第一章
夢小説設定
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何故か突然緊張してきた。このあと、今流れてる曲が終わって次の曲が流れたら勇次さんと…チークダンスだ。今は私よりも大人っぽい女性と男性が二人ずつ身体を寄せ合って踊っている。その距離の近さに、この後私達も…と思うといても経っても居られなくなり心が落ち着かない。広いフロアで何人ものカップルが今どんな気持ちで踊っているのか気になった。
「ゆ、勇次さん」
「ん?」
「私、ホント、下手かもしれないですよ?は、始めてだし」
「今まで男とこういう所来たことないのか?」
「…わりと男の人と一緒にバーに来るのは初めてです。大学の時に女友達と何回か来てたくらいですから」
「ふ〜ん、じゃあ男なら俺がはじめてってわけか。なんか嬉しい」
「そーですか?」
「うん、嬉しいもんなの」
話している内に曲が変わり、また新たなお洒落な曲が流れた。クラシックっていうのかな。こういうの。
「じゃ、踊ろっか」
勇次さんは腰を上げ、椅子から下りた。そうすると私に手を差し伸べる。私はそれに従い、大きな手に自身の手を乗せ、椅子から下りた。とても温かくて何故か幸せな感覚に満たされた。
広いフロアにつき、向かい合わせになる。自然に目が合って究極に恥ずかしさが増した。おもわず逸らしたら
「駄目、逸らさないで」
勇次さんは真っ直ぐと私を見つめ、微笑んだ。
「名前ちゃんからみると…右手は俺の手に乗せて…左手は俺の肩か背中に手をまわしてくれる?」
「は、はい…」
右手はまだ冷静を保てているが、左手は緊張でガクガクする。それを勇次さんは悟ったのか、握られていた右手をさっきより少し強く握った。
「緊張しなくて大丈夫だから。名前ちゃんが疲れない方に手をまわしてくれればいいよ」
私は勇次さんの肩に手を添えた。そして添えた瞬間耳元で
「びっくりしないでね」
と呟いたすぐ、私の腰に手を回しグッと勇次さんの方に抱き寄せられた。自然に足は勇次さんの方に歩み進め、身体がピッタリとくっつく。思いがけない勇次さんの顔と身体の近さといい香りに包まれた感じがして、身体全身が熱くなった。私よりも全然身長が高いし、手は大きく、男性らしくゴツっとしていて…なによりカッコよかった。大人の男の色気が全て
「俺に委ねていいから」
勇次さんは足を少し動かして、ゆっくり動く。なんかよくお洒落な大人の恋愛ドラマにあるようなシーンに思えてきて、自意識過剰すぎるけど自分がヒロインになった気分だった。
「勇次さん、私、今すごく幸せな気分です」
ただ素直な感想を率直に伝えたかった。勇次さんも目を細めて笑って
「俺も」
そう呟いた後、私の額に軽くチュッと音を立てキスをしたのだ。びっくりして私は勇次さんを見つめてる事しか出来ない。
「綺麗だ」
「え?」
「すごく綺麗だよ、君が」
何も言えない。ただ放心状態。ズルいよ。本当にこの人は。
「…ずるいです」
「好きな女には…いじめたくなるもんだ男は」
「ふふ、まーた格好つけちゃって」
「たまにはつけさせてよ」
「ダーメーでーすっ、他の女の子がまた勇次さんに惚れちゃうもん」
いじらしく、それでも真剣に。勇次さんの掴んでる手と肩を少し強く掴んで言った。
「ライバルをこれ以上増やしたくないから」
あなたは知らないかもしれないけど、モテてるんですよ、勇次さん。これ以上また他の女性が勇次さんの事惚れられて…もし仮にその女性の事を勇次さんも好きになってしまったら嫌だから。
「名前ちゃん…俺、期待しちゃうぜ?そんな事言われたら」
「期待してもいいですけど?」
「フッ、でももう少し待ってみようかな」
「何を待つんですか?」
「内緒」
それを言ったあと、勇次さんは何も言わなかった。ただずっと嬉しそうな顔しているだけで。
曲が終わったあと、周りのカップルは自然に身体は離れ、席に着いていく。私も離れようとしたら、自分の腰に手を回されていた勇次さんの手がまた力が強まり、今度は抱きしめるようにする。私は自分の身に何が起こってるのか理解できるのに時間が掛かった。
「ゆ、勇次さん?!」
「ちょっと…あと少しこのまま…」
私も意思的なのか、自然になのか分からなかったけど勇次さんの大きな背中に手をまわした。あー、このまま時が止まればいいのにな。この幸せな時間を手放したくない気持ちでいっぱいだった。
「…悪いな。サンキュ」
身体は離れて、物凄くさみしく感じた。だけど困らせない為に笑顔を取り繕って明るめに返事を返した。
「いいえ、結構勇次さんって甘えん坊なんですね」
「まぁーな、名前ちゃんといると落ち着くからさ」
「ふふっ、私もとっても落ち着きますよ」
今日の一日はこれで幕を閉じた。もう勇次さん呼びは終わり。明日からまた仕事仲間として、大下さん呼びだ。寂しくなるけど私には大下さん呼びの方が合ってる気がする。