第三章
夢小説設定
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静まり返った途端、大下さんは痺れを切らしたかの様に低い声で東署の人に顔を向けて言った。
「ふざけてんのか…?」
「別にふざけてなんかいませんよ。僕は大下刑事には聞いていません。そちらの婦人警官さんに聞いてるんです」
相手に向いてた視線が突然こちらに向かれる。気まずい。この誘いを断りにくい空気が出来上がったしまったみたいで頭が混乱する。どのように返事すればいいか迷っていると大下さんが救いの手を差し伸べてくれた。鼻でフッと笑って話を続けた。
「男は女を困らしちゃ駄目じゃないかな」
余裕そうに告げた大下さんの大人の落ち着きが私の心をまた騒がせる。
「だから僕はあなたには……ハー、分かりました。じゃあ大下さん勝負しましょう」
「勝負?この俺に勝負か…。いい度胸じゃねーか、やってやるよ」
「ではこの件を東署が先に解決したら僕が貴女の事を貰います。ただし港署が先に解決した場合は潔く諦めます。それでどうですか?大下刑事?」
皮肉そうに言う相手に段々とこちらもイライラしてくる。人を物のように貰うとか言うんじゃねーよって。でもそれよりも大下さんの返事次第で決まってしまう。こんな勝負辞めさせて私はこんな東署の嫌味野郎のところから早く離れたくて仕方ない。でも私が願っていた返事とは逆に大下さんはその返事に簡単にノッてしまう。
「ああ。ノッてあげようじゃないの」
「よし、これで_」
「ちょっ!ちょっと待って!私はまだ一言も貴方の方にいっても良いなんて言ってない!」
「貴女がなんと言おうと勝負ですから」
「ねぇ大下さん…!」
不安になって大下さんを見つめてるとサングラスの奥の目が片方閉じ、ウインクしてきた。そして優しく頭を撫でられると同時に何故か不思議と安心感が湧く。
「大丈夫。何が何でも名前ちゃんの事はアイツにぜってぇ渡さないから」
本当に…本当にそんな気がしてきちゃって大丈夫だよねと自分の心に言い聞かせた。きっと大下さんなら守ってくれる。
***
早速署に帰ったあと、ハンドルについていた指紋や車のドアについてた指紋をとったものを直ぐ様港署で優秀な鑑識係の安田さんに頼んだ。課長に報告するため課長席の周りを捜査課みんなで囲む。そして報告したのと同時に課長に東署と合同捜査になったと言われた。取りあえず報告し終え鑑識からの結果を待つため席に着く。
「ねねねねね名前ちゃん、東署の奴に告白されたのってホントなの!?」
「まぁ一様…てか誰から聞いたんですか?」
「鈴江さんから」
「あ、やっぱり」
「名前さん、でもどうするんですか?大下さんがいるのに告白受けちゃうんですか?負けたら」
「そんなの分からないに決まってるでしょ!私だって万が一のことがあったらどうしようか考えてるんだから」
「モテる女は大変ねぇ〜、ね?瞳ちゃん」
「ええ。ホントに」
でも今は港署が東署に勝つ事を信じるしかない。万が一の事があっても…私はあの人の所に行く気はないから。私の行く場所は…大下さんのもとがいい。
そして捜査課の様子は__
「東署には負けねぇぞ…」
カタカタと拳を震わせる。そんな様子を見ていた鷹山は大下の肩に手を置いた。
「まぁ大丈夫だろ。こういう現金輸送車の事件なんか圧倒的に
「ああ。それに名前ちゃんが懸っているんだ、簡単に負けるわきゃいかねぇさ」
今まで以上にこんなに女に夢中になってる相棒を見た鷹山は心の中で早く告っちまえばいいのになんて思ったが決して口にはしなかった。二人のペースというのがあるだろうから。
そして暫く、捜査課も少年課もどこか落ち着かない様子で鑑識の結果を待っていたらとうとう安田さんが急々と刑事部屋に入り、課長席の前に立った。
「課長、結果が出ました。指紋はこの二人に一致したので犯人はこの二人で間違いないでしょう」
鑑識から結果が出たらしく、前科がある犯人達だった。前科を見ても銀行強盗などお金が関わることばかりで厄介な殺人事件とかは無さそうで安心した。しかし拳銃は所持してるみたいだが。
「よし。瞳ちゃん、これコピーして鷹山たちに渡してくれ」
「はい!」
「とりあえずこの二人の家と会社や近所の人たちにあたってみてくれ、よろしく頼むよ」
「「了解!」」
「それに大下!くれぐれも前みたいに東署に迷惑をかけるんじゃないぞ。また迷惑かけたら謹慎だからな」
「迷惑かけなきゃいいんでしょ!分かってますよ、そんなこと」
そう言って早々と去っていきそうな大下さんに急いで私は声をかけた。
「大下さん!私も行きます!」
大下さんは私の声に止まって振り返った。ニコリと笑い頷く。
「よぉーし、東署には負けねーぞ!!」
「「おー!!」」
大下さんの一声が港署に響き渡る。何故かその声をみんな反応しノッた。団結力はこういうときだけしかあまり見れないけど、でもこういう空気感は大好きだ。近藤課長は不思議そうにしていたが、すぐに笑顔に戻った。
「大下の言う通り、東署には負けるなよ」
「よーし、港署諸君!名前くんは絶対東署の奴には渡さないぞ!」
「「おー!!」」
「おし行くぞ!」
ナカさんや吉井さん、吉田さんに谷村さんにトオルくんまでもがノッてきた。これならきっと東署なんかには負けない気がしてきて自然に口角が上がった。少し照れくささもあったが今は事件解決の為に捜査に行かなくてはと思い、大下さんについて行った。少しこの大下さんの大きな背中に見惚れていたのは私だけの秘密。