昼休みになると倫太郎はいつも名前の教室に行く。
弁当を受け取るためだ。

親元を離れ現在二人で暮らしているが生活のほとんどを名前がこなしており、ただでさえ朝練に向かう自分の朝食を作るために早起きしてくれているのだ。どうせ同じ学校なのだから弁当はわざわざ朝練に持っていかずとも名前が登校する時に一緒に持ってくればいい。その分長く寝ていられるだろうと言われ、名前は倫太郎が朝練に出てから二人分の弁当を作っている。
なので昼休みを迎えた現時点で角名の弁当は手元には無く、共に昼食をとる侑、銀島を伴い名前の待つ教室へ向かうというのが早くも昼休みの定番になっていた。

「名前」

「よお、スナ子！」

「だからそれ辞めろって」

「名前ちゃん、今日はどないする？一緒に食べるか？」

スナ子、と侑に呼ばれ一瞬眉をひそめた名前は銀島の誘いにうん、と短く答えてから少し笑う。

弁当を受け取りがてら、共に昼食をと誘うが毎回応じる訳ではなく、そういった時は一人か親しい友人と食べているようだが今日は一緒に食べるようだ。

一緒に食べるなら、と既に弁当を食べ始めている治の周りに集まる。
受け取った弁当を開けると治の物欲しそうな視線が注がれるが無視する。

ていうか自分の今食べてんじゃん。

「…相変わらず美味そうやなあ」

「あげないよ…名前、今日も美味いよ。いつもありがとう」

「うん」

名前の作る食事は美味しい。兵庫に着いてくることを決めてから母に習い一生懸命覚えてくれただけではなく、スポーツをしている自分の体を気遣って栄養面も申し分ない。

双子でありながらよく出来た妹であると倫太郎はいつも思う。
同じ顔をしているが倫太郎にとって名前は可愛い妹なのだ、そんな妹の献身を嬉しく思わない訳が無い。

「倫、今日のご飯何がいい？」

「名前の作る飯はなんでも美味いからね、悩むな」

「俺、寿司がええ」

「お前には聞いてへんで」

「俺は美味いもんが食いたい」

「治にも聞いてないよ」