そろそろ七月に入ろうかという暑い日の午後、角名は校庭で体育の授業を受けていた。
何もわざわざこんな日にサッカーじゃなくてもいいだろうとは思うが代わりにしたいことも無い。
そんなことを考えながら校庭の隅にしゃがみこみ汗を拭う。
白い体操服の集団の中に一際目立つ赤い色が目に入った。

苗字名前。
彼女はいつも長袖を着ていると気が付いたのは暑い日が続くようになってからの事だった。
最初はそんなに日焼けしたくないのか、暑いのにご苦労さまと冷めた目で見ていたが最近になってそれだけではないでは、と思い始めている。

それというのも彼女はおしゃれやファッションというものに無関心に見えるからだ。
身だしなみには気を使っているし寧ろ清潔感があって好感が持てるが例えばくくっていた髪に癖が付いていても気にした素振りを見せないしマスカラを「まつ毛のやつ」と言うだとか。

そういったものに対して興味を持っているとは思えない発言をしているのを度々教室で耳にするし極めつけは日焼け止めを貸してほしいといった女子に対して「持ってない」と返した事だろうか。

くそ暑い日に長袖わ着込んでまで日焼けを嫌う女が日焼け止めを持っていないということなどあるのだろうか？
登校前に使用してきたとしても角名の知る限り持ち歩いて塗り直す人の方が圧倒的に多いように思う。

では彼女が常に長袖を着ている理由はなんなのかという所だが角名の予想ではやけどとか怪我の跡が残っていて見られたくない、が最有力だ。
以前読んだ漫画で根暗そうな少年が実はピアスを開けまくっていてその服の下はタトゥーが、なんてキャラがいたが所詮漫画である。
大穴でそうだったら面白いなとは思うが。

まあここまで全て角名の想像である。なんだかんだ思いつつも単に日焼けを嫌っているだけなのだろうと深く考えることはしなかった。