硲道夫
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私は硲先生が好きだった。
クラスの他の子たちは、あの先生は真面目すぎ、頭が堅い、ズレてるって笑ってたけど、私は一度も先生のことを笑ったことはない。
それに、そういいながらもみんなが硲先生のことを心の内では信頼していて、愛おしい人だと思っていることも知っていた。
「私は今月一杯で退職し、アイドルを目指すことにした。」
硲先生が教壇でそう宣言したとき、私はめまいがして倒れてしまいそうだった。
クラスの空気は、1分ほどの沈黙、後にざわめきが広がり、1人の笑い声を皮切りに爆笑の渦へと変わっていった。
「いや、せんせーさすがに無理でしょ!」
「そんな無表情で歌ったり踊ったりするのー?」
揶揄するような笑い、でもそれはみんなの心の中で、先生にいなくなってほしくないという気持ちが産んだ引き止めの言葉で。
「アイドルの言葉こそが、君たちに届く一番の声だと気付かされた。私は君たちを導く指導者として、最善の道を進みたい」
そういう硲先生の目は、初めて見る希望の光を捉えたというようにきらきら光っていて、帰りのホームルームの窓の外に広がる少し日が傾いた空の色をぴかりと反射した。
その光に射抜かれたように、私は立ち上がっていた。
「先生!」
勢いよく立ち上がったせいで椅子が倒れ、衝撃音に教室が一気に静まり返る。
普段空気のような私の存在が、このクラスになって初めてクラス全員の視線を集めた。
「先生は、ほんとに教師に向いてないし、意味わかんないし、今すぐ辞めるべきだと思います。私、中学までは数学得意だったのに、高校になって先生に教わってから全然わかんなくて嫌いになりました。そんな教えるの下手な先生なら、アイドルだってなんだってなっちゃえばいいと思います!」
きっと硲先生の瞳を睨みつけ、なんとか震える声で言い放った。初めて、硲先生に向けて話しかけることができたのが、この時だった。
呆然とした空気のあとに、またざわめき出し今度は私を責め立てる声が上がる
「お前何言ってんの?優等生ぶってるくせに成績悪いからって先生のせいにしてるだけじゃん!」
「硲先生めっちゃ教えるの上手いし!辞めてほしくないし!」
先生を揶揄する声は消え、引き止める言葉と私への非難が教室を渦巻き出す。辞めないで、卒業までいて、という声とお前が辞めろ、帰れという声。
「皆、落ち着きなさい。」
硲先生のぴしゃりとした声で、一瞬でまた教室は静まり返った。
「皆の気持ちは分かった。そこまで私のことを好意的に思ってくれて、本当にありがとう。しかし私は彼女のいう通り、指導者として不十分な部分があった。より理想的な指導者を目指すために、アイドルという道を選びたいと思っている」
硲先生のひやりとしていて情熱に輝く瞳が、私に向けられる
「塩屋くん、君に教師として満足する指導が出来ず、本当に申し訳ない。これからはアイドルとして、最高の指導者を目指す。そこできっと君にも満足行く未来を見せられるよう、努力しよう。」
最初で最後、先生の瞳が声が私に向けられた、ただそれだけで涙が出そうだった。
私だけのアイドルだった、もう二度と彼の視界に入ることはできない、私が世界一大好きな国民的アイドルとの出会いの瞬間だった。
クラスの他の子たちは、あの先生は真面目すぎ、頭が堅い、ズレてるって笑ってたけど、私は一度も先生のことを笑ったことはない。
それに、そういいながらもみんなが硲先生のことを心の内では信頼していて、愛おしい人だと思っていることも知っていた。
「私は今月一杯で退職し、アイドルを目指すことにした。」
硲先生が教壇でそう宣言したとき、私はめまいがして倒れてしまいそうだった。
クラスの空気は、1分ほどの沈黙、後にざわめきが広がり、1人の笑い声を皮切りに爆笑の渦へと変わっていった。
「いや、せんせーさすがに無理でしょ!」
「そんな無表情で歌ったり踊ったりするのー?」
揶揄するような笑い、でもそれはみんなの心の中で、先生にいなくなってほしくないという気持ちが産んだ引き止めの言葉で。
「アイドルの言葉こそが、君たちに届く一番の声だと気付かされた。私は君たちを導く指導者として、最善の道を進みたい」
そういう硲先生の目は、初めて見る希望の光を捉えたというようにきらきら光っていて、帰りのホームルームの窓の外に広がる少し日が傾いた空の色をぴかりと反射した。
その光に射抜かれたように、私は立ち上がっていた。
「先生!」
勢いよく立ち上がったせいで椅子が倒れ、衝撃音に教室が一気に静まり返る。
普段空気のような私の存在が、このクラスになって初めてクラス全員の視線を集めた。
「先生は、ほんとに教師に向いてないし、意味わかんないし、今すぐ辞めるべきだと思います。私、中学までは数学得意だったのに、高校になって先生に教わってから全然わかんなくて嫌いになりました。そんな教えるの下手な先生なら、アイドルだってなんだってなっちゃえばいいと思います!」
きっと硲先生の瞳を睨みつけ、なんとか震える声で言い放った。初めて、硲先生に向けて話しかけることができたのが、この時だった。
呆然とした空気のあとに、またざわめき出し今度は私を責め立てる声が上がる
「お前何言ってんの?優等生ぶってるくせに成績悪いからって先生のせいにしてるだけじゃん!」
「硲先生めっちゃ教えるの上手いし!辞めてほしくないし!」
先生を揶揄する声は消え、引き止める言葉と私への非難が教室を渦巻き出す。辞めないで、卒業までいて、という声とお前が辞めろ、帰れという声。
「皆、落ち着きなさい。」
硲先生のぴしゃりとした声で、一瞬でまた教室は静まり返った。
「皆の気持ちは分かった。そこまで私のことを好意的に思ってくれて、本当にありがとう。しかし私は彼女のいう通り、指導者として不十分な部分があった。より理想的な指導者を目指すために、アイドルという道を選びたいと思っている」
硲先生のひやりとしていて情熱に輝く瞳が、私に向けられる
「塩屋くん、君に教師として満足する指導が出来ず、本当に申し訳ない。これからはアイドルとして、最高の指導者を目指す。そこできっと君にも満足行く未来を見せられるよう、努力しよう。」
最初で最後、先生の瞳が声が私に向けられた、ただそれだけで涙が出そうだった。
私だけのアイドルだった、もう二度と彼の視界に入ることはできない、私が世界一大好きな国民的アイドルとの出会いの瞬間だった。
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