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短編
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「なぁに?どうしたの藍良ちゃん」
お化粧をしていく様子をじっと見つめていると、気付いた彼女に不思議そうに微笑まれた。
失礼だとは思うけど、地味系だった顔が見る見る内にアイドルに変わっていく様子を見るのが楽しくて、つい見続けちゃったんだけど。見過ぎちゃったかな。
「女の子はいいよねー」
口からポロリと出た言葉に、すっかりアイドル顔になっちゃった彼女は首を傾げる。
その仕草、テレビだったらワイプで抜かれるよぉ。
「お化粧したらぜんぜん雰囲気変わるんだもん」
いいなぁ。みにくいアヒルの子が白鳥に大変身じゃん。
あ、君のことがみにくいってことじゃないよ!
「藍良ちゃんもしたらいいんじゃない?」
クスクス笑う口元がツヤツヤピンクに光ってる。
瞬きをすれば長いまつげが揺れて、青みがかったアイラインが姿を表す。
アイシャドウのラメなんて、アイドルの輝きそのものなんじゃないのかな。
なぁんてつまんないこと考えてみたり。
「男が塗ってもおかしいだけでしょー」
男のアイドルだって化粧をするようになったと言っても何度もマスカラを塗って太いまつげにしたり、きらきらアイシャドウを瞬かせたりするようなアイドルは極一部だ。
それに、アルカロイドはそういうグループじゃない・・・と思うけど、あれなんかみんな意外と似合うかも?
「似合うと思うよ?」
やっぱり君もそう思う?じゃなくて
「べつにお化粧がしたいわけじゃない、ん、だけど」
お化粧をしたいわけじゃない、じゃあどうしたいのか。
脳内で自問自答をすればボヤボヤした考えが段々姿を表してくる。
「……俺も、変わりたいなって」
考えがまとまるまで待っていてくれた彼女はただただニコニコ笑ってる。
あぁいいなぁ、俺の大好きなアイドルだ。
そよ風に揺れる髪も、瞬きの度に光る瞳も、形良く三日月を作る唇も。
雑誌で何度も何度も何度も憧れ眺めてきたアイドルだ。
俺もそんなアイドルになりたい。近づいてるのかなぁ。
「変わりたいならー、やっぱり見た目が一番だよ?」
首を傾げて上目遣い。
大好きなアイドルが目の前にいて何気ない仕草にドキドキしちゃう。
「だからさぁ、男がしてもおかしいだけだってー」
もしかして俺のこと男と思ってないのー?なんて文句を言えば、
そんなことないよー、とクスクス笑う仕草さえも可愛くて、何を言われても許してしまいそう。
「でもねぇ藍良ちゃん」
ビューラー、マスカラ、アイブロウ、シャドウにハイライト。
言い出したら切りがないお化粧道具を一つ一つ大事にポーチへと仕舞い込む手がぴたりと止まった。
「やってみないことには分かんないよ?」
机の上に残っていた銀色に輝くソレを俺に差し出す。
受け取って良いものかどうか決めあぐねていたけど、彼女は変わらずニコニコしていて
瞬きの度にまつげが羽ばたいて瞼はキラキラしていて唇なんかはツヤツヤで。
いいなぁ俺もなりたいなぁなんて思っていたら気付いた時には受け取っていた。
「じゃあ私、お仕事行くねー」
満足したのか極上の笑顔を残して彼女は去っていった。
残った俺の手元にはティントリップ。
塗ったら俺は何色になるのかなぁ。
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