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短編
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※学校がナチュラルに共学でも許せる人向け
「ひえぇまた可愛い格好してる!」
公式のネットニュースで流れてきた紫之くんの新しい衣装を見て私は驚きの声を上げた。可愛いが売りのユニット、Ra*bitsに所属しているのだから可愛い衣装を着ていても何も問題無い。むしろ似合いすぎている。可愛い。さすが紫之くん。問題は私にある。まさか意中の人が私より可愛いから告白も何もできないでいるとは誰も思わないだろう。
「うぅ、前のフィーチャー衣装の時はカッコいい路線も着たいって言ってたのに」
だからもしも2回目があれば見たこともないカッコいいお洋服を着るのかな?なんて思っていたのに
「相変わらず私より可愛い!」
嫉妬心やら情けないやらで感情がぐちゃぐちゃになってしまった。こんなので明日学校で会ってしまったら「おはよう」の前に「ばかやろう!」と言ってしまいそうだ。完全なる八つ当たりだ。幸いクラスは別だからできるだけ顔を会わせないようにしよう。好きな人なのにわざわざ避けるなんてバカだなと自嘲しながら私は次の日を迎えた。
「おはようございます、ぽんぽこさん」
こんな時に限って会うんだよなー知ってるー。悶々として若干寝不足気味でブス3割り増しの顔を隠しながら「紫之くん、おはよう」と返す。心なしか、紫之くんの方はいつもより可愛さが3割り増しに見えてしまう。
「あの、知ってますか?ぼく、新しいフィーチャー衣装をもらったんです。それで、あの……」
あぁそうか。新しい衣装をもらったらそりゃ誰だって嬉しいものだ。でも今私はその話をしたくない。だって女の私より可愛いんだもん!紫之くんより可愛くなったら……なんて思いが更に遠のいてしまった今の私じゃ紫之くんに会わせる顔もない。
「ごめんね、今日宿題してなくて!急いでるから!」
好きな人との会話を自分から断ち切るという愚かな行為を選んだ私は教室へ走った。
会いたくない時に限って遭遇率は高く、移動教室の度に、お手洗いの度に、普段会いたくても会えないのに!と怒りたくなるほど紫之くんと遭遇してしまった。その度「ぽんぽこさん」と可愛く微笑んでくれる紫之くんに適当な理由をつけて逃げる私。好かれたいのか嫌われたいのか分からない。いや、これじゃさすがに優しい紫之くんにも嫌われるだろう、と自己嫌悪が襲う。……多分私は、こういう所も可愛くない。
次に会ったら「避けてごめんね」と言おうと決意をすれば全く会わなくなり放課後を迎えた。いや、下校すぐにクラスに行けば会えるだろう、と自分から会いに行く決心もしたというのに、こんな日に限って資料の片づけ当番を命じられる。……人生、そんなもん。
「図書室に返しといてくれ」と渡されたのはクラス人数分の国語辞典。段ボールに入っているから持てはするが、え、女子に持たす?誰か手伝ってくれそうな人、と見渡しても貴重な放課後に時間を割かれたくないのか誰も目を合わせてくれなかった。私も逆の立場ならわざわざ手伝おう、なんて言わないからその気持ちは分かる。
「はぁ……」
今日の1日を振り返り自分の情けなさにため息をつきながら私は国語辞典の入った段ボールを持ち上げる。……おっもい。よろけそうな体に力を入れ、私は図書室を目指す。
「ぽんぽこさん!」
図書室までもう半分かな、え、まだ半分もあるの?と思った頃、聞きたくなくて聞きたかった声が私を呼び止める。体勢を変えられず、首だけでなんとか振り向けば、会いたくなくて会いたかった可愛い紫之くんが息を切らして走ってきた。
「紫之くん……どうしたの?」
「はぁはぁ、ぽんぽこさんを、探してて。そしたら、図書室に向かったって聞いて」
追いかけてきちゃいました、と笑う紫之くんは両手を胸に当て息を整える。そんな仕草すらも可愛い。……可愛い。
「ふぅ……それ、図書室まで運ぶんですか?ぼくが持ちますよ」
「え、いいよ。だってこれ」
重いよ、と言う前にひょいっと段ボールを取られてしまった。
「わぁ思ったより重たい。女の子がこんなの持っちゃだめですよ」
重たい、と言いつつ紫之くんは軽々と持っている。そうだ、紫之くんは可愛い見た目とは裏腹にめちゃめちゃ力持ちなんだった。
「いやー、でも、持てないこともなかったし」
「残りはぼくが運びますね」
「えぇ、でも、悪いよ。クラスも違うし」
「こういう時は、ありがとう、が嬉しいです。それにぼく、こう見えて男の子なんですよ?」
重たい荷物を物ともせず、紫之くんは有無を言わせぬ顔で笑う。うぅ、可愛い、眩しい、好きぃ。
「……ありがとう、紫之くん」
「どういたしまして」
それから重たい荷物を紫之くんに持ってもらって2人で長い廊下を歩いて行く。あぁそうだ。言うなら今しかない。
「あ、あのね、紫之くんっ。今日はね、せっかく話かけてくれたのに、タイミング悪くて、話せなくて、その、ごめんね」
まさか好きな人が私より可愛すぎることに嫉妬をして話せなかったとは言えず、タイミングのせいにした。紫之くんはその大きな瞳をパチパチさせ首を傾げる。そんな仕草一つ一つが本当に可愛くて、謝った途端嫉妬心が芽生える私は奥歯を噛みしめる。
「そっか。タイミングが悪かったんですね。じゃあ今はタイミングが良いのかな」
「え?そ、そうだね!うん、良いタイミングだね?」
自分で言っておきながらなんのタイミングだ?と私の頭はハテナでいっぱいだ。
「あの、ぼく、ぽんぽこさんにお話したいことがあって……」
「うん?なになに?」
「その……ぼく、新しいフィーチャー衣装をもらったんです」
そういえば、朝その話をして逃げ出した自分を思い出し申し訳ない気持ちになった。あの時紫之くんは何を言いたかったんだろう。とりあえずもう一度謝っとこうと口を開きかけが紫之くんの言葉が先に発せられた。
「あの……ぽんぽこさんは、どう思いました?」
はにかみながら、ちょっと頬を染めて恥ずかしがりながら、紫之くんは私の言葉を待っている。そんなの決まってる。
「びっくりするぐらい可愛かった」
「あははっ本当ですか?良かったぁ。ぼく、ぽんぽこさんにそう言ってもらえて、とっても嬉しいです」
きっとあの写真を見た人が口を揃えて“可愛い!”と言うだろうに、紫之くんは私からの言葉を嬉しいと言ってくれた。嬉しいやら恥ずかしいやらで、天の邪鬼な私はつい言ってしまう。
「でも!紫之くんは可愛いだけじゃないじゃん!」
「ほぇっ!?」
捉え方によれば紫之くんが考えたフィーチャー衣装を否定してしまうような言葉だ。でも否定するつもりは毛頭ない。紫之くんは可愛い。だけど、それじゃなくて
「紫之くんは、かっこいいよ!」
「えぇっ!?えっと?」
「だって誰も辞典運ぶの手伝ってくれなかったのに、紫之くんは手伝ってくれたし、こんな重たい物も軽々持っちゃうぐらい力持ちだし、めちゃくちゃ気配りできるしみんなに優しいし!」
「えっえっ、えっとありがとうございます?」
「私は!紫之くんはそういう可愛いだけじゃなくってカッコいい所もいっぱいあるんだぞってみんな知った方が良いと思う!」
興奮して言い切った私は若干息切れしていて、あれ、なんか変なこと言ったかも?と思って紫之くんを見れば顔が真っ赤になってて、あ、これは確実に変なことを言ったな、とやっと気づく。
「あ、いや、あの、ただの、個人的なファンの……意見です……」
さっきの大きな声とは裏腹に、私の声は段々しぼんでいく。もう紫之くんの顔見れないし、こんなわけわかんない奴とは明日からもう話してくれなくなるかもしれない。
「あ、あのっ……う、嬉しいです!」
「え?」
「か、カッコいいって言ってもらえて」
「……あ、あーうん、まぁ、紫之くんを褒めるとしたら、可愛い、だもんね」
「それだけじゃ、ないんですけど」
とりあえず紫之くんは私のわけのわかんない主張を喜んでくれたようだ。良かった、明日からもお話をしてくれそうだ。
「あの、ぼく、がんばりますね!」
「うん、紫之くんのカッコいい所みんなに知ってもらえたらいいね!」
「えへへっ今は、そういうことでもいいです」
夕日に照らされて笑う紫之くんはやっぱり私よりも可愛くて、でも重たい段ボールをふらつくことなく運ぶ姿はかっこよくて、図書室への道のりが、もうちょっと長くても良いのにな、なんて思ってしまった。
「ひえぇまた可愛い格好してる!」
公式のネットニュースで流れてきた紫之くんの新しい衣装を見て私は驚きの声を上げた。可愛いが売りのユニット、Ra*bitsに所属しているのだから可愛い衣装を着ていても何も問題無い。むしろ似合いすぎている。可愛い。さすが紫之くん。問題は私にある。まさか意中の人が私より可愛いから告白も何もできないでいるとは誰も思わないだろう。
「うぅ、前のフィーチャー衣装の時はカッコいい路線も着たいって言ってたのに」
だからもしも2回目があれば見たこともないカッコいいお洋服を着るのかな?なんて思っていたのに
「相変わらず私より可愛い!」
嫉妬心やら情けないやらで感情がぐちゃぐちゃになってしまった。こんなので明日学校で会ってしまったら「おはよう」の前に「ばかやろう!」と言ってしまいそうだ。完全なる八つ当たりだ。幸いクラスは別だからできるだけ顔を会わせないようにしよう。好きな人なのにわざわざ避けるなんてバカだなと自嘲しながら私は次の日を迎えた。
「おはようございます、ぽんぽこさん」
こんな時に限って会うんだよなー知ってるー。悶々として若干寝不足気味でブス3割り増しの顔を隠しながら「紫之くん、おはよう」と返す。心なしか、紫之くんの方はいつもより可愛さが3割り増しに見えてしまう。
「あの、知ってますか?ぼく、新しいフィーチャー衣装をもらったんです。それで、あの……」
あぁそうか。新しい衣装をもらったらそりゃ誰だって嬉しいものだ。でも今私はその話をしたくない。だって女の私より可愛いんだもん!紫之くんより可愛くなったら……なんて思いが更に遠のいてしまった今の私じゃ紫之くんに会わせる顔もない。
「ごめんね、今日宿題してなくて!急いでるから!」
好きな人との会話を自分から断ち切るという愚かな行為を選んだ私は教室へ走った。
会いたくない時に限って遭遇率は高く、移動教室の度に、お手洗いの度に、普段会いたくても会えないのに!と怒りたくなるほど紫之くんと遭遇してしまった。その度「ぽんぽこさん」と可愛く微笑んでくれる紫之くんに適当な理由をつけて逃げる私。好かれたいのか嫌われたいのか分からない。いや、これじゃさすがに優しい紫之くんにも嫌われるだろう、と自己嫌悪が襲う。……多分私は、こういう所も可愛くない。
次に会ったら「避けてごめんね」と言おうと決意をすれば全く会わなくなり放課後を迎えた。いや、下校すぐにクラスに行けば会えるだろう、と自分から会いに行く決心もしたというのに、こんな日に限って資料の片づけ当番を命じられる。……人生、そんなもん。
「図書室に返しといてくれ」と渡されたのはクラス人数分の国語辞典。段ボールに入っているから持てはするが、え、女子に持たす?誰か手伝ってくれそうな人、と見渡しても貴重な放課後に時間を割かれたくないのか誰も目を合わせてくれなかった。私も逆の立場ならわざわざ手伝おう、なんて言わないからその気持ちは分かる。
「はぁ……」
今日の1日を振り返り自分の情けなさにため息をつきながら私は国語辞典の入った段ボールを持ち上げる。……おっもい。よろけそうな体に力を入れ、私は図書室を目指す。
「ぽんぽこさん!」
図書室までもう半分かな、え、まだ半分もあるの?と思った頃、聞きたくなくて聞きたかった声が私を呼び止める。体勢を変えられず、首だけでなんとか振り向けば、会いたくなくて会いたかった可愛い紫之くんが息を切らして走ってきた。
「紫之くん……どうしたの?」
「はぁはぁ、ぽんぽこさんを、探してて。そしたら、図書室に向かったって聞いて」
追いかけてきちゃいました、と笑う紫之くんは両手を胸に当て息を整える。そんな仕草すらも可愛い。……可愛い。
「ふぅ……それ、図書室まで運ぶんですか?ぼくが持ちますよ」
「え、いいよ。だってこれ」
重いよ、と言う前にひょいっと段ボールを取られてしまった。
「わぁ思ったより重たい。女の子がこんなの持っちゃだめですよ」
重たい、と言いつつ紫之くんは軽々と持っている。そうだ、紫之くんは可愛い見た目とは裏腹にめちゃめちゃ力持ちなんだった。
「いやー、でも、持てないこともなかったし」
「残りはぼくが運びますね」
「えぇ、でも、悪いよ。クラスも違うし」
「こういう時は、ありがとう、が嬉しいです。それにぼく、こう見えて男の子なんですよ?」
重たい荷物を物ともせず、紫之くんは有無を言わせぬ顔で笑う。うぅ、可愛い、眩しい、好きぃ。
「……ありがとう、紫之くん」
「どういたしまして」
それから重たい荷物を紫之くんに持ってもらって2人で長い廊下を歩いて行く。あぁそうだ。言うなら今しかない。
「あ、あのね、紫之くんっ。今日はね、せっかく話かけてくれたのに、タイミング悪くて、話せなくて、その、ごめんね」
まさか好きな人が私より可愛すぎることに嫉妬をして話せなかったとは言えず、タイミングのせいにした。紫之くんはその大きな瞳をパチパチさせ首を傾げる。そんな仕草一つ一つが本当に可愛くて、謝った途端嫉妬心が芽生える私は奥歯を噛みしめる。
「そっか。タイミングが悪かったんですね。じゃあ今はタイミングが良いのかな」
「え?そ、そうだね!うん、良いタイミングだね?」
自分で言っておきながらなんのタイミングだ?と私の頭はハテナでいっぱいだ。
「あの、ぼく、ぽんぽこさんにお話したいことがあって……」
「うん?なになに?」
「その……ぼく、新しいフィーチャー衣装をもらったんです」
そういえば、朝その話をして逃げ出した自分を思い出し申し訳ない気持ちになった。あの時紫之くんは何を言いたかったんだろう。とりあえずもう一度謝っとこうと口を開きかけが紫之くんの言葉が先に発せられた。
「あの……ぽんぽこさんは、どう思いました?」
はにかみながら、ちょっと頬を染めて恥ずかしがりながら、紫之くんは私の言葉を待っている。そんなの決まってる。
「びっくりするぐらい可愛かった」
「あははっ本当ですか?良かったぁ。ぼく、ぽんぽこさんにそう言ってもらえて、とっても嬉しいです」
きっとあの写真を見た人が口を揃えて“可愛い!”と言うだろうに、紫之くんは私からの言葉を嬉しいと言ってくれた。嬉しいやら恥ずかしいやらで、天の邪鬼な私はつい言ってしまう。
「でも!紫之くんは可愛いだけじゃないじゃん!」
「ほぇっ!?」
捉え方によれば紫之くんが考えたフィーチャー衣装を否定してしまうような言葉だ。でも否定するつもりは毛頭ない。紫之くんは可愛い。だけど、それじゃなくて
「紫之くんは、かっこいいよ!」
「えぇっ!?えっと?」
「だって誰も辞典運ぶの手伝ってくれなかったのに、紫之くんは手伝ってくれたし、こんな重たい物も軽々持っちゃうぐらい力持ちだし、めちゃくちゃ気配りできるしみんなに優しいし!」
「えっえっ、えっとありがとうございます?」
「私は!紫之くんはそういう可愛いだけじゃなくってカッコいい所もいっぱいあるんだぞってみんな知った方が良いと思う!」
興奮して言い切った私は若干息切れしていて、あれ、なんか変なこと言ったかも?と思って紫之くんを見れば顔が真っ赤になってて、あ、これは確実に変なことを言ったな、とやっと気づく。
「あ、いや、あの、ただの、個人的なファンの……意見です……」
さっきの大きな声とは裏腹に、私の声は段々しぼんでいく。もう紫之くんの顔見れないし、こんなわけわかんない奴とは明日からもう話してくれなくなるかもしれない。
「あ、あのっ……う、嬉しいです!」
「え?」
「か、カッコいいって言ってもらえて」
「……あ、あーうん、まぁ、紫之くんを褒めるとしたら、可愛い、だもんね」
「それだけじゃ、ないんですけど」
とりあえず紫之くんは私のわけのわかんない主張を喜んでくれたようだ。良かった、明日からもお話をしてくれそうだ。
「あの、ぼく、がんばりますね!」
「うん、紫之くんのカッコいい所みんなに知ってもらえたらいいね!」
「えへへっ今は、そういうことでもいいです」
夕日に照らされて笑う紫之くんはやっぱり私よりも可愛くて、でも重たい段ボールをふらつくことなく運ぶ姿はかっこよくて、図書室への道のりが、もうちょっと長くても良いのにな、なんて思ってしまった。
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