アランくんの彼女はロシア人
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2011年が終わりかけた大晦日、尾白家の母が「あんたの彼女って初詣とか行くの?やっぱりお参りせえへんの?」と聞いてきた。
関西ローカル特番を父弟の三人で笑いながら見ていたアランは「親しき仲にも礼儀あり」という北の言葉を思い出して露骨に顔をしかめた。
「個人の自由やろ。ふつーに行かへん人おるわ」
「こだわる子には見えへんかったね。あの子も大変よねー。よく駅前で冊子配ってる人おるやろ?あんたも勧誘されるんとちゃう?」
「それキリスト教ちゃう。部活勧誘みたいなノリちゃうねん」
「えー?」
その後も続くどこか的はずれな母の質問に耐えかねたアランは弟にリモコンを譲ってから部屋に戻った。実はアランも気になっていた。初詣行けるのか?そもそもお参りするの?
『明日初詣行こ!!!!いとこのおねえちゃんと一緒に行きたいんだけどいい?』
『かまへんかまへん。どこの神社?』
『近所のお寺さん!!!朝6時尾白くん家行くから!!!!』
『早いわ!迎え行くから待機してて』
『わかった!!!』
ガルーラからのDMに返事してから「普通に行くんかーい」と小声でツッコミした。
あと『!』多用しすぎて大声でしゃべってる感すごくて笑えた。
***
2012年を迎えた元旦、まだ薄暗い朝6時に教会まで向えば遠くから「あけおめー」と声をかけられた。その隣の女子も手を振っている。
女の子二人と待ち合わせとか俺なんかやばいなと内心ドキドキさせながら新年の挨拶をした。
「私のいとこでーす」
「アリサでーす。アリサさんって呼んでね」
ニコニコ笑いながら握手を求められる。
「欧米か」と言いたくなったアランだが、初対面なので大人しく手を握った。
「アリサさんは先輩ですよね?」
「今年大学二年になるの。私の方がおねえさんなのによく双子と間違われるのよねー」
「ねー」
ガルーラの方が身長は高い。見た感じは仲良し姉妹だ。
髪型は違うが、同じ髪色と目の色と。
「全然似てんねんな?」
「うーん」
身近な双子がいるけども一卵性のくりそつだ。
宮双子の騒がしさを思い出してちょっと胸焼けした。
アリサとガルーラはじゃれあいながら歩く。
「今年から双子なる?」
「いいわね。双子コーデしてみたい!」
「似てる!」
「おっそい!」
ガルーラはアランをビシッと指差した。
「見て!初日の出!」とアリサが嬉しそうに南東の空を指差した。この人結構自由人だ。
「いつもこんな感じ?」
「こんな感じ」
「さ、見えてきたわよ!まずは私の弟の合格祈願からね」
うちは神社じゃなくてまずはお寺に行くのよ!とアリサが目の前の寺院を指差した。
まだ早朝だが参拝客は結構多い。
「リョヴァは…」
「レーヴォチカは…」
「待って待って弟さん名前何?」
「「リエーフ」」
「名前かすってないやん」
「ロシア人の愛称多いのよね」
「レーヴォチカなんてちっちゃい子供に呼ぶかんじの愛称なのにね」
「えー良いじゃない。かわいいんだから」
「私のことも赤ちゃん扱いするし」
「あなただってかわいいもん。フフ、本当は彼氏にコッソリと特別な愛称で呼ばれたいものねー」
「…」
「あらあら!もしかしてもう呼ばれてたの!」
「おねえちゃんうるさい」
「痛った!俺叩くな」
照れ隠しのガルーラパンチを甘んじて受けながら参拝の列に並びはじめる。
「リョヴァは毎年うちに来てたけど、今年は受験生やから」
「あんなに小さかったレーヴォチカがあんなに大きくなって」
「ほんまにね」
「弟さんは身長何センチ?」
「190かしら」
「でっか!部活で争奪戦なりますね」
「そこは避けられないわよね。私は運動あまり得意じゃないから断るのが大変だったなあ」
アリサは思わず苦笑する。
期待にこたえられないのに勝手にまつりあげる現象。
アランとガルーラは心中を察して「あるある」と同情する。
「尾白くんもバスケ部からの勧誘すごかってん」
「あれ見てた!?」
「目立つもん」
「レーヴォチカも中学でバスケ部やってたの。でも高校から別のやりたいって」
「バレーボール観てて楽しいよ」
ガルーラが胸を張って言う。
「せっかくやからリョヴァにも参拝させよ!」
端末でいとこを呼ぶと数回コール後で「もしもしー」と寝ぼけ眼の声が聞こえた。
「あけおめー」
「レーヴォチカ起きたー」
「今から鳴らすからお参りしや」
『何何?』
「一緒にまんまんちゃんあん」
『なんて?』
「一緒に手を合わせてくださいやって」
『誰!?』
「ガルーラの彼氏です」
『ア!ハイ!ハジメマシテ!
「俺ロシア人ちゃうわ!日本人日本人!めっちゃおもろいな弟さん」
「寝ぼけちゃってかわいい」
「かわいー」
混乱するリエーフの画面を本堂に向けたまま三人で手を合わせる。
ガルーラに何のお願いをしたかこっそり聞けば「尾白くんのお願いごとが叶いますように念じた」こともなげに言う。
思わずアリサを見やれば「うちの子やるでしょ?」とニヤニヤしながら得意げな顔をしていた。
とりあえずガルーラの頭を撫で回した。
「絵馬も書いときますか」
「第一志望どこ受けるの?」
「音駒高校よ!」
「書いとこう」
『アザース!』
「うちのバレー部全国行くねん。彼氏出るから1月5日から9日まで録画して見てや」
『テレビ中継!?それで応援しに行くんだ。あ、クリスマスどうするの』
「だって観たいもん…」
「それなら行くべきよ。私があなたの代わりになってあげる!」
「うん」
「無理せんでええのに。気持ちだけで十分」
「観たいもん」
『俺バレー部入ろうかな』
「こっちおいで」
『遠いからやだ』