第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
何故か今、物凄くゆったりできる気分。マッサージ師が私の頬をゆっくりと撫で回す。自然に張り詰めていた頬の肉がどんどん解れていき、このまま眠っていまいそう。だけど突然物凄い力で頬をグリグリとツボを刺激され、声が出た。
「い、いたたた…、ちょっ、やめ…」
「ほれほれ、もっとしてやろうか」
その男は悪そうな顔してもっと力を込めて刺激する。だがそれと同時に私は一気に現実に引き戻された。
ーーーん?
うっすら目を開けると楽しそうに私の頬をツンツン突っつき続ける彼。その彼の名は港署捜査課の大下勇次刑事だった。私は昨日夜中まで街で騒いでいた少年少女の不良達を聴取したりなどして、午前5時までに回ってしまった。眠すぎて家に帰る余裕もなかった為に署にある仮眠室のベッドに寝かさせてもらっていた所だった。
「大下さん……。もう少し寝かしてくださいよ」
全然寝た気になってない私は大下さんの反対側に寝返りをうち、なんとも間抜けな声で言う。
「おはよ。折角起こしに来てやったんだから、ちょっとは可愛くありがととか言えない訳?」
何故か大下さんは私にだけかまちょになる。理由は分からない。だけどそれが可愛い時もあれば面倒くさい時もある。先輩に向かって言えることではないからあえては口にしない。
「可愛く言えなくてごめんなさいね。でも眠いんで」
もう一度寝ようとしたところで大下さんはあー、そう。と言う。ただその後の言葉で私の目が一気に覚めたのだ。
「もう出勤時間とっくに過ぎているのになー。いいのかなー?少年課は暇で羨ましいぜ。」
「嘘っ!?」
ベッドがガタと音を立て、私は身体を飛び起き上がらせた。左手首に着けている腕時計を確認したところ、確かに出勤時間が三十分も過ぎていたのだ。
「やっば…。松村課長に怒られる…」
「ふっ、もう手遅れだな。松村課長カンカンだったぜ」
それを聞いた瞬間もっとやる気を無くして再度ベッドに倒れ込んだ。
「もーこのまま寝よっかな」
「そーすると俺が保たないから」
大下さんは私の腕を掴んで起き上がらせた。
「何が保たないんですか?」
さっき言ってた“保たない”が気になり質問するとはぐらかすように言う。
「まぁまぁ名前ちゃんは分かんなくていいの。ほらこれ以上遅れたら課長の白髪が増えるぞ」
私は気怠そうにして、はーいと返事を返し、仮眠室をあとにした。
***
「ちょっと!名前くん!!遅刻よ、遅刻!もう、だらしない髪して!トイレの鏡使って綺麗にしてきなさい!」
「うぅー、ほんっとすみませんでした…。今すぐ行って整えてきます。」
案の定怒られた。少し後ろにいたカオルさんと鈴江さんに笑われてる気がする。
「そして朝なんだからもっと涼しい顔しなさいよ。これじゃあ少年少女がまともに言う事聞かないでどんどんクソガキになってく一方なんだから」
「…はい」
「分かったならさっさと行ってらっしゃい」
ため息を一つついてトイレの方に向かった。私がトイレに行ってる間ーー
「あの
「あははは、でも名前ちゃんのこういう抜けた所がまぁ可愛いとこなんじゃないっすかねぇ〜、ねっ鈴江さん」
「うん、そうですよ!カオルちゃんの言う通りに名前ちゃんは可愛い」
「なんだよ、そんな名前ちゃんを褒めちぎって。可愛いに決まってるだろ」
「ったく、また大下さんの惚気が始まったよ」
「これでまだ付き合ってないっていうのが不思議だよな」
「何を言ってんだよ鈴江。ユージにそんな勇気ある訳ないじゃない。ナンパは得意なくせして本命には駄目だもん」
「なんだよタカまで。お前らには関係ねーだろ!」
そんなこんなで揉め合いが始まりそうな直前に私は戻ってカオルさんたちの方に向かった。
「松村課長!お待たせしました!仕事モードバッチシです!!」
ビシッと敬礼して松村課長に見せる。
「んっ、よろしい!今日も1日よろしく頼むわよ」
「「「はい!!」」」
これが港署少年課の一日の始まり。
***
「瞳ちゃん、コーヒー貰ってもいい?」
「はーい!今日も砂糖とミルク多めですか?」
「うん!それでお願いします」
苦いのが苦手な私はいつも瞳ちゃんから貰うコーヒーは甘めにしてもらうのが当たり前。たまにはミルクを無くすか砂糖を無くすかと試みるがやっぱり甘くないと全て飲みきれないから結局毎回どっちも増し増しに淹れてもらう。
「瞳ちゃん、私にもコーヒー頂戴〜」
「俺もいいかな?」
カオルさんに続いて鈴江さんもコーヒータイム。少年課はいい意味で仕事が少ない。ただ夜は未成年とかをよく補導することがある。不良やヤンキーやらが外でウロチョロして外に出かけられない大人方が多くて参ったものだ。それに比べ捜査課は銀星会や薬物、殺人、強盗など諸々と調査して逮捕する。これが捜査課の仕事。だから少年課よりも捜査課の方が拳銃を使う事が多いから命がけだ。今実際に少年課は呑気にコーヒーを飲んでいるが、捜査課の人達は事件が起きた事などを近藤課長から聞いてる所で、今、話が終わった所だった。そして捜査行く所で大下さんに話しかけられる。
「名前ちゃん、今晩空いてたりしない?」
「今晩ですか?」
「お洒落なとこ見つけたから」
夕飯の誘いだった。大下さんがキラキラした眼差しでこちらを見ている。まるで犬みたいだ。今夜は特に用もないし、今日わざわざ起こしに来てくれたから私はその誘いに乗った。
「いいですよ」
「おしっ、じゃあ今日は早めにケリつけてくる」
スーツを大げさに羽織り、嵐のように目の前から去っていった。ホンットに足速いよな。大下さんって。
「ったく大下は名前くんが関わるといつも張り切って無茶するから何か仕出かしそうで溜まったもんじゃないぞ…もー困ったもんだ」
「あはは、近藤課長までそういうのはやめてくださいよ〜。私の事で張り切ってる訳じゃないと思いますよ。多分そのお洒落な所に行けるから喜んでるんじゃないんですか?」
近藤課長は私の方向いて、不審な笑みを浮かべる。
「名前くんは罪な女だね」
そう言って課長の定位置の椅子に座り作業を始めた。
「罪?」
罪な女ってどういう意味なのだろう。そして最後の一口のコーヒーを飲み干す。
「瞳ちゃん、コーヒーご馳走様です」
空になった紙コップをゴミ箱に捨てて私も自分の作業に戻った。自分の机に山のように積み上がってる資料の量を見て、気が遠くなりそうだ。でも今晩は大下さんとご飯食べに行くから私もとっとと終わらせて大下さんを待とう。
1/3ページ
