アランくんの彼女はロシア人
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「ガルーラって北がつけたあだ名なん」
「どうしたん。急に」
練習後二年だけ残ってこっそり聞いたら北はあっさりと肯定した。小学校からのあだ名らしい。
「本名と似てるねん。あとガルーラは神社の草むらで見つけてん」
「まじか北ポケモントレーナーやったん」
「そやねん」と北は真顔で頷く。
「ボールないから取り逃がしたけどな。サファリゾーンやったらラッキー捕まえたことあるよ」
「サファリなつい」
「すごいな」
北はこう見えて茶化すのが好きだったりする。表情筋は硬いが、したり顔をとりつくろうのが異常に上手かった。
「ラインは知らん。家電なら教えれるで」
「直電はさすがにハードル高すぎるやろ。こうなれば本人に直接聞いた方が早いんちゃうの」
彼女の情報が知りたいアランは必死になって頼む。こそばいので諸々の事情をぼかしたが圧倒されたのか北はガルーラについて訥々と話し始めた。
「ガルーラは小5の時にロシアから日本に越してきたんやんか。今はペラペラやけど、来たての頃は日本語全くわからんくて途方に暮れててんな。ご近所さんやったから夏休み期間中ずっと世話係みたいなかんじやったんよ。地頭いいから日本語もすぐに完ぺきに覚えよったな」
幼馴染ポジ?まさかの事実におののいたが、今は疎遠になったらしい。
「北が育て屋やったとは…」
「なんでライン知らないん」
大耳の質問に北は珍しく目を泳がせる。
「…喧嘩しててん。口聞いてないな」
「そらジムバッチないまま育てすぎたんや」
「レベル上げすぎたんやな」
「アラン笑ってる場合ちゃうぞ!」
部室にどっと笑い声が響いた。
まだおったんかーと見回りの先生に言われて慌てて帰路につく。
「信介が喧嘩したって珍しいな」
「どっちが悪いん」
「…両方やけど、言い出した手前引っ込みがつかん状態になったから」
「ありがちやな」
「あれガルーラやん」
赤木の発言にツッコむつもりだったがガチだった。
外国人顔の制服姿。しかも180を超える高身長だからどんなに遠くにいても分かった。他の誰よりも目立っていた。なんなら輝いてる。
これはアランによる色眼鏡だが。
コンビニ帰りなのかビニール袋をカサカサと揺らしながら歩いていた。
「アラン、はよ行けや」
「今その流れちゃうやん」
「ガルーラのこと好きなん」
「…」
「良い子やと思うよ」
「さよか」
「上手くいったら国際ビッグカップル誕生やな」
「そのネーミングセンスどうかと思うわ」
そう言い残して、
アランは再度声かけにいった。
あいつすごいな。ポツリと誰かが言った。
***
「ガルーラと遊びに行くことになりました」
「やりよった!」
「二人きり?デート?」
アランが「えらいこっちゃ…」と呟けば、
「何のこっちゃ(紅茶)?」「抹茶に紅茶!」と続いたから「やかましいわ」と返しておく。
昨日今日と順調すぎる進展の早さにキャッキャと騒ぐ男子バレー部員たち。
一年の双子はアランの事情を知って「国際ビッグカップル作戦」と呼んでいた。
「アランくん指輪持っていかなあかんで」
「プロポーズか!気早いわ!」
「ガルーラさん家、教会やねんで」
「まじで!?」
双子の情報にアランはおののいた。
なんで知ってるのかと聞けば「結構有名な話なのに知らへんの」と侑に言い返されてしまった。
玉ねぎの形をした屋根の教会らしい。
「尾白家はキリスト教なん」
「普通に仏教やけど。え?改宗した方がええの」
宗派なんだったか。神父さんの父親が厳しいなら念頭において考えなければならない。
「同級生だろうが宗教の話はやめた方がいいと思うわ。親しき仲にも礼儀ありやで」
「あ、ハイ」
通りがかりの北に言われたアランは敬語で返した。
どうにも北との距離が掴みきれずにいる。
ガルーラとの確執がわかった今なおのこと意識してしまうのだ。
「ここまで来たら来週結婚の話しててもおかしないで」
「賭けるか」
「おお」
「勝手に話飛躍させるな」
「アランくんのためやで」
「なんでやねん」
***
「ガルーラの家でごはん食べたわ」
「段階見えてる?高飛びちゃうで」
赤木は真面目なトーンで訊いた。
日毎に進化する二人の関係だったがいよいよ「国際ビッグカップル」が誕生してしまった。
アランはなんとなくガルーラファミリーのご相伴にあずかったがその交流が濃くて色々悩んでたものが全部飛んだ。
「付き合うってなんやろな」
「もう家族になってるやん」
とりあえず赤木に報告した。ガルーラとはクラスが違うし会える機会が少ないからとりあえず毎日連絡だけはしている。色々あって手懐けてからのガルーラのデレがすさまじい。
「学校中の噂になってるで」
「そやな」
「ガルーラはリッツにキャビア乗せるって」
「そっち!?たしかに乗ってたわサワークリームめっちゃうまかったわ!なんで知ってるん」
「さっき廊下でガルーラが友達にロシア人のキャビア愛を語ってたからな」
「本人かい!」
部員たちは秘密にしておいてくれたようだが、とっくに知れ渡っていて周囲から冷やかされる機会が増えていた。
「どっちから告白したん。アランから?」
「俺から。で、オッケーされたわ」
「良かったやん!なんでそんなテンション低いねん」
「夢やと思って」
「一発ばちこーん叩いとこうか?」
「いらんわ!」