はーっと大きなため息を吐きながら、一人で寝るには少し大きなベッドにダイブする。微かに残る翔ちゃんの匂いをすんっと嗅いで、胎児のように丸まった。
仕事でミスをしてしまったし、夜ご飯のおかずは焦がしてしまったし、翔ちゃんはまだ帰ってこない。
上手く気持ちを昇華出来ないまま、床に就く時間になった。ああ、なんか涙出てきた……。

「ただいまー」

小さな声でそう言いながら、翔ちゃんが寝室のドアを開けた気配がした。今、顔を見られたくないと思って、寝ている風を装ってシーツに顔を埋める。
翔ちゃんがベッドに腰掛けたのか、少しだけベッドが揺れる。彼は私の頭をそっと撫で、「流石にもう寝ちまったか」と少しだけ寂しそうに呟いた。
優しい手つきで頭を撫で続けてくれるので、じわりと滲んでいただけの涙が堰を切ったように溢れ出した。嗚咽も漏れ始めて、寝たフリなんてもうバレただろう。
翔ちゃんが私の頭を撫でる手が止まった。衣擦れの音とベッドの軋む音がして、翔ちゃんがギュッと私を抱きしめてくれた。

「大丈夫だからな」

それだけ言って、翔ちゃんは背中を撫でてくれる。優しい手つきに更に泣きに拍車がかかって、寝たフリどころではなくなった。

「しょーちゃん」
「んー？」
「あのね、きょうね──」

嗚咽混じりに今日あったことを彼に話し始めた。優しい彼の相槌と、優しい手つきに心が解れる。
と、同時にきっと疲れてるんだろう彼に縋って泣いてしまっているのが申し訳なくて、更に泣けてきてしまった。彼にそのことを泣きながら謝ると、「いいんだよ。初音が元気ないのをほっとく方が寝付き悪くなる」なんて言ってくれて、更にワンワン泣いた。


泣き疲れて眠ったのか、気づいたら彼の腕の中で朝を迎えていた。気持ちよさそうに眠る彼に「ありがとう」と囁く。
まだ少し眠い。そう思って、彼の胸板に擦りついて目を閉じた。