君と僕の遠回り
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翔ちゃんの様子がおかしいと思い始めて、一週間と少し経った。
やっぱり、翔ちゃんはおかしい。
避けられることが多くなった。
まず、ちょっと怒られたときは、軽く叩かれたりデコピンされたりしていたのにそれがない。
一昨日は久しぶりにオフだと言っていたので、前髪切って欲しいなとお願いしたら音也くんたちとフットサルだからと断られた(これはまあ仕方ない)。
更には、こっちが肩を叩いたりしたら大袈裟に驚くし、予見できているときはさり気なく避けられる。
フィクションでよくある、好きだと意識してしまうと今まで通りに接することが出来なくなるっていうやつかと一瞬頭をよぎった。
でも、流石に都合よく考えすぎな気もするので、それはないということにする。
翔ちゃんが訳わかんなくて悶々としているせいか、「なんか最近元気ないね?」と先輩に言われる始末だ。
悩みなら聞くと言ってくれたが、好きな幼馴染みに避けられてるかもと相談できるわけがない。
翔ちゃんと幼馴染みだということは、私と関わりのある事務所の人は大体知っているからだ。
薫くんのことだと勘違いして貰えればまだましだけど、まあまずないだろう。
色々と考えを巡らせながら、辿り着いた自販機に握りしめていた硬貨を入れる。
糖分欲しいから、ミルクティーにしよう。
取り出し口に落ちてきたそれをとって、手で包んで暖をとる。
あったかい。
最近急に寒くなったなあ。
「ハツネー、おはようございますー」
「あ、セシルくん、おはよー」
パタパタとこちらに向かってくるセシルくん。
その背後に見える小さい影は……やっぱり翔ちゃんだ。
「翔ちゃんもおはよー」
「おはよ。もって俺はついでかよ!」
「セシルくんの影に隠れてよく見えなかったのー」
「悪かったな、小さくて! 」
そう吠える翔ちゃんとの距離が少し遠い。
セシルくんより一歩後ろにいる彼には、手が届かない。
普通に会話はできるのになあ。
「拗ねないでよ。小さいのもアイデンティティーだって思うことにしたって言ってなかった?」
「そうだけど……」
「ショウはハツネよりグンと大きくなりたいのですか?」
「おーそうそ——って、セシル! なに言わすんだよ!」
「だってショウ、この前言っていたではないですか。ハツネ——」
「わあああああ、言うなセシル!」
何かを言いかけたセシルくんを、翔ちゃんが全力で止める。
セシルくんもセシルくんで、「Oh! ごめんなさいショウ! 言わない約束でした‼︎」と言うので、名前を出された本人としてはとても気になった。
「え、なに、まさか悪口?」
「ちげえよ!」
「じゃあ、言えるよね? 教えて?」
「……初音が、俺と出かける時ぺたんこの靴履くって言ってたから、背が高かったら気を遣わせなくていいからいいよなって話したんだよ!」
「あー、言ったね。でも、私ぺたんこのスニーカー好きだからそこまで気を遣ってるわけじゃないよ」
それに、翔ちゃんと視線が一緒だとなんか嬉しいし。
言いかけたこの言葉は心に仕舞っておこう。
遠回しに好きって言ってるみたいだから。
「なら、いいけどさ。って、セシル、なに笑ってんだよ!」
「ショウとハツネはなかよしでとてもカワイイです!」
ニコニコと、微笑ましい物を見るように笑うセシルくん。
恐らく年下の彼からそういう風に見られるのは、なんだか不思議な感じだ。
「仲良しはそうだけど、なんでそこで可愛いに繋がるんだよ?」
「えっと……ヒミツです」
「教えろよー」
そう言いながら、翔ちゃんはセシルくんの脇腹を肘で小突いた。
……そういうのも、私には最近してこなくなったね。
「Non! ヒミツはヒミツです! レンも言ってました‼︎」
セシルくんは両手でバツを作って、絶対言わないと言わんばかりだ。
レンさん、まさかセシルくんにバラした……?
「レンさんから何か吹き込まれたのかな、セシルくん」と、翔ちゃんに少し近づいてコソッと話しかける。
それをしながら、彼に距離を取られなかったことに密かに安堵する。
翔ちゃんが、「絶対そうだろ。あとであいつに根掘り葉掘り聞いてやる」と言ったので、「任せた」と返した。
「そういえば、二人とも仕事中? 私は今休憩中だけど」
「あ! やべ、そろそろ行かねーと」
「今からショウと雑誌のインタビューです。とても楽しみ」
「そうなんだ。発売したら買わなきゃね!」
「別にわざわざ買わなくてもサンプルで見ればいいだろ。この前も見てたじゃん」
「それはまた別なの! シャイニング事務所スタッフだけど、ST☆RISHのファンだから買います!」
「ふふ、こんなに身近にワタシたちのファンがいてとても嬉しいです!」
嬉しそうに笑ったセシルくんに、ギュッと握手をされる。
「ファンサービス旺盛だね」と軽口を叩いていると翔ちゃんが、「セシル、マジで間に合わなくなるから行くぞ」と私の手から彼の手を引っぺがして歩き出した。
「頑張ってね!」
歩いていく二人に手を振ると、二人も振り返してくれた。
手の中のミルクティーはぬるくなっていた。
やっぱり、翔ちゃんはおかしい。
避けられることが多くなった。
まず、ちょっと怒られたときは、軽く叩かれたりデコピンされたりしていたのにそれがない。
一昨日は久しぶりにオフだと言っていたので、前髪切って欲しいなとお願いしたら音也くんたちとフットサルだからと断られた(これはまあ仕方ない)。
更には、こっちが肩を叩いたりしたら大袈裟に驚くし、予見できているときはさり気なく避けられる。
フィクションでよくある、好きだと意識してしまうと今まで通りに接することが出来なくなるっていうやつかと一瞬頭をよぎった。
でも、流石に都合よく考えすぎな気もするので、それはないということにする。
翔ちゃんが訳わかんなくて悶々としているせいか、「なんか最近元気ないね?」と先輩に言われる始末だ。
悩みなら聞くと言ってくれたが、好きな幼馴染みに避けられてるかもと相談できるわけがない。
翔ちゃんと幼馴染みだということは、私と関わりのある事務所の人は大体知っているからだ。
薫くんのことだと勘違いして貰えればまだましだけど、まあまずないだろう。
色々と考えを巡らせながら、辿り着いた自販機に握りしめていた硬貨を入れる。
糖分欲しいから、ミルクティーにしよう。
取り出し口に落ちてきたそれをとって、手で包んで暖をとる。
あったかい。
最近急に寒くなったなあ。
「ハツネー、おはようございますー」
「あ、セシルくん、おはよー」
パタパタとこちらに向かってくるセシルくん。
その背後に見える小さい影は……やっぱり翔ちゃんだ。
「翔ちゃんもおはよー」
「おはよ。もって俺はついでかよ!」
「セシルくんの影に隠れてよく見えなかったのー」
「悪かったな、小さくて! 」
そう吠える翔ちゃんとの距離が少し遠い。
セシルくんより一歩後ろにいる彼には、手が届かない。
普通に会話はできるのになあ。
「拗ねないでよ。小さいのもアイデンティティーだって思うことにしたって言ってなかった?」
「そうだけど……」
「ショウはハツネよりグンと大きくなりたいのですか?」
「おーそうそ——って、セシル! なに言わすんだよ!」
「だってショウ、この前言っていたではないですか。ハツネ——」
「わあああああ、言うなセシル!」
何かを言いかけたセシルくんを、翔ちゃんが全力で止める。
セシルくんもセシルくんで、「Oh! ごめんなさいショウ! 言わない約束でした‼︎」と言うので、名前を出された本人としてはとても気になった。
「え、なに、まさか悪口?」
「ちげえよ!」
「じゃあ、言えるよね? 教えて?」
「……初音が、俺と出かける時ぺたんこの靴履くって言ってたから、背が高かったら気を遣わせなくていいからいいよなって話したんだよ!」
「あー、言ったね。でも、私ぺたんこのスニーカー好きだからそこまで気を遣ってるわけじゃないよ」
それに、翔ちゃんと視線が一緒だとなんか嬉しいし。
言いかけたこの言葉は心に仕舞っておこう。
遠回しに好きって言ってるみたいだから。
「なら、いいけどさ。って、セシル、なに笑ってんだよ!」
「ショウとハツネはなかよしでとてもカワイイです!」
ニコニコと、微笑ましい物を見るように笑うセシルくん。
恐らく年下の彼からそういう風に見られるのは、なんだか不思議な感じだ。
「仲良しはそうだけど、なんでそこで可愛いに繋がるんだよ?」
「えっと……ヒミツです」
「教えろよー」
そう言いながら、翔ちゃんはセシルくんの脇腹を肘で小突いた。
……そういうのも、私には最近してこなくなったね。
「Non! ヒミツはヒミツです! レンも言ってました‼︎」
セシルくんは両手でバツを作って、絶対言わないと言わんばかりだ。
レンさん、まさかセシルくんにバラした……?
「レンさんから何か吹き込まれたのかな、セシルくん」と、翔ちゃんに少し近づいてコソッと話しかける。
それをしながら、彼に距離を取られなかったことに密かに安堵する。
翔ちゃんが、「絶対そうだろ。あとであいつに根掘り葉掘り聞いてやる」と言ったので、「任せた」と返した。
「そういえば、二人とも仕事中? 私は今休憩中だけど」
「あ! やべ、そろそろ行かねーと」
「今からショウと雑誌のインタビューです。とても楽しみ」
「そうなんだ。発売したら買わなきゃね!」
「別にわざわざ買わなくてもサンプルで見ればいいだろ。この前も見てたじゃん」
「それはまた別なの! シャイニング事務所スタッフだけど、ST☆RISHのファンだから買います!」
「ふふ、こんなに身近にワタシたちのファンがいてとても嬉しいです!」
嬉しそうに笑ったセシルくんに、ギュッと握手をされる。
「ファンサービス旺盛だね」と軽口を叩いていると翔ちゃんが、「セシル、マジで間に合わなくなるから行くぞ」と私の手から彼の手を引っぺがして歩き出した。
「頑張ってね!」
歩いていく二人に手を振ると、二人も振り返してくれた。
手の中のミルクティーはぬるくなっていた。