第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私と大下さんで犯人の二人の内一人のアパートの部屋を調べる事になった。大家さんに鍵を開けてもらい部屋に入る。お世辞にも綺麗とは言えない部屋で証拠品などを探すのには大変な気がする。
「汚ねぇ部屋だな。これじゃあまるでトオルの部屋みたいだ」
「トオル君の部屋って散らかってるんですか?」
「結構ね」
「へぇ〜」
ガサゴソとタンスの中やクローゼットの中を漁る。そしたらクローゼットの中からダンボールが出てきた。この中に何か入ってるかもしれない。ガムテープが貼り付けられていたからカッターで切って中を開けると案の定、拳銃の弾が何発も入っていた。
「大下さん!拳銃の弾見つかりました」
「お、でかした名前ちゃん」
確認すると確かに使用された弾と一致した。
「取りあえずヤツが黒なのはこれでハッキリしたな。あともう一人のヤツの方はタカ達が行ってるから、その報告を待つか」
「じゃあその間私は課長に連絡入れてきます」
「ん、サンキュ」
ここの部屋にある電話を借りて署に繋げる。丁度課長が出たから、部屋にあった物や証拠品を報告した。
「よし分かった、引き続き捜査頼むよ」
「了解です!」
電話を切った後、まだ何かないかと机の引き出しを見たり、細かい所を漁っていたら突然ドアがガチャリと鍵を開けた音がなる。まさかと思い、大下さんと顔を見合わせ拳銃を持って身構えた。そしてドアが空いた瞬間、バッと飛び出す。
「動くな」
案の定犯人だった。大きなトランクケースを持っていて盗まれた現金だと悟る。ドアを閉めて逃げ出した犯人に大下さんは待て!と言い、そのまま突っ走って行く。私はヒールを履いていて追い付けないのが分かっていたから急いで車に乗り込みエンジンをかけて裏に回る。着いた所に丁度大下さんと挟み打ちになり犯人は逃げられないと分かり、持っていたトランクケースを下におろして手を上げた。
大下さんと私で犯人の方に近寄る。でも私は油断していた。犯人が突然私の首に腕を掛け、自身の服から拳銃を出し私の頭へ銃口を向けてきたのだ。
「動くな!動いたらコイツの頭ぶち抜くぞ」
「そうしたらお前の頭もぶち抜くぞ!」
「うるせー!!テメェは拳銃を捨てろ!」
「…わーたよ。捨てりゃいいんだろ、捨てりゃ」
大下さんは拳銃を地面に落とす。でも大下さんは何故か目を見開かせた。それと同時に犯人の腕が一瞬にして緩まる。その隙に私は犯人の腕から抜け出し、大下さんのもとへ走る。手を広げてくれたのでそれを素直に応じて飛び込み、受け止めてくれた。ぎゅっと大下さんの腕の中へスッポリと収まる自分。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
犯人の方へ向くと、その後ろには東署のあの人がいた。その人は犯人に拳銃を突きつけていたのだ。後に東署の人達が続々と来て犯人を取り押さえた。
「あ、あなたは…」
「いや、丁度
「そ、それはどうも…」
「いえいえ」
お礼を言わなきゃいけないと思い感謝の言葉を言うが、でもどうしても上から目線に感じて感じ悪く思ってしまう。
「助けてもらったからにはお礼を言わなきゃな、アンタに」
「いえ。当然の事をしたまでなので。東署は港署と違って身内の人質は出さないのでね」
「んだと?」
「お、大下さん落ち着いて」
「この件は一歩僕の方が勝利に近づきましたね」
「てめぇ…警ら課のクセして随分と天狗になった気でいるじゃねーか」
「でも彼女を助けたのは僕ですよ?大下さんは何もしてないじゃないですか」
耐えきれなくなった私は声を荒げて言う。
「あの!!私、そういう思い上がってる人って大嫌いなんです!大人げないというか…。とにかく!私は貴方にも感謝してますが、大下さんの事と港署の事を悪く言うのは辞めてください!一番最初に助けてくれようとしていたのは貴方ではなく紛れもなく大下さんなんです!私の事でそんな子供じみた喧嘩みたいな事を刑事のクセしてやらないで!」
「名前ちゃん…」
小さく呟いた大下さんの声は充分に私の耳に届いた。大下さんの震えていた拳が収まったようで手をポケットの中にしまい込んだ。安堵した私はホッと息を吐く。それにしても東署の人って何故か検挙率のせいなのかは分からないけどのぼせ上がってる。港署はワースト3でも署はいつも楽しくやってるし、一生懸命にやっている。その頑張りを知らない刑事につべこべ港署の事を悪く言われるのが余計に腹立たしかった。
「大下さん、行きましょ」
「あ、ああ」
「それと…」
伝え忘れた事があり、歩みを止める。
「その件はあなた達東署に譲ります」
「ちょ、名前ちゃん?」
「ただし、港署が勝っても負けても私の気持ちは変わらず……」
「変わらず…何ですか?」
「いや、なんでもないです。とにかく譲ります。では」
この場を去り、レパードに乗り込んだ。大下さんは一つ咳払いをして訪ねてくる。
「さっき名前ちゃんが言いかけた事って何?」
「あー、あれですか…えっと…」
「答えたくなければそれはそれでいいさ。ただ気になっただけだから」
答えるか迷った。この事は今言うべきではないような気もしたし。でもどうしても伝えたい自分とまだ早いんじゃないかと戸惑う自分が葛藤してる。
「…私の気持ちは変わらず、あなたの事は好きにならないって言いたかっただけです」
「そっか。名前ちゃんはそれ程好きな人がいるんだな」
「えっと…まぁそうですね。その人の事、毎日想ってしまうくらい大好きです」
「なんかその相手羨ましいなぁ〜。名前ちゃんにここまで想ってくれるなんて…。少し妬けるぜ」
「そう…ですか?」
「…うん」
信号で止まり、大下さんは煙草を咥え火を灯した。その仕草に釘付けになってる自分。横目で少し見てから目をそらした。
どうしても言えない。あなたの事が好きだと。仮に告白して振られて今までのように楽しく話するのが気まずくなるのだけがどうしても嫌だった。本当は大下さんも私に気があるんじゃないかと勝手に思い込んでいた事もあるけど、それはただ自分が良い方向にさせたかっただけだと思う。いわゆる妄想っていうのかな…。妬けるなんて言葉、大下さんならきっと色んな綺麗な女性に使っているはずだ。ちょっと軽い弾みで呟く…みたいな。
本当はあの後、私の気持ちは変わらず大下さんの事が好きだからと言おうとした。それを言えるのはいつになるのだろうか。