アランくんの彼女はロシア人
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
本日1月6日はロシアのクリスマスイブ。
春高会場の東京体育館にて独特な雰囲気の中、少し気落ちした様子のガルーラが友達の隣に戻ってきた。
「ガルーラママなんて?」
「ザンネンダッタネ!」
「笑顔で言ってそう」
「実際笑ってたし。きっと今までスポーツしたことないから悔しいとか理解できへんねん」
宿泊ホテルまで向かう号令を待ちながら他の応援団と同じように軽く掃除し始めた。ガルーラが浮かない顔をしているのにはわけがある。
本当は母はこう言ったのだ。
нельзяобъятьнеобъятное.
(だから言ったじゃない。無理なものは無理なのよ)
風刺作家プルトコフの一文を使ってこちらを煽ってきた。うちのお手伝いをしないならこの結末は当然のことだと言ってのけたのだ。
ぐうの音も出なかった。
テレビ前でこっそり応援していた父は残念がった。尾白アランの一ファンとしての長文を送ってきたので本人に転送しておいた。
先ほどの二回戦において稲荷崎は1セット目を先取したものの2セット目で勝ちきれずフルセットにもつれこんだが逆転負けしてしまったのだ。それでも。
「尾白くんかっこよかったなあ」
「写真何枚撮れた?」
「500枚かな」
「取材記者か」
「来れて良かった。尾白くん横顔フォルダが潤ったわ」
「なんそれ見たい」
***
「部長めっちゃ泣いてたな」
「泣いた?」
「泣かれると涙出てこおへんわ」
「わかる」
スタメン入りしていたアランと大耳はもちろん悔しかったが、高校最後の大会が終わった先輩たちのようにむせび泣くほどではなかった。
反省もほどほどに頭の中は彼女のことでいっぱいだ。
正直すまんかった。1月9日まで保たなくて。
「とりあえず明日まで東京おるやん。なんか部長が東京観光の許可もらったらしいで」
「あんだけ泣いてたのに切り替え早」
自由行動の許可をもらったらしい。
部員のほとんどが東京体育館に残るのに「観光したい!」と我を通したのがこの先輩だ。
アランはそれを聞いてすぐに挙手した。
ついでに連れて行ってもらいたかった。
「どーしても行きたい場所あるねん。部長に聞いてみたら「ええやん!行きたい!」って即決やったから大耳も行こう」
「場所は?」
ニヤリと笑ったアランは一言。
「ポケモンセンターや」
「小学生か」
「心はいつだって小学生やねんで。途中駅からモノレールに乗り換えるらしいわ」
「まじか。なんかめっちゃワクワクしてきた」
「やろー」
***
「明日は?」
「予約いっぱいで取れませんて」
大耳は予約サイトで今月のカレンダー全て「満員」になっているページを見せた。
アランもその横で調べていたが結果は同じだった。
「飛行機整備工場見学」
先輩はここに行きたいらしい。
最近話題になったせいで親子連れが殺到して予約が取りづらいようだ。しかも無料。
「なんとかしたら席ぶん取れるやろ」
「椅子取りゲームちゃいますよ」
「キャンセル待ちあんねんて。…ほら取れた!」
「ウソォ!」
たしかに「三人予約済」のページに進んでいた。
得意げな顔をした先輩はむかつくが正直すごい。
次の日、予約時間まで余裕をもって徒歩含めて約30分でたどり着いた。
大門駅で右も左も分からないアランと大耳に「ついてこい!」と率先して連れて行ってくれたし、目的地に着く頃には先輩を見る目が変わっていた。
昨日で引退してしまったのが名残惜しい。
飛行機の格納庫はとにかくスケールが違った。
東京ドーム二個分の広さに飛行機が四機並んでいる様は圧巻だった。整備士の話も面白かったし、目の前の滑走路から飛行機が飛んでくるのがものすごくかっこいい。
三人で「ヤバイ」を間違いなく千回言った。
「来週、俺ら修学旅行じゃないですかー」
「そやったね」
「最終日に東京観光するんですけどもう一回ここ来ます」
「しゃあないなー!ええよー!」
「誰目線なんすか」
「あそこにいる767の気持ちになって答えた。ほんまにかっこええなあ。767が一番好き」
帰りのモノレールの中でもアランの頭の中は飛行機でいっぱいだった。大耳に「ポケモンセンター行くんやろ」と言われなければこのまま帰ってしまったかもしれない。
「アラン、ポケモン大好きか」
「彼女がカラカラ好きなんですよ。カラカラの都市伝説言うか裏話が好きで、知ってます?」
「カラカラ言うたらあれやろ?公式だと死んだ母親の頭蓋骨をかぶってるって説明あるな」
大耳の補足に先輩は絶句した。
「ええ?まじか?親殺さないとカラカラなられへんのか」
カラカラの生い立ちを初めて知ったらしい。
「実はカラカラの親がガルーラだった説があるんですよ」
大耳と先輩は絶句した。急いで「ガルーラ」を検索して子どもを比較した。
「…似てるな」
「色ちゃいますやん」
「そもそも骨かぶせたら完成って怖いな!あれ?彼女それ知ったから好きになったん!?」
「かわいそうでかわいいそうです」
「お前の彼女こわっ!」
わざとらしくおびえる先輩の隣で大耳が冷静にアランの思惑に気づいた。
「だからガルーラにカラカラのぬいぐるみ買ってあげるのか」
「クリスマスプレゼントリベンジ」
「二度あるて便利やなー」