第二章
夢小説設定
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今朝。出勤すると物凄い速さでカオルさんがこちらに向かってきた。私は少したじろぎ、身を硬直させた。
「ねぇねぇ!名前ちゃん!昨日は大丈夫だった?!」
心配してるのか面白がってるのか表情ではうまく読み取れない。まぁカオルさんの事だから面白がってる方が圧倒的に可能性は高いだろう。
「ええ。大丈夫でしたよ。てかなんというか…」
一度出しかけた言葉をしまい込む。昨日の事ををわざわざ言うまでもないから。
「あは、まぁとにかく大丈夫なんで!安心してくださいね」
カオルさんの肩にポンポンと手を置いて安心させる。そうすると
「ん〜、なんかあれは良い事があったご様子ね」
うんうんと一人で納得するカオルさん。とりあえず早く席につきたい私はカオルさんの横をすり抜けて、椅子に腰かけた。チラリと捜査課の大下さんの席へ目を向ける。だが誰も座っていなく、署内はガラガラ。やっぱり少年課よりも沢山仕事がある捜査課は大変だなとつくづく思った。でも珍しく警ら課も全然いなく、それほど大きな事件があったのかと思うと心配だ。警ら課の所定位置に目を向けて暫く見てると、何やらぴょんぴょん跳ねて誰かを探している少年がいたのだ。カオルさんはトイレか何処かに行って居なくなってるし。だから私は席を立ち、その少年の元に向かう。
「どうしたの、ボク?なんかあった?」
しゃがみこんで少年の目の位置に合わせる。すると少年は小さく頷いた。
「そっか。じゃあお姉さんが話聞くから着いてきてね」
もう一度少年は頷いて、素直に私の指示に従った。机の引き出しに入っている事情聴取の紙を一枚取り出し、少年の座ってる席に私も着いた。
「まず最初にお名前と住所と年齢、教えてくれるかな?」
「…名前は笹木昇で年は小学2年生の7歳。住所は分かんない。」
「昇くんね、それで年齢は7歳で小学2年生…っと」
言われた事を口に出し往復してペンを走らせる。
「昇くん、お母さんかお父さんは?」
そう聞くと首をフルフルと横に振って、青ざめた顔のように見えた。そっかと言い、次は何を聞けばいいか悩んでいると大下さんたちが帰ってきた。
「お帰りなさい」
「名前ちゃん、その子どもは?」
「あ、ちょっとさっき…」
私が言いかけた所で昇くんは直ぐ様椅子から降りて、私のもとにしがみついてきた。その行動で不審に思った。私だけでなく、多分大下さんも気になったはずだ。
「ねぇ、昇くん、昨日の夜何食べた?」
首を振ったから続いて
「じゃあ昨日のお昼は?」
と聞いたがまた首を振って否定した。そこで確信がつく。この子はきっと、親に虐待されていると。そして多分その虐待している人は父親って事も。極端に男性から避けて、女の私のもとに駆け寄ってくると言うことは多分間違えはないだろう。
「昇くん、この後、お昼どっか食べに行こっか!お腹空いたでしょ?」
大きく頷くこの子に若干胸が痛くなる。それほど食べさせてもらっていないのか。
「じゃあ、喉も乾いたと思うからジュース飲んだ後行こうね。ちょっと用意してくるから待ってて」
そう告げて私は瞳ちゃんに頼んだ。そのすぐ傍にいた大下さんが昇くんについて小声で聞いてきた。
「あの子ども、なんかある感じか?」
「多分。大下さんがさっき話しかけた時、直ぐ様私のもとに来たじゃないですか?」
「…妬けるな」
「今はそういう事じゃないでしょ!」
「まぁまぁ。それで?」
「あ、だから男の人には近づかないって事はもしかしたら父親に虐待されてる可能性が高いなと。」
「なるほどね。それは言えてる」
「ねぇ大下さん」
「ん?」
「笹木って人、前科があるか調べてくれませんか?もしかしたら銀星会の可能性もあるじゃないですか」
「ササキの漢字は?」
「笹に木です。笹の葉の方」
「…ふーん。笹木って…どっかで聞いたことあるな」
「とにかく、調べてくれませんか?」
「こっちのヤマが片付いたらな」
「そんなー…」
「まぁ取りあえず名前ちゃんが側に居てやれば大丈夫」
「でもずっとは居れないじゃないですか。子どもだし…」
「それもそうだ。あの子から情報を聞かなきゃ
言葉を詰まらせた。確かにあの子から父親の名前や母親の話を聞かないと何も始まらないし解決にも至らない。
「私が…頑張って口を割るので、そうしたら協力してくれますか?」
「その内容によってかな」
「…そうですよね」
「フッ、冗談。日頃から世話かけてるし協力するよ、もしかしたら捜査課に関係ある話かもしれないしな」
「ありがとうございます!頑張ります!」
「おう!その意気だ!」
大下さんとやり取りが終わった後、昇くんを見ると瞳ちゃんが出したオレンジジュースを全て飲み終えていた。私はじゃあと言って大下さんのもとから離れ、昇くんのもとに行く。
「じゃあ行こっか!何食べたい?なんでもいいよ〜」
「ハンバーグ食べたい」
「お、ハンバーグかぁ〜!いいね、じゃあそうしよっか!」
こうして署から出て、覆面パトカーに乗り昇くんの情報を探るべく、レストランへ向かったのだった__
一方その頃の大下さんたちは__
「なぁタカ。銀星会に笹木ってやつ居なかったか?」
「笹木って笹の葉の笹木の事か?」
「そうそう」
「確か…横羽組のやつだ」
「そういやこの件って横羽組に関係してるよな」
「まさかあの坊主、ヤクザの笹木英二の息子…!」
「まさに犬も歩けば棒に当たる」
「少年課と合同捜査だな」
「おしっ、名前ちゃんに伝えとくわ」
「よせ、ユージ。名前の隣にはその息子が居るんだ。話を聞かれたらショック受けるに決まってるだろ」
「…それもそうだな。とりあえず名前ちゃんが署に戻ってきたら伝えるか」
「ああ。その方がいいだろうな」
「でもタカ…」
「ん?」
「もし仮に刑事と息子が一緒にいるのを笹木が見たら…口封じの為に二人して消されちまうんじゃねーか?簡単に息子に対して虐待してるって事は別に息子を殺しても痛くも痒くもねぇーだろうしな」
「そーなったら…」
二人は課長にも何も言わずに、すぐさま署から飛び出した。
「おい!大下!鷹山!まったく…どいつもこいつも…」
薄っすらとその二人の会話を聞いていた他の捜査課も危機を感じ取り、署から二人に続いて飛び出した。ただ近藤課長は呆れた顔して何も言わず、椅子に座った。