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「…は?」
名前が男子バレー部のマネージャーになってから四日目の事だった。
同級生で同じクラスでもある角名にマネージャーになった理由を聞かれたので答えていた時のこと。
「信介…あ、二年の北に頼まれて」
幼なじみなんだ、と告げれば角名や治は北?と首を傾げつつ記憶を辿り始めた。
「北ってあれやろ、下手くそのくせに態度だけは一丁前のやつ。下手くそはマネージャー探しなんざしとらんと練習しとけや」
そこに厳しい声をかけたのは侑だった。侑は彼女の事をよく思って居ないらしくその態度は常に冷たかった。
彼女の他にマネージャー志望で体験入部した女子達(ちなみに全員既に辞めてしまった、早すぎやしないだろうか)は侑にとって騒がしいだけの邪魔でしかなく、彼女の事もどうせ男目当てだと思っていたからこその態度なのだが当然名前は面白くない。
幼なじみに頼まれたからというのもあるが彼女はバレーが好きなのだ、見るのは。
信介のお陰で体育で活躍出来る程度の実力はあるが実際にプレーするよりも試合を観る方が彼女にとっては楽しく、コートで活躍する選手の助けになれるというのはワクワクした、だからこそマネージャーを引き受けたのだ。
なのにこの男は「女子マネージャー」と言うだけで偏見の目で自分を見てくるし態度も最悪で内心侑に対してイライラが募っていた。
「マネージャーなんか要らんねん、邪魔やし目障りや。あの下手くそ共々さっさと辞めえや」
そして冒頭に戻るわけである。相手は選手で自分はマネージャーだから、どんなに腹が立とうがそれを表に出すまいと我慢していた、その堤防が音を立てて決壊した。
「お前、喧嘩売ってんのか」
感情のままに侑の胸倉を掴んで睨み付ける。
下から睨みつけられた侑もまた苛立ちを隠すことは無く睨み返した。
「それはこっちの台詞じゃ、なんやこの手は。そっちがその気なら女相手でも手加減せんぞ」
もちろん嘘である。いかに人でなしと言われる侑でもさすがに女相手に本気で手を挙げるつもりは無い。ただこう言えば相手が引くだろうと思っての言葉だったが直ぐに後悔することになった。
「要らん世話じゃ!」
ぐるり、と侑の視界が反転したかと思えばその体がコートに叩き付けられる。
「お、払腰」
いつから見ていたのか、北の冷静な声が耳に入る。
おい、何しれっと解説しとんねん。
投げられたという事実に女相手に、などと考えていたことは忘れ頭が沸騰する。即座に立ち上がり掴みかかろうとしたが素早く首に回された腕に邪魔される。
あ、と思った時にはもう遅く名前はお手本のように綺麗なバックチョークをお見舞いした。
「うわあああマネージャー落ち着けえ!!」
「このポンコツは後で俺がしばいとくから離してくれ!」
「ええ…まじ?ウケるんだけど」
おい角名、お前は何を呑気に撮影しとんねん、お前もこいつ止めろや。
「こんの…クソボケが、大人しくしとったら付け上がりおって!このまま絞め落としたらあ!」
あかんこいつめっちゃキレとるやん、激おこやん。すまん、悪かった、謝るから離してくれ。このままやったら謝ることも出来んぞ。つーか息できん苦しい。
チームメイトの制止は愚か、降参を告げるタップも無視して首を締め上げるその腕は緩むことはなくあ、これ終わったと思ったその時、天の声が聞こえた。
「その辺にしとき。さすがに落とすのはやりすぎや」
ああ北さん。
下手くそとかいうてすみませんでした。口うるさいやつやと生意気な態度とってすみませんでした、今なら貴方が神に見えます。
「チッ」
ああすまん、離してくれてありがとう。今すぐ謝りたいんやけどとりあえず苦しいからもうちょい待ってもろてええやろか。
「原因はなんや」
「こんクソボケが信介の事下手くそや言いよってん。こいつの態度もええ加減腹に据えかねとったしいっぺんシメたろか思うて」
「…お前言うとる事がチンピラと変わらんぞ」
「…信介は下手くそやない」
あの、本当にすみませんでした。
「あいつは昔から柔術やっとってな。最近は総合も習い始めたし、お前あの程度で済んでよかったな」
「あの程度て…まじで落ちるか思ったんすけど」
「名前が本気やったらお前十秒も掛からんと落とされとるで。ああ、その前に投げられるか」
そういえばあいつが入部してから侑は北から喧嘩だけはするなと注意を受けていたと思い出す。
「…北さん、あいつが入ってきた時喧嘩すんな言うとったんはこうなるの分かっとったからですか」
「せやで。俺もよう投げられとるからなあ、あいつの事よう止められんし言っても聞かんからな」
「え」
「お前と一緒にすなよ、俺もあいつと柔術やっとったからな。今でもたまに組手すんねん」
少なくとも北とあのマネージャーには逆らえないという事だけはよく分かった。
「最悪喧嘩する時は頼むから怪我だけはさせんようにしてくれ。関節きめたりするのはあかんぞ、どっか痛めても困るからな、ええな?」
「…腕十字ならええの?」
「いや、話きいとったか?チョークとかにしてくれせめて」
なんてやり取りがあったりなかったり。
名前が男子バレー部のマネージャーになってから四日目の事だった。
同級生で同じクラスでもある角名にマネージャーになった理由を聞かれたので答えていた時のこと。
「信介…あ、二年の北に頼まれて」
幼なじみなんだ、と告げれば角名や治は北?と首を傾げつつ記憶を辿り始めた。
「北ってあれやろ、下手くそのくせに態度だけは一丁前のやつ。下手くそはマネージャー探しなんざしとらんと練習しとけや」
そこに厳しい声をかけたのは侑だった。侑は彼女の事をよく思って居ないらしくその態度は常に冷たかった。
彼女の他にマネージャー志望で体験入部した女子達(ちなみに全員既に辞めてしまった、早すぎやしないだろうか)は侑にとって騒がしいだけの邪魔でしかなく、彼女の事もどうせ男目当てだと思っていたからこその態度なのだが当然名前は面白くない。
幼なじみに頼まれたからというのもあるが彼女はバレーが好きなのだ、見るのは。
信介のお陰で体育で活躍出来る程度の実力はあるが実際にプレーするよりも試合を観る方が彼女にとっては楽しく、コートで活躍する選手の助けになれるというのはワクワクした、だからこそマネージャーを引き受けたのだ。
なのにこの男は「女子マネージャー」と言うだけで偏見の目で自分を見てくるし態度も最悪で内心侑に対してイライラが募っていた。
「マネージャーなんか要らんねん、邪魔やし目障りや。あの下手くそ共々さっさと辞めえや」
そして冒頭に戻るわけである。相手は選手で自分はマネージャーだから、どんなに腹が立とうがそれを表に出すまいと我慢していた、その堤防が音を立てて決壊した。
「お前、喧嘩売ってんのか」
感情のままに侑の胸倉を掴んで睨み付ける。
下から睨みつけられた侑もまた苛立ちを隠すことは無く睨み返した。
「それはこっちの台詞じゃ、なんやこの手は。そっちがその気なら女相手でも手加減せんぞ」
もちろん嘘である。いかに人でなしと言われる侑でもさすがに女相手に本気で手を挙げるつもりは無い。ただこう言えば相手が引くだろうと思っての言葉だったが直ぐに後悔することになった。
「要らん世話じゃ!」
ぐるり、と侑の視界が反転したかと思えばその体がコートに叩き付けられる。
「お、払腰」
いつから見ていたのか、北の冷静な声が耳に入る。
おい、何しれっと解説しとんねん。
投げられたという事実に女相手に、などと考えていたことは忘れ頭が沸騰する。即座に立ち上がり掴みかかろうとしたが素早く首に回された腕に邪魔される。
あ、と思った時にはもう遅く名前はお手本のように綺麗なバックチョークをお見舞いした。
「うわあああマネージャー落ち着けえ!!」
「このポンコツは後で俺がしばいとくから離してくれ!」
「ええ…まじ?ウケるんだけど」
おい角名、お前は何を呑気に撮影しとんねん、お前もこいつ止めろや。
「こんの…クソボケが、大人しくしとったら付け上がりおって!このまま絞め落としたらあ!」
あかんこいつめっちゃキレとるやん、激おこやん。すまん、悪かった、謝るから離してくれ。このままやったら謝ることも出来んぞ。つーか息できん苦しい。
チームメイトの制止は愚か、降参を告げるタップも無視して首を締め上げるその腕は緩むことはなくあ、これ終わったと思ったその時、天の声が聞こえた。
「その辺にしとき。さすがに落とすのはやりすぎや」
ああ北さん。
下手くそとかいうてすみませんでした。口うるさいやつやと生意気な態度とってすみませんでした、今なら貴方が神に見えます。
「チッ」
ああすまん、離してくれてありがとう。今すぐ謝りたいんやけどとりあえず苦しいからもうちょい待ってもろてええやろか。
「原因はなんや」
「こんクソボケが信介の事下手くそや言いよってん。こいつの態度もええ加減腹に据えかねとったしいっぺんシメたろか思うて」
「…お前言うとる事がチンピラと変わらんぞ」
「…信介は下手くそやない」
あの、本当にすみませんでした。
「あいつは昔から柔術やっとってな。最近は総合も習い始めたし、お前あの程度で済んでよかったな」
「あの程度て…まじで落ちるか思ったんすけど」
「名前が本気やったらお前十秒も掛からんと落とされとるで。ああ、その前に投げられるか」
そういえばあいつが入部してから侑は北から喧嘩だけはするなと注意を受けていたと思い出す。
「…北さん、あいつが入ってきた時喧嘩すんな言うとったんはこうなるの分かっとったからですか」
「せやで。俺もよう投げられとるからなあ、あいつの事よう止められんし言っても聞かんからな」
「え」
「お前と一緒にすなよ、俺もあいつと柔術やっとったからな。今でもたまに組手すんねん」
少なくとも北とあのマネージャーには逆らえないという事だけはよく分かった。
「最悪喧嘩する時は頼むから怪我だけはさせんようにしてくれ。関節きめたりするのはあかんぞ、どっか痛めても困るからな、ええな?」
「…腕十字ならええの?」
「いや、話きいとったか?チョークとかにしてくれせめて」
なんてやり取りがあったりなかったり。
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