普通になれない僕たちは
酒を舐めながらたわいもない話を続ける。秋一が訪れた国の話、春樹が取り扱ったメーカーの話、大学時代の友達の話。
「ちょっとトイレ」
誘われるがままにグラスを開けて行き、酔いもだいぶ回っていた。トイレに立ち上がったはずの秋一があっという間に戻ってきたので、ずいぶん早かったなと声をかけようとしたところで、別の人物だと気付いた。
「しゅう君のオトモダチ?」
エアクオートを作りながら横の席に座った男は、見たこともない他人だ。誰ですか?という間抜けな質問をしたことですら許される、本当に赤の他人であった。それに、“オトモダチ”の言い方もひどく引っかかる。
「“オトモダチ”かどうかは分からないけど、普通に大学時代の友達だけど?」
「え、そうなの?本当に何にもない友達なの?」
「なにその言い方?今は仕事を一緒にしているだけのただの友達」
「そうなんだ……あまりにほら、タイプが似てるから」
「タイプ?」
「なに話してんの?」
突然割り込んできた男が気まずそうに口籠もっている横から、ようやく本人が登場した。
「しゅう君、久しぶり。さっき見掛けて声掛けようかなって思ってたんだけど、先に彼に声掛けちゃって」
「えっと……?」
「ケイだよ、覚えてるかな、一年ぐらい前に会ってた」
「ああ、ケイ君か。またいい男になったんじゃないの」
適当に流している、というのが長い付き合いの春樹にはよく分かったが、ケイはひどく嬉しそうに笑っている。果たして二人の関係はなんだったのか、それは彼が言いかけた言葉を思い出すとすぐに見当がついた。確かに、自分と彼のタイプは似ているのだ。なんとなくの雰囲気というか、背格好や短い黒髪、小さな顎のわりに太い首。きつそうな一重。
「彼、そういう友達じゃないんだね」
「そうだよ、大学の友達。でもまあ、俺がどっちでもいけるのは知ってるから」
そうなの、という特に驚きもない返事をもらう。
「彼もしゅう君の好みど真ん中だから……あ、」
話している途中に思いついたのか、口元を手で覆って再度言葉を飲み込んで口元に手を当てて目を丸くする。一人で納得したように何度も頷いた後に、秋一の肩を叩いて何かを耳に囁いて立ち去る。番号は変わっていないから、と添えるのを忘れずに。
「も、元カレ?」
「元カレというか、まあ何度か寝た相手って感じかな」
ふうん、と返事をしてぼうっと思い出す。お互い初めてだったのに、秋一がものすごい忍耐力で耐えて終わった初体験。慣れてきたころ、イニシアチブを握って散々春樹のモノを搾り取った後に、ベッドにへたり込んで気怠げに笑う様子が急に愛おしくなってキスしたこともあった。体力が有り余っているせいで、お互いに無茶だろうという回数抱き合って、シーツ越しに安スプリングまで体液が染み込んだのではないかと慌てて確認したこともあった。
「ちょっと可愛い感じだったけど、彼みたいな子が好みなわけ?」
無性にイライラする。関係性に口を出せる権利があるわけではないことは分かっているのに。
「まあ、結構見た目は好みかな」
「面食い」
「まあ、春もイケメンだし仕方ないでしょ。一途なフリしとこと思ったのに、ケイのせいで台無しだよ」
肘をついて、掌に顎を埋めながら呟く。拗ねている様子が思わず可愛いなあと思いながらグラスを上げて追加の要求をする。
「でもまあ、うしろは秋しか知らないよ、」
「え」
「ね?一途じゃない?」
素直にそうだな、と頷いてしまった。願掛けみたいなもんだったのに、馬鹿にはできないねと笑いながら言う。
「ちょっとトイレ」
誘われるがままにグラスを開けて行き、酔いもだいぶ回っていた。トイレに立ち上がったはずの秋一があっという間に戻ってきたので、ずいぶん早かったなと声をかけようとしたところで、別の人物だと気付いた。
「しゅう君のオトモダチ?」
エアクオートを作りながら横の席に座った男は、見たこともない他人だ。誰ですか?という間抜けな質問をしたことですら許される、本当に赤の他人であった。それに、“オトモダチ”の言い方もひどく引っかかる。
「“オトモダチ”かどうかは分からないけど、普通に大学時代の友達だけど?」
「え、そうなの?本当に何にもない友達なの?」
「なにその言い方?今は仕事を一緒にしているだけのただの友達」
「そうなんだ……あまりにほら、タイプが似てるから」
「タイプ?」
「なに話してんの?」
突然割り込んできた男が気まずそうに口籠もっている横から、ようやく本人が登場した。
「しゅう君、久しぶり。さっき見掛けて声掛けようかなって思ってたんだけど、先に彼に声掛けちゃって」
「えっと……?」
「ケイだよ、覚えてるかな、一年ぐらい前に会ってた」
「ああ、ケイ君か。またいい男になったんじゃないの」
適当に流している、というのが長い付き合いの春樹にはよく分かったが、ケイはひどく嬉しそうに笑っている。果たして二人の関係はなんだったのか、それは彼が言いかけた言葉を思い出すとすぐに見当がついた。確かに、自分と彼のタイプは似ているのだ。なんとなくの雰囲気というか、背格好や短い黒髪、小さな顎のわりに太い首。きつそうな一重。
「彼、そういう友達じゃないんだね」
「そうだよ、大学の友達。でもまあ、俺がどっちでもいけるのは知ってるから」
そうなの、という特に驚きもない返事をもらう。
「彼もしゅう君の好みど真ん中だから……あ、」
話している途中に思いついたのか、口元を手で覆って再度言葉を飲み込んで口元に手を当てて目を丸くする。一人で納得したように何度も頷いた後に、秋一の肩を叩いて何かを耳に囁いて立ち去る。番号は変わっていないから、と添えるのを忘れずに。
「も、元カレ?」
「元カレというか、まあ何度か寝た相手って感じかな」
ふうん、と返事をしてぼうっと思い出す。お互い初めてだったのに、秋一がものすごい忍耐力で耐えて終わった初体験。慣れてきたころ、イニシアチブを握って散々春樹のモノを搾り取った後に、ベッドにへたり込んで気怠げに笑う様子が急に愛おしくなってキスしたこともあった。体力が有り余っているせいで、お互いに無茶だろうという回数抱き合って、シーツ越しに安スプリングまで体液が染み込んだのではないかと慌てて確認したこともあった。
「ちょっと可愛い感じだったけど、彼みたいな子が好みなわけ?」
無性にイライラする。関係性に口を出せる権利があるわけではないことは分かっているのに。
「まあ、結構見た目は好みかな」
「面食い」
「まあ、春もイケメンだし仕方ないでしょ。一途なフリしとこと思ったのに、ケイのせいで台無しだよ」
肘をついて、掌に顎を埋めながら呟く。拗ねている様子が思わず可愛いなあと思いながらグラスを上げて追加の要求をする。
「でもまあ、うしろは秋しか知らないよ、」
「え」
「ね?一途じゃない?」
素直にそうだな、と頷いてしまった。願掛けみたいなもんだったのに、馬鹿にはできないねと笑いながら言う。
