
「はぁい……ごめんなさい」
「何に謝っているか知らないけど、僕は何も気にしていないよ」
だから、ゆっくり休むと良い。ベッドの縁に座り彼女の頭を撫でてやれば、甘えるように擦り寄ってくる。
「どうせ眠れていないのだろう。少しの間こうしていてあげるからその間に眠るといい」
「……寝る前だけ?」
「僕にもやらないといけないことはあるのだよ」
「はぁい……」
「……起きて、その、君の気分が良ければ……君のしたいことをしてあげなくもない」
「え、本当ですか?」
僕の気まぐれに、彼女の声のトーンが上がる。無論、絶対とは言いかねるとも添えればそれでも楽しみだと彼女は笑う。
「ふふっなにしてもらおうかなー」
「気分が良ければの話だ。眠らないことには話にならないのだよ」
「あ、そうでした」
気づかなかったと慌てて彼女は目を瞑った。目が閉じられているのを確認して、何度かゆっくりと頭を撫でてやる。彼女の方からも、なんとか寝ようとする様子が伝わってくる。寝ようと意識して眠れるものかとも思ったが、これで気が紛れるのならなんでも良い。起きた時には、痛みが引いているといいと願った。
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