アランくんの彼女はロシア人
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あれほど楽しかった文化祭の余韻も冷めやらぬ中、
兵庫県代表を決める春高予選の準決勝、決勝はあいにくの天気で傘をさしても意味がないほどの暴風雨だった。
「今日のアラン気合い入ってるな」
全身ずぶ濡れで三年生を中心に全員少し憂鬱な気分で会場に到着したのに、不快感を微塵も感じさせない気迫たっぷりな後輩がいた。しかも時々ニヤけている。なんやこいつと不思議そうな顔をする先輩に大耳がコソッと耳打ちする。
「彼女見に来てるんです」
「へえ~分かりやすいな~」
思わず吹き出した先輩は興味津々に聞いた。
「彼女どこ?」
「あそこです。ジャニーズうちわ持ってる子」
自慢の後輩がアイドルになってる状況に先輩はさらにツボにハマる。彼女のうちわには「投げちゅーして!」その隣にいる友達は「こっち見て!」のうちわを持っていた。引率の先生に見つかったら絶対没収されるアイテムだ。
「投げちゅーの方?」
「はい」
「投げちゅーしてーやって。彼女待ってんで」
先輩にからかわれたアランはここでようやくうちわを持ったガルーラに気付いた。
「アラン?」
予想を反してアランは口をぽかんと開けたまま中途半端な姿勢で応援席を見つめていた。そんなアランにガルーラはものすごく優しい表情を浮かべて、両手を使って投げキスしてみせた。
「かっわええ…」
「お前がファンサされてどーすんねん」
呆れた顔をした先輩は事前準備のためその場を離れる。代わりに大耳がうずくまったまま心臓を抑えて動かないアランをのぞき込む。
「アランやれへんの」
「投げキスでけへん」
「アランくーん。ガルーラさん見たー?!」
「ほら双子も騒ぐで」
「でけへんて」
締まらない空気のまま始まった男子決勝。
稲荷崎は序盤から試合の主導権を握ってみせた。ボールを拾ってはつなぐ相手校に苦戦したが、終わってみれば今大会1セットも落とさない圧倒的な実力を見せつけた。春高挑戦が決まったのだ。
すごいやろ。優勝したったで。
これ以上ないほどの興奮と喜びを爆発させながら今日この瞬間の感覚は一生忘れないだろうと心のどこかで考えた。
応援してくれた人達に挨拶するため一列に並び、なんとなくガルーラのうちわを見る。
「ハートつくってーやって。はよやったれや」
「何個用意しとんねん!」
普段なら絶対やらない。テンションに身を任せて渾身の力をこめたハートをみせつけた。