アランくんの彼女はロシア人
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学校生活において最大のイベントといっても過言ではない、全日程三泊四日の修学旅行の真っ最中。
一日目は移動日で、中二日でスキー基礎技法を軽く触れる程度に、そして最終日になれば東京の自主研修という名の自由行動がある。
学校に戻ってからレポートの作成と研修成果の発表会があるのは置いておいてこの非日常感を純粋に楽しもうと思えば楽しめる日程であり今の状況でもある。
「だからって麻雀持ってくるやつある?」
「委員長も先生説得してー」
「なんかうまいこと言ってー」
「あかんよ。洗牌の音うっさいねんから他の客に迷惑なるやろ」
「なんで知ってんねん」
「紙で作ってくるべきやったんか…」
「あきらめなさいて」
わざわざ持ってきた麻雀セットを没収された同クラスのサッカー部男子たちの嘆きを適当にあしらって時計を見やれば19時40分。班長会議は20時からだからまだ時間がある。
「お前の旦那、向こうの自販機の前で仁王立ちしてんでー」
「あーハイハイほな回収してきますー」
通りすがりの他クラスの先生に教えられて次の行き先が決まった。学校全体の周知の仲になってるから彼の近況はこうやって事細かに耳に入ってくる。
街なかで知らない人から旦那あっち見たでと言われることもしょっちゅうだ。これに関してはもう慣れた。
目立ちたくないと背中を丸めようとするなんてあほらしい。彼はそう言ってくれた。
実はクリスマスの時に「私は彼のことをなんとも思っていませんでしたが、好きになっていくと思います」と神父さんに告げた。
告白されたことで意識した相手のことをつぶさに観察して、知らず知らずのうちに良いところを見つけて好きになっていく。こういう恋愛でもいいと思う。
だんだんと彼の一部になっていく感覚があった。
彼も察したのか余裕が生まれてちょうどいい距離感が生まれた。なんだかちょっと不思議な感覚だから言葉では言い表わせない。
「今回はダチ優先したいから会わへんかもなあ」と言っていたけど会えるなら行きしにちょっと顔見せとこう。きっと喜ぶからと逸る足をどうにか抑えて歩いた。
自販機横の小さなベンチに腰掛けていたアランはすぐにこちらに気づいた。ニヤリと笑うとスナック菓子の袋をシャカシャカ鳴らした。見覚えのあるパッケージだ。あ、鶯ボールか!
「小粒ね!」
CMソングはこんな始まり方だ。
「鶯ボールミニだもん」
「じゃおともだち?」
「ソフトになったんだもん」
「鶯ボールと鶯ボールミニどっちが好き?」
「「あられー植垣ウグイスボウル♪」」
ぴったり息を合わせて言えたから余計満足しながら彼の隣に座ろうとすれば死角のベンチで小刻みに震えている北がいた。
「おのれ謀ったな!」
「謀ってない謀ってない!」
「何始まったんか思ったわ」
うかつに近寄れなくなった。かと言って引き下がれない。
「あーもう行きな端。もう北のせいやで」
「俺のせいか?」
「ガルーラも北の勉強邪魔しに来たんよな」
「勉強?」
確かにもうすぐ実力テストにさしかかる時期でもある。
よくよく見れば単語帳を片手にこちらを見上げる北。
「邪魔しに来たで」
「邪魔すんねやったら帰って」
「ハイハイ詰めて詰めて」
「いや俺を挟もうとすなよアランなんか言うてよ」
「大耳がナイター行ってもうたから暇やねんな北は」
「ハミられとるの北くん」
「はみごちゃうわ」
わちゃわちゃしていれば時間が来てしまった。
名残惜しいがさよならだ。
「この間三宮で職質あったやんか…」
「あそこで?」
「ちょっと去り際に気になるワード出すのやめて」
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