君と僕の遠回り

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来栖翔の幼馴染みシリーズ用
ヒロインの名前(カタカナ)
神宮寺レンからのあだ名

オートロックのドアを抜けて、エレベーターのボタンを押す。到着したエレベーターに乗り込み12階を押して、扉を閉めようかと閉ボタンに手を伸ばした。

「待ってください乗ります!」

不意に聞き慣れた声が聞こえた。その声についにやけてしまいながら、指を隣のボタンに移して押し、その人が到着するまで待った。
まさか、会えると思わなかったからにやけちゃいそう。
飛び込んで来た見慣れた帽子と、そこから覗く金色。扉を閉めながら、こちらに気づいていない彼にわざと「何階ですか?」と尋ねながら、彼の住む部屋の14階のボタンを押した。
すると、碧眼が驚いたようにこちらを見上げた。

初音!?」
「え、そんな驚く?」
「い、いや、別に、普通だろ、普通」
「ふふ、ホラー系の企画でもあった?」
「違ぇよ! 単純にビビっただけだ!」
「そっか」
「お前、飯は? 食ってきた?」
「んーん、まだ」
「じゃあ、一緒に食わねえ? すき焼き用の肉、企画のご褒美で貰ったんだ」

そう言いながら、翔ちゃんは持っている袋を軽く持ち上げる。逆の手に握られたスーパーの袋からは葱が頭を出していた。
「すき焼き! 食べたい!」と即答すると、彼は嬉しそうに破顔した。

「よしっ、じゃあ、荷物置いたら俺の家集合な!」
「持ち物は?」
「特になし!」
「了解! すぐ行くね!」

ちょうどよく12階に到着したエレベーターから降りて、翔ちゃんにピッと敬礼。彼も同じように返してくれて、嬉しくなりながら彼を乗せたエレベーターを見送った。

突然のすき焼き、それも絶対いいお肉に私の中の食い気がウキウキしている。
翔ちゃんのことは好きだけど幼馴染みだから、彼に対しては食い気とかも隠さずにいてしまう。翔ちゃんはこういう子は恋愛対象なのかなって、気にならないわけじゃない。
でも、私は翔ちゃんと幼馴染みという、ある種特別な関係で満足しているのも事実だ。というより、この関係が壊れてしまうのが怖いのだ。
好きだけど、告白して関係を壊したくない。
それにアイドルである翔ちゃんに告白なんで出来ない。だから、今はこのままでいい。

手ぶらでいいとは言われたけど、おやつにチョコパイを持参して翔ちゃん宅のインターホンを鳴らした。
ものの数秒でがちゃりとドアが開く。翔ちゃんは既にエプロンをしていて、ちらりと爪を盗み見るともうマニキュアも落としてあった。

「よ、待ってた!」
「お邪魔します! あ、これ、どうぞ」
「お、サンキュ。食後のおやつだな」

翔ちゃんは嬉しそうに笑って、チョコパイの箱を受け取る。
彼に招き入れられて、玄関でぺたんこのスニーカーを脱いだ。顔を上げると、バチリと翔ちゃんと目が合った。朝のやり取りを思い出して、クスリと笑いが漏れる。
翔ちゃんも同じみたいで、同じように笑いを漏らした。

「気ぃ遣ってそれ履いてきたのか?」
「ううん、ずっとヒールだったから疲れちゃっただけ」
「そっか。うん、やっぱり俺の方がちょっと目線高いな」

翔ちゃんはそう言って、満足そうに笑った。至近距離で見る翔ちゃんの笑顔に、心臓がドキドキと高鳴る。
ドキドキしてることが顔に出てないといいなと思いながら、「よし、すき焼き作るぞー! すげえいい肉だから絶対美味い!」と意気揚々とキッチンに向かう翔ちゃんに着いて行った。
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